先生と模擬テスト パート2
このごろ漫画のキャラクターがおしゃべりしながら戦う意味がようやく分かった気がします。
武器を収め、少しばかり話をした後、マサトラ先生は生徒達の実力の確認に戻った。
そういえば男子は俺とティア、そしてアルバートとメイリオだけらしく、女子生徒は獣人の少女であるスクイという少女と眼鏡の似合う人間族のリーズ、そして俺の隣の席に座る少女のみだ。
この七席を初めとして一年から十年生まで上がるにつれて少しづつ成績のいい生徒がZ組に入る仕組みらしい。
「では次にスクイさんとリーズさん、かかって来なさい」
『行きます』
戦闘が始まった、スクイはとにかく速く動き独特の格闘技を披露する、リーズは数多くの木や草を魔法の糸のようなもので操って飛ばしている。
一方マサトラ先生は、体や亜空間からオタマやお鍋などを使って器用に攻撃を回避しており、
「スクイさんは体に魔力を纏わせて定着させるような感覚で、リーズさんはもう少し相手の先を読んで攻撃をするようにしたらより一層良いですね」
などと笑いながら二人の頭をオタマでゴツンとするなどまだまだ余裕といった感じだ。
1時間後・・・二人の頭にオタマで作られたたんこぶが増えた頃。
「ここまで出来たら問題無いでしょう。お疲れ様です」
二人とも肩で息をしている、先生は二人が魔法を主に使う戦闘型という情報をどこかで手に入れたのだろう、看破のスキルを使えば大きな塊がマサトラ先生を包み込んでいるのがわかる。
「ティア、王都の中をまわるより森に行きませんか?」
「ほう?奇遇だな」
三人の戦闘中ずっと握り拳をつくり、貧乏ゆすりまでしていて分からないはずがないだろう。・・・俺も三人を見ていると、こう、あの中で暴れたいという熱い気持ちにはさせられていたから、ティアのしていた事にとやかく言えたものではないが・・・。
「アスク、冒険者ギルドによってからだ、あそこは倒した魔物を買い取ってくれるらしいからな」
「それはいいですね、僕達の歳でも大丈夫ですか?」
「わからんが大丈夫じゃないか?実力があればどうとでもなるだろう」
軽いな王子、実力で大丈夫なのは学校の中だけだと思うが。とりあえず便乗する、駄目ならただ森で狩りを楽しめばそれでいいのだ。
というか別に魔物を売る事までしなくていいと思っている、ここでは魔物と言われる獣達に法律はない。そう考えると売る以外にも少し貯めておくということもできる。
「そうですね」
話がまとまった所で先生が最後の一人となった俺の隣の席に座る遅刻少女が呼ばれた。
「ジーナさん最後はあなたですね、では来なさい」
「お願いします」
ジーナと言われた少女は亜空間魔法が使えるようだ、穴から大きな弓を取り出すとそれを軽々と扱い、矢の照準をマサトラ先生へと向ける。
「それは・・・珍しい物を持ってますね、ファンタンズマ級ですか・・・それぐらいならまあ大丈夫でしょう」
「あの二人より私が弱いって言いたいのかしら?先生、もし怪我しても私、責任はとりませんから」
「ええ、それに関しては私がとりましょう。もしあなたが怪我をしても回復魔法ぐらいはかけれますから」
「泣かします」
「怖い子だ」
ジーナは弓から大量の魔法の矢を飛ばすも、それをマサトラ先生は器用にお鍋やオタマで叩き落とし続ける。俺でもあの数の弓矢を全て見切ることは不可能だ、先生の動体視力は人間のソレを大きく超えている。
人間相手では予想もできなかったであろうマサトラ先生の防御力にジーナという子は若干の疲労を見せている。彼女は確かに強い。普通に戦えばティアや俺といい勝負ができるだろう。だが今回は格上の相手過ぎたな。
「なんで!?何で一発も当たらなの!?」
「魔法の矢は当たったら痛いですから、ほら、撃たないと増やしますよ?」
そういって、マサトラ先生の体は複数の個体に分身する。
「卑怯よ先生!!」
結構面白い魔法だ、幻影系の魔法を相手にかけつつ、自分は火と水と光で更に分かりずらくするという・・・コレ想像以上に強くないか?
「魔物相手じゃ卑怯もくそもないのです、頑張って全部に当てなさい。分からないなら見極めなさい!!!」
「言われるまでもないわ!」
10分後・・・
ジーナは魔力切れにより、うつぶせになって倒れた。かなり危険な状態だが、一日二日もすれば元通りの生活ができるようになるだろう。
「・・・アスク、さっきのジーナの行動は少し無茶をしているように見えたな」
「確かにアレは少しやりすぎですねぇ。魔力の保有量が多い分、その魔力を大雑把に使い過ぎだ」
ジーナを抱えたマサトラ先生には今までの戦いでは見られなかった汗が流れており、中々に疲れたという顔をしている。
「ふう・・・皆さんお疲れ様でした、今日の授業はこんなもので良いでしょう。授業終了の挨拶は結構です、では皆さん解散!」
午前中に授業が終わったのは丁度良かった、これなら早く森の方へも行ける。




