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独学の毒薬で異世界無双  作者: ほふるんるん
主人公幼少期編
18/185

旅立ちと王都まで

ついに出発です

「アスクおはよう!」


なんて可愛い子だろう。しっかり挨拶が出来る子は素晴らしいな。それに外出用に彼女のために作られた服なんだろう、とても彼女の雰囲気に合っている。その春衣を二十代以上の大人の女性が着れば間違いなくロリータファッションといわれるであろう、しかし今のメロエが着ているとあどけなさを引き立て、尚且つ涼しさも感じさせる。白とオレンジのストライプの・・・鑑定しても鑑定不能と表記される素材で作られたワンピースの感触としては、しっとりとしていて、汗を吸って重たくなった真夏の朝の掛布団のようだ。いや、これではあまり良い表現には聞こえないな。夜に親か誰かに掛布団をかけて貰い、段々とその布団が体にぴったりと引っ付いていくような、しっとりとした安らぎや、癒しを追及してきっとこの素材は開発されたのだ。滑らかというにはやや重い、霧というより水のようにしっかりとした実在のある。そんな・・・そんな素材で出来たワンピースだ。


「おはようメロエ、今日も元気ですね、この服はとてもお似合いですよ」


長袖半ズボンの俺とは偉い違いだ。


「もう、アスクくすぐったいよぉ・・・そんなに触らないでー?」


「馬車に乗って(このワンピースを)見ていたら酔ってしまうかも知れないので今のうちに、見ておきたいんです」


「えぇー」


「今日は一度しか来ません。今のメロエ(のワンピース)は今しか見れませんから」


「もぉー、来るまでだよ?」


「はい」


魔法も使われているのだろうし、人間の手とは思えないような細かな作業までされている。隅々まで思考を凝らした一品だ。あぁ・・・素晴らしい。このワンピース、素材は分からないが、品質は伝説級レジェンドとある。手に入れて娘に着させた親の満足気な顔が目に浮かぶようだ。


「早く馬車こないかなぁ」


「楽しみみたいですね」


「うん!でもね、もっと楽しみがあるんだぁー」


「それは?」


「馬車がご到着しました」


やる気のない声が会話に割り込んできた。どうやらもう馬車がきたようだ。音はしていたし、見えてもいたが、初日から学校に行きたくなかった俺は声を掛けられるまでワンピースの生地の事で頭を一杯にしていたのだった。


(メロエを可愛い子だとか上から目線でいえたものじゃないな全く・・・)



「では、行きましょうかメロエ」


馬車に乗ると、屋敷にいる皆が俺達を送りだすためなんだろう、ぞろぞろと出て来て道の端で手を振っている。その中にはお世話になったネル先生や人形達、料理王や見知らぬ使用人達までもが出てきてくれていた。うちってこんなに人が居たのか・・・。それと空に魔王軍がずらりと武器を持って並んでいるのはなんだ、二人の子供のために態々大陸を渡ってやって来たというのか。一個師団・・・一万体はいるぞ。


「いってらっしゃ~い、アスク」


「言ってこい我が息子よ!」


父さん、お母さま、機械のように僕を邸に縛り付けて教育して下さったことは何時までも忘れる事はないでしょう。


「父さん、お母さま、すぐまた帰って参ります」


馬車は進み、別の人間の顔が見える。料理王とシンリー、メロエの家族だ。


「メロエ、体を大事にするんだぞ。坊主、メロエはお前が守れよ!・・・絶対だぞ・・・!」


「見送る時に泣くような父親がどこにいるんですか、シャキッとしなさい」


「うぅ・・・・ぅぅぅぅう・・・」


「言って来るね、おとうさん、ママ」


「ええ、どんな時も楽しむことを忘れずにね」


「うん!」


「メロエェ・・・メロエェ・・・・」


「おとうさんにもママにもお手紙送るね!」


「い゛っでら゛っじゃい゛!」


「もうこの馬鹿!鼻水が汚い!」


「ずま゛ね゛ぇ・・・」


馬車はゆっくりと通り過ぎ、次に人形に肩車されているネルが手を振っている姿が映る。


「助手、体・・・大事に・・・・ね」


その一言に込められた思いを俺はこの場にいる誰よりも深く受け止める事の出来た人間だろう。彼女の言葉には無駄がない。十分に伝わりました、先生。


「我が学び舎で大きく成長しろ、クレウスの息子よ!全部隊に告ぐ、雄たけび用意!放て!!!」


『!!!!!!うがぎごげががじゃぼぐじぇぞべぜざゲゴべバあがっが!!!!!!』


魔王軍の隊列からの雄叫びは轟音を響かせ、大気を痺れさせ、大きな祝福として俺達の体を震わせた。敵意ではなく、喜ばしいような時に出されると直感で分かる心地の良い爆音に、俺達は暫くの間、高鳴る鼓動を抑えられずにいた。



「夏休みには帰って来ます、それまでさようなら!!」


「お父さん、お母さん、またね~~~!」


こうして俺たちは学校に向かった・・・





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





学校のある王都パテンに到着した。パテンは中央にある城から円状に広がる都市で、周辺の村よりも一世紀ほど文明の差が開いているように思えるほど発展している。


ワイズバッシュ領と比べると一番発展している俺の住んでいる中心部と同じぐらいに発展しており、ぼっとん便所やティッシュペーパーなどあちらの世界でもあった物や、まだまだ馬よりは遅い魔法車や魔法洗濯具というモノまで少し変わったものが前世とは違い流通している。


「ここはとても・・・楽しそうな所ですねぇ」


「アスクはそういえばまだ町にも来たことがなかったんだよね」


全部家の中ってなんで知ってるんだ?間違ってないが。


「・・・そうですね、学校に入ってからは少し外出する頻度は増やしたいと思っています」


「出るときは私も誘ってね。それとアスクってさ、いつまでその喋り方でいるの?お母さんとしゃべる時はそんなしゃべり方じゃないのに。ねえどうして?」


立ち聞きでもしていたのか?それとも、シンリーが話したか・・・。どちらにせよ、聞かれたならそれなりの対応が必要になってくるなぁ。



「シンリーは僕のメイドですからね、何も気にせず喋れるだけですよ、僕はこのしゃべり方が一番相手に好印象を与えられると思っただけです。メロエはこのしゃべり方は嫌いですか?」


「私もお母さんと同じが良いの、わかったぁ?」


コレは・・・・殺気!?・・・・なんだ、どういうことだ。


「・・・・・・・・・・・・・わかった、これでいいのか?」


「うん、ありがとっ」


目を細めて喜ぶメロエに、良いようのない怖さを感じる。もしかして俺はメロエの本質をこの二年でまだ理解していなかったのかも知れない。親から離れて、強制的に自立して行動しなくてはならなくなった今、彼女が一体どういう人間なのか、改めて知る必要があるかも知れない。


「俺はメロエと二人じゃないと、こんな風に話さないから」


「うん、いいの。二人の時だけね、ウフフフッ」


何やら喜んでいる・・・何が嬉しいんだ。










次からアスクはメロエの前では普通の言葉遣いをします。

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