校舎とクラスと先生
メロエから馬車の中で色々な事を聞きながら馬車に揺られていると、既に外の太陽は真上に上り、この座って揺られているだけで気持ちの悪い馬車も敷地内へと入ったようだった。
「これ全部学校の敷地なんだよなぁ・・・学校一つで大きな町ぐらいか?・・・そういえば元々森だったところを国王陛下が焼いたり浄化したりで学校を建てたんだったな・・・」
「へ~アスクは物知りね」
(俺には村の全員の名前やそいつらの特技やらを語ってくれたメロエが凄いと感じたんだが)
「そうかい?まあ、邸に引き籠りっぱなしだったからな。実際に見ていなくても知ってる事はまあまあ有るだろう。何か聞きたい事があったら言ってくれ」
「なんかかわいそうに思えてきた・・・あたしが遊びに来たとき以外全部そうだったの?」
「・・・まぁそうだな」
年相応の遊びを一度してみた事があったがその時シンリーにおでこに手を当てて安心された事を覚えている。シンリーにはそういうことはしない子供に見えていたんだろうな。
その時から自分らしく振舞う事が一番家族を心配させないことだと分かったし、俺はもう一般的な子供と同じような目で周りからはみられてはいないことも理解した。それならいっそ楽になっても良いじゃないかと思った次第だ。
「ねえ、ちゃんと人と会話できるの?」
「・・・頑張ってみるつもりだ」
「そう・・・アスクも大変・・・・って、あ!、学園に着いたみたい、早くおりましょ!」
「まず挨拶が基本だ・・・完璧に普通におはようを言おう、それで戦いは終わる・・・」
「今更何言ってるの、ほらいくよ」
「ああ待ってくれ・・・」
俺たちが校門に入ると、道が五つに分かれていた。
一番左の道がF組とE組、一番右の道がD組とC組、左から2番目の道がB組とA組、右から2番目の道がS組とSS組、真ん中がSSS組とZ組、に行くようにと校門入ってすぐの木の看板に書かれていた。
「メロエは何組だ?」
「私はSSS組よ、アスクは?」
「俺はZ組だから俺達は真ん中の道だな」
この学校は入学前に学園の関係者が来て、子供の能力をみて、能力にあったカリキュラムを受けることができる仕組みになっている。
F組やC組は基本的に平民の子供達が行き、B組からA組は教育を小さい頃から受けていたのか貴族の子供たちが多く、S組は貴族の子達や平民の子供から学問に才のある者達が集められ、SSとなればさらにその上を行くような者達になり、当然クラスの席も少なくなる。
SSS組と言うのは国の上流貴族や大富豪などが寮から通う安全性を重点しておかれた組であり、能力的に言えばSSランクよりもほんの少しだけ上と言ったぐらいになる。
そして最後に俺の入るZ組だが・・・能力的にはSSSランクの生徒を凌駕し、このクラスに入ることを目標にこの十年間他の生徒は頑張るらしい。パンフレットを見てその事を知った時はなんてつまらない制度だとため息も出たが、他国が力を伸ばす中、そう悠長なことも言ってられないのだろう。
そういえば以前俺の能力値をみて失禁した不届きな奴がいたな、まだ学園にいるようなら一度挨拶するのもいいかも知れない。ちなみにZクラスというのは様々な特権がついてくる、まず学費が免除になり設備の整った寮が提供される。教師への敬語が不要というのはクレウスから聞いた話だ、とうさんもどうやらZクラスで学園生活を送ったらしい。
「どうしたのアスク?そんな笑って、怖いよ?」
「俺の笑顔がそんなに怖いのか」
「公爵様を思い出したの」
「俺は人間だぞ?」
「どこからツッコミを入れれば良いのかな・・・」
そんな事を喋りながら歩いていると前世の記憶にある学校とは違うソレが目の前に現れた。
例えるなら巨大な黒い樹だ、人工的に樹に見えるように金属や不明の物質で作られた巨大な人口の樹。樹の枝の先にとにかくたくさんの部屋がついているのが分かる。
「なんて悪趣味な校舎だ」
「この樹とっても綺麗・・・・」
「メロエの感性は俺の千歩先をいってるな」
(こんな悪趣味な外装を手掛ける奴なんてどこぞの魔王しか考えられないな・・・)
校舎に入ると中にはエレベーターやエスカレーター、外の景色が映し出される魔法で作られたモニターのようなモノなど、外見にそぐわない内装となっており、別の世界にまた来てしまったかのような気にさせられる。
取りあえず校舎に入ったばっかりでボーと立っているわけにもいかないので、組別に行われる始業式に向かうためにクラスの場所を事務室へと向かっていると、向かい側からこちらの世界で見る事はないと思っていた着物をきた人間がこちらへとやってくる。
「おはようございます二人とも」
流暢な人族語だ。その顔なら日本語を話していてもおかしくないだろうに。
「こんにちは」
挨拶に成功した、ファーストコンタクトはパーフェクトだ。
「お二人のクラスはこちらです、僕についてきてください」
「貴方は?」
「あーやっぱり気になりますよね、私はZ組を受け持つことになったマサトラ・クスノキと言います。二人のお父さんたちにはよくパシリにされていました」
完璧かと思えた挨拶は残念ながら失敗。身内の置き土産により相手の印象は最悪から始まるようだ。クレウスとジャバがこのマサトラ先生をかなりこき使ったようだ、彼が俺達を見る眼がなかり怯えている。
「僕達のお父様にですか、となると先生はもとZ組という事になるんですね」
「Z組は一クラス辺りの人数が極端に他のクラスとは少ないので、自然とクラスのメンバーとも何かしらの繋がりが『どんなに嫌でも』出来るようになります。クレウス様とジャバ君には、ただそれがパシリだっただけというわけで・・・」
ま、不味いぞ・・・!このままでは色々となにかほったらかしているとダメな気がする。何とかフォローしなければ。
「あ、あはははは、お父様はだ、駄目だなぁ、ぼ、僕はそんな人をこき使うようなことはし、しないけどなぁ~」
あー、駄目だ、フォローの仕方が分からん。されたこともしたこともないものをどうしろと?おかげで変な醜態を晒してしまった。
「そうですか、いや~真面目でいい子は先生大好きです。アスクレオス君はクレウス様と似た雰囲気を持っていたのですぐに気がついて飛んできてしまいましたがこれで僕も安心です」
あんなのでよかったのかー。
「ところで僕以外に他にどんな子がいますか?」
「アスクレオス君ほど分かりやすい子は他には・・・・あ、一人いますよ。魔族の王子様」
「語呂の良さは完璧ですねぇ・・・どんな子なんですか?」
「とてもかわいらしい子ですが男の子です、名前はティア・ゼパァル君。この学校へ来た理由は不明ですが兎にも角にも癖のある子です」
「教室に行くのが楽しみです」
「それは良かった、Z組の一年生教室はまっすぐ進んで右に突き当りまで行った所です。メロエちゃん、貴方はSSS組なので担任のメーティス先生がくるまで後もう少し・・・あ、きましたね」
Zクラスとはま反対の方向からきた綺麗な白い髪の女性、メーティス先生はどうやら女性らしい。なんとなくおっとりしている人のオーラが出ている、うちの母親と同じタイプの人間なのは間違いない。
「貴方がメロエちゃんね、よ~し、先生と一年生教室まで競争だ~」
「ちょ、ちょっとまって下さいせんせ~い。ねえアスク、学校が終わったら一緒に寮を見に行きましょー!」
「分かりました、ではまた学校が終わったら」




