教会パート3
「どうしたのアスク?ボケっとして。あ、もしかして私もこんなのになってたのかな・・・」
こんなのとは失礼なやつだな・・・それとメロエの言葉から察するに、メロエも誰かと神界で対面していたようだ。
「お二人ともオリジナル職を頂けたようですが」
「そのようで。少し待たせてしまったようで申しわけないです、あっちで長話になってしまって」
どうでも良い話をしていたら時間が過ぎてしまった。体感時間もほんの数分のことだったから、実は初めからそんなに時間はなかったのかも知れない。
「ねえねえアスク、私の職業は料理女王だって。お父さんよりもおいしい物を作れるように頑張れって言われちゃった」
・・・オリジナル職業というのは別に職業っぽい名前でなくて良いらしい。もっと魔法剣士とか武闘剣士とか、・・・カッコイイヤツを想像していたが、結構適当に決めてしまった。後で困らないと良いが・・。
「メロエは誰とオリジナル職の名前を考えたんですか?」
「ぺルセポネさんという人なんだけど、とても優しい神様だったわ。そういえばアスクはどんな名前にしたの?」
有名な神様だろう、名前だけなら聞いたことがある。となるとペルセポネという神はかなり上位の神と仮定してもいいだろう。それに比べればカティウスなんて・・いや、やめておくか。天罰で仕方なく死ぬなんてよくある話だ。十分に気をつけないとな。
「僕ですか?毒と賢さの神という事に結果なりました、長話の途中でパパッと決まってしまって・・・大事な事も聞けずじまいになってしまいましたし」
「大事な事?」
「どうして僕は生まれたのかってことをです」
「何それ変なの~。偶々お母さんとお父さんの間に子供が出来ただけじゃん」
「ま、まあそうですが」
小娘に論破されてしまった。というかメロエも存外子どもにしては冷たい考え方をする子どもだ。
「あのー、僕達?私が少し貴方たちの話についていけてないのだけれど・・・神と直接話をしたというのはつまり・・・意思の疎通をした・・・という事で間違いないでしょうか」
協会は神のことを、イルカか何かと同じように考えているのだろうか。
「普通に意思の疎通はできますよ?って、シスターは神の声が聞こえているし、ちゃんと神様もそれにこたえてくれてるんでしょ?」
「・・・実は企業秘密だったのですが、主の声というのは少し変わっておりまして。自分と同じ声で頭の中でその人のなるべき職業が反響するだけなんです」
詐欺まがいのことをして信者を増やしていたのか。
「だからオリジナル職業持ちの人に聞くしか神の証明を出来ず・・・それも一方的に聞いてお終いというだけでしたから。実際に対話したことがあるといったのは、あなたたちを入れても数少ないでしょうし、いるのは確かと分かった宗教の信者は爆発的に増えるということもあり・・・」
「自分の信仰している神がまだ未発見という宗教は肩身が狭いというわけですか」
「あ、いえそういう事はないんですよ?ちゃんと信じる主の為に皆さん頑張っています。ですが・・・モチベーションと言いますか。その・・・あるの分かるかなぁ」
あっちの宗教には、存在の確認された神を祀るのに対してこちらはそれがないとなると・・・あぁ、何となく分かる。目に見えて神がいると色々便利でもあるしな。
「とりあえず僕達があったのはカティウスという神と、メロエのあったペルセポネさんになります」
「そうですか・・・お二方のお名前も教会に出して大丈夫でしょうか」
普通は駄目だ。厄介ごとに巻き込まれるのは良くない。ただ条件を聞こう。もしかすれば教会にいる上の人間との繋がりを持てるかも知れない。そうなれば色々と面倒が起きても教会が後ろ盾になる。
「僕達になんのメリットが?」
「有名になれますよ!」
「あ、結構です」
「あぁ~違う違う、実はお金が沢山・・・」
「もう十分あるんで」
「えぇえ?・・・きょ、教会のある場所では色々と特権が与えられるようになりますよ!」
「特権・・・話を聞きましょう」
そう、その特権の中に教会上層部の人間と関わり合いになれるような場所があれば、後は洗脳でどうにでもなる。前世でも何度かそういった経験があるようだしな。俺は昔は研究者兼教祖でもしていたのかも知れないな。空中浮遊のやり方は知らないが。
「特権は・・・ですね。礼拝がタダとか・・・ご自身の聖歌隊を作れるとか・・・」
「メロエ、帰りましょう。眠たくなってきた」
「え、でも・・」
「ちょっと待って下さいませんか!?何が・・・何がお望みでしょうか!?」
よしよし、釣り針に魚がかかったみたいだな。
「お望み、というほどでもないですが」
「はい!」
「シスター達を纏めている人に会いたいです」
「・・?というと、先生のことでしょうか?」
言い方までどっかの宗教とそっくりだな。まあそんな事はどうでもいい。どうにかしてその先生とやらにあえるような状況を作りたいな。
「出来ればその人と一度会ってお話をしてみたいと思いましてね」
「ええそれはこちらとしても喜ばしい限りです!是非とも、お願いします」
上司に連絡も取らずに買ってに面会の約束を了承して良いのかシスター。会ってしまえばきっと次に合う時には君の上司の人格は変わっているぞ?
「そうですか・・・それはとても良かった。それなら僕の名前は公開して下さって構いませんよ。元から有名な名前ですからね」
「ありがとうございまーす!」
「それとメロエの名前は出さないで貰えますか?」
「えぇ、特に構いませんけど」
「ではそういう方向で。そうそう、僕のあだ名がアスクなだけで、僕はアスクレオス・ワイズバッシュと言います。誤解を招かないためにも言っておきますが、ここの領主の息子です。色々ゴタゴタに巻き込まれるかも知れませんが、どうぞ宜しく」
シスターの顔から段々と血の気が引いていくのを見ながら、どこに行っても父は大体こういう顔をされるようなことばかりしてきたんだと知る。名前を聞いてこれなのだから実際に会ったらどうなってしまうことか。
「よぉ・・・よろしくお願いしまぁ・・・すぅ・・・・」
身分をしっかりさせておかないと、先生とかいう奴が俺との面会を拒否されても困る。
「ではメロエ帰りましょう。シスター、僕の住所は言わなくても分かりますね?」
「は、はい」
「では・・・・またいずれお会いしましょう」
その夜、俺はメロエと別れ自分の部屋で体を魔法で清潔にしてから、サイレントスネークを取り出した。
瓶の中はサイレントスネークと血や毒が混ざった黒色の液体入っている。黒の中でも明るい黒色で、少しねっとりとしている。
まずは新しい容器を魔法で作り、毒薬生成のスキルで毒薬自動製造機を召喚する。初めは横幅が五メートルはあろうかという大きな冷蔵庫のような形をしていたが、今はスキルのレベルが上がり、オーブントースターほどのスケールにその機能が凝縮されたものを使っている。
そしてその小さくなった自動毒薬製造機に瓶と蛇を入れる。そうすると光るボードが出現し、作成可能な毒を教えてくれる。そして数は<作れるだけ>に設定し、燃料は材料を入れる時に掌から魔力を注入し、後は放置すればいい。
毒薬製造機はスキルによって量が増えることはないが、品質や効率はスキルとつながっているので、高品質かつ、効率的に毒を量産することができる。それにオリジナル職業の効果もあるのだろう、生産スピードも早くなっている。
そして今現在作る事が可能となっている毒の種類は以下の通りだ。
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素材による作成可能な毒の効果
・神経麻痺 中
・筋肉麻痺 中
・筋力低下 低
・痛み 大
・出血 中
低の毒は、例えるなら痺れ薬であれば正座を三時間ぐらいして、立ち上がろうとした時ぐらいの痺れがある。十五分ほどビリビリしてまともに立ち上がることが出来なくなる。
中の毒は、放置していれば大体が死ぬ。個人で治すことの出来る限界が中までだろう。
大の効果を持つ薬は基本作っても閉まっておくのが基本だ。遊びの時にしか使わない。
コレより上が更にあるが、コレより上も全て人に使うものじゃないし、遊びでしか使わない。俺の感覚では細菌もウイルスも電波だろうと植物だろうと動物だろうと放射能だろうと人に害あるものなら研究してきたつもりだが、例をあげるならペストも炭疽菌も中の毒だ。
感染力や生産に掛かるコストの違いはあれども、死んだ骨を回収したいなら中までだ。大の被害は恐らくそれらと比べるにもおこがましい程に甚大なものになる。世界を滅ぼしたい願望がない限り、手に持つことすら止めた方がいいものだと断言しよう。
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それにしても蛇から自然に採れる毒はなんて優秀なのだろう。それにかなりの量の毒が作れるたという嬉しい誤算も重なり、長さ30mm、外径13mmの大きさの入れ物に並々とそれらの毒は小分けにして注がれた。
低麻痺を中心にしたポーションと、痛みと出血を主な効果とするポーションの二種類を作り、残りは大きな瓶に保存して亜空間へと投げる。
「ふぅ・・・、今日はこれぐらいで寝るか」
一週間に一回はこうしないと寝つきが悪くなる。悪癖だが・・・抑えようとすると爆発するし、適度に発散するしか今のところ方法が見つかっていない。早いところ治したいものだ。




