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独学の毒薬で異世界無双  作者: ほふるんるん
少年期編
32/185

竜王VS小僧

ココが山の麓にある一番近い町か・・・当然かも知れないがとても静かだ。


この領地で大きな町とジーナは言っていたから、いつもは商人達が大きな声で客寄せをしているのだろう・・・しかし今日はその声も聞こえず、ただ渡された貨幣を物で交換するだけの死人のように町人達は生活している。


静かなのは結構だが少しもの寂しさも感じるこの空気の中で道の端で祈りの歌を歌うのは止めて貰いたいものだな。今から健気な少年一匹が竜の生贄になりに行こうと言うのに、喜ぶ顔の一つも浮かべないのはあんまりだろう。それか彼らは聞かされていないのかも知れない。


『無謀な挑戦に僅かな期待もしないでくれ』という侯爵の意向か?領民に対してだけは気遣いの出来る優しい貴族様だな。



「竜の残りカスをかき集めて生活していた彼らは、先行きが不安でしょうねぇ・・・」


「・・・・皆竜王が消えるとこの町がどうなるか理解しているの、でもみんなはそれでも残るって。辺境伯なら何とかしてくれるってみんな意地張っちゃって、逃げなさいって言っても誰も聞く耳を持ってくれなかったの」


人望のある侯爵様ということか。凄いなぁ、然したる功績もなしにここまで地位を維持できているんだから、それはそれで一種の才能だな。


「自慢の民ですねぇー・・・」


「えぇ。そういえば準備に必要な物があればここで揃えることが出来るけど、大丈夫かしら」


「もちろん。準備なら全部こちらで済ませてあります」


古より伝わる物語などを読み漁り、深く竜について知っていく中で、強靭な力によって災害を持たらした邪竜が勇者に滅ぼされたという話や、その力に対抗するために作られたドラゴンスレイヤーという伝説の武器の存在も知った。


そして中でも気になったのが、竜が人の姿に変化して人里に下りて来るという話だ。


人里に下りて来るという点では今回の出来事と似ている、まあ今回はダイナミックにも竜のままで下りてきたようだが――――しかしこの話が本当だとすると、もしかすれば竜が人になる事も可能なのではないかという事に気づく。


竜は古くから人間よりも知性を持っていると言い伝えられ、ジーナの父が竜王にお願いを聞いてもらった事から意思の疎通も可能と分かる。深くその話を聞かなかったが、つまり会話を人と竜の間で成立させることは可能だということだろう。


そこからはひたすらに竜を真正面から対峙するのではなく、罠にかけることを念頭に入れて考えた。そして大まかな計画を練った後に、その計画に必要な毒の量を数え、そして揃えた。


化物相手に一体どれだけの毒が必要なのか想像もつかないのは勿論のこと、兎角あの象や鯨よりも大きな存在と聞く空想上の怪物だ。準備の途中で嫌になりそうだったが、リハーサルの出来ない本番に備えて、ほぼ何があっても対処できるように準備は精一杯してきた・・・そのつもりだ。


「さあ、早くいきましょう」


「分かったわ、じゃあ少し揺れるけどとばしてもらいましょう。ドラブさんそういうことなので竜の山までとばしてください」


「分かりやした、ではお嬢とお連れの方。少しこれから揺れますんで、振り落とされないように気をつけてくだせぇ」


御者のドラブと言った男は、馬に魔力を手綱から送り奇妙な手首捌きで馬を操った。馬の毛色は黒から艶の良い黒に変わり、たてがみも短めだったものが自重していたとでも言いたげに長く伸び、炎のように毛が立っている。


鼻息もヒヒィーンという鳴き声はもう聞こえず、変わりに聞こえてくるのはブァルァッララという底に響く重低音のみ。完全に別の生き物のように見える。


そして馬が一歩を踏み出そうとした瞬間―――意識を刈り取られるかと思った。先ほどまで馬車の窓から見えていた馬の蹄は俺の視界から消えるように動き、その動きを見ていると酷く酔った。


最後にみた景色は馬車の後ろの窓から、馬の強烈な一歩から生じた爆風が洗濯物をまき散らしている光景だった。


「な・・・なんて迷惑な馬車だ」


「ちょっとドラブさん!こんなに早いなんて聞いてない!」


山の麓までつくとジーナとはとりあえず別れ、お互い違う場所で楽になってから馬車の所まで戻った。そして山を見上げると、思わず「おぉ」と口から感情が洩れた。


竜王の住む山と言うのは山岳で、標高が高く草木の生えない山が連なって形成される自然のダンジョンのように見えた。その中でも一際目立つ大きな山の山頂が俺達の目的地となっている。


(ここら辺は魔物の数も多いから、ここから少し離れた場所に貴族を中心としたリゾート地をつくれば、山をバックに楽しむことが出来るだろう。行楽地(こうらくち)としては最適な場所だ。竜の残りカスで生きられなくなった領民達にはここらで強制労働でもして貰えば急に貧富の差が拡大するということもないだろうし、今後の後始末にはここが使えそうだな)



道中ワイバーンやリザードマンなどに出会ったが、手持ちの毒でなんとかなったので適当に倒して亜空間に入れておく。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ステータス

名前:

性別:男

称号:

種族:劣化竜種ワイバーン

レベル:80

HP:30000

MP:10000

攻撃力:8000

防御力:4000

素早さ:5000

賢さ:1000

幸運:50


通常スキル

ブレス6 爪術7

エクストラスキル

常に毒攻撃


ユニークスキル




名前:

性別:男

称号:

種族:蜥蜴族リザードマン

レベル:55

HP:19000

MP:1000

攻撃力:4900

防御力:4900

素早さ:2700

賢さ:500

幸運:5


通常スキル

剣術5 盾術5

エクストラスキル

攻防一体

ユニークスキル





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



リザードマンが集団で来たときは手持ちの毒を確認するほどの大群だったが、ただの気苦労だったのかリザードマンの大群の全ては毒を振りかけられた後は息もたてずに眠り、全てが亜空間の中へとその姿を消した。そうこうして俺達が山頂までたどり着くと――――綺麗な巨竜が瞳を閉じて眠っていた。


「竜王様、貴方の夫になれそうな人間を連れてきました。どうかお目覚めください」


ジーナが、「夫になれそうな」と言ったあたりには既に竜王は目を覚まし辺りをキョロキョロとしている。


「私の夫になれそうな男とはまことか、どこじゃ・・・・ふぁぁぁ・・・」


喋れるのか・・・いや、まあ声帯は魔法とやらでどうにかなっているのだろう。今必要な情報はそれじゃない。深紅の鱗を持つ赤い竜、想像通りの大きさだ。人が何人乗っても大丈夫なほどに巨大で、山の主と言われても納得のいくビックサイズ・・・思い描いていた通りの姿―――いや、それ以上だ。


「アスク、お願いね」


この感動を言葉に表すとあまりにも粗末な言葉で飾ってしまいそうで、自分の語彙力に憤りを感じるが・・・それも目の前に存在する竜の美しさの前には消え去ってしまう。


「僕の名前はアスクレオス・ワイズバッシュと言います。あなたを貰いに来ました」


一瞬竜王の目が点になり、竜王の気迫が霧散する。いきなりはまずかったか?童貞の告白にしては頑張ったと思うんだが・・・。精一杯でもやはり伝わらないものは伝わらないな。


「なんじゃ小僧ではないか・・・妾は強い男を欲しておる。それとも小僧、妾よりも強いとでも言うつもりか?」


「強いというよりも、油断している相手に負けはしない・・・という方が正しいですねぇ。竜王さん」


このままゆっくりと欠伸をしながら俺を強いかどうか吟味していれば良い。そうすれば必ず竜王は俺に負ける。


「よかろう、ならば来るがいい、お主の力見極めさせえ貰う」


必ず負ける。


「竜王、お前はまだ気ずいていないのか?」


よし、・・・・・勝った。


「なん事じゃ、お主の周りに風が渦巻いておるのは分かるが、それがどうした」


「俺が熱くて風魔法を使っているとでも思っているのか?それともこの弱っちい風魔法でお前のような巨竜が倒せると?ふうん・・・あまり知能は高くないらしいな・・・」


風魔法は保険に設置しているだけだ。この山頂に着き、ジーナが俺に話を振った瞬間から常に垂れ流しにしている俺の毒が運悪く竜王の所まで届かなかった時のことを考えた時のための保険。


「な!?・・・・驚いた。首から下が動かん、どういうことじゃお主、妾に何をした?」


「お前と会話とする前から既に俺は既に毒を散布させていた。安心しろ、後ろのジーナやドラブさんが死なないように致死性はない、ただ体の自由が少し奪われるだけだ」


隣でジーナやドラブもぴくぴくしている。二人は竜ではなく人なため、息はできても言葉をだす余裕はないようだ。過呼吸で必死さが伝わってくる。二人には先に言っておけば良かったな・・・戦う時には近づかないでくれと。


このまま時間が経てば彼女達も転生チャンスにありつけるかも知れないが・・・そうも望んでいないようだし、早いところ処理して二人の解毒に取り掛かるとしよう。欠伸をしてのんびりしていれば手遅れになるかも知れない。


それと、今ふと思ったことがあった。もしやジーナの言っていた準備というのは、竜にそのまま俺がいいようにされる準備・・・という事を言っていたのだろうか?あまり見くびらないで欲しいものだ。


「・・・カカカカッ・・・・面白い。妾は咆哮さえ使えればそれで充分よ」


竜が口から灼熱の息や凍える冷凍の息を吐くことは資料で読んだ。そういう事は細かく書かれていたから、その対処も不自由なく終わる。


「お前はまだ他にも気づかなければいけない事がある。それは竜の王にならあるであろう毒への耐性が、何故機能していないのかということ。そしてそんな毒を何故目の前の少年が持っているのかということ。両方に気付かない時点で勝負以前の問題だ」


俺は魔法で吹き矢を作り快感のポーションをふんだんに塗りたくり、それを吹く。快感のポーションは、スキル強化によって精霊級ファンタズマを越え、伝説級レジェンドの下級ほどの力を持っている。伝説の剣で何とか出来る竜だ、同じ伝説級の薬なら効いてもおかしくないだろう。


それにもし効かなかった場合には抗体か何かが体の中で作られるはずだ。そしてその量は過剰に増えすぎてしまえば体の害になってしまう。元は無かったものなんだからな。


今回使った毒の薬は快感の薬と痺れの薬の二種類。痺れの薬は混合薬で抗体を作るにはさぞかし時間がかかることだろう。そして快感のポーションに関しては、それを抑える薬は毒薬生成で作ることの出来る激痛のポーションやその類のもの。痛みでしか快感の波を止めることは出来ない。


毒の危険性を回避しようとしまいと、結局毒を吸った時点で竜の王がとれる行動の範囲はグッと狭まっていたということだ。


そしてこの竜は夫を探していた、ならば俺の勝ちは更に確信となる。あのメス竜の発情期中に快感のポーションを受けたのだ。一種の拷問の類だが・・・魔物に人権は適用外だからな。どれだけ人の声で懇願しようと俺が治療薬を手渡すことはない。精々自分のスキルが何とかしてくれるのを待つんだな・・・。


「ぐぬぬ、わらわはぁ、りゅうにょちょうてんにてぁつりゅうおうだじょこにょようにゃこうげきいたきゅもかくきゅもないわ(妾は竜の頂点に立つ、竜王だぞ、このような攻撃いたくも痒くもないわ)」


追加で程よく痛みの走るポーションと快感のポーションを交互に使用、二十本ほど矢を撃った時、竜王は、「妾の負けじゃ、だからゆるしてくれぇ」なんて言っているが、言葉では何とでも言える。言葉は態度で示して初めて意味があるだろう。



残りの吹き矢に塗れる痛みと快感のポーションの量を調節しながら、五十本ほど撃った所で竜王は気絶した。俺にはどうにも剣よりもこうした毒で立ち回る方が得意なような気がしてきた。まあ、魔法とか毒で戦うよりも剣で戦った方がカッコイイから剣を学ぶことは止めないが。


「ドーパミンやβエンドルフィンが大量に出ているから気持ちが良いだろう。しかし五十本は流石に耐え過ぎだな・・・・人だったら三本打てば廃人になる量だというのに・・・流石怪物、流石竜王だ。よく頑張ったなぁ・・・」


竜王の頭をなでながら聞こえていないであろう彼女の脳に語りかける。一撃必殺ばかりを持つ力の怪物を相手に、口と罠で戦うのは寿命が縮まるような思いがした。だが、コレで彼女には勝った。計画通りに事は進んでいく事だろう・・・。




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