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独学の毒薬で異世界無双  作者: ほふるんるん
大会準備編 
178/185

地獄編最終話 多重いし 継承

頭が朦朧とする。・・・こりゃ数日の記憶が一度に吹き飛んだな。


「ヴェッ・・・ムカつく奴にムカつく攻撃をされるのがこれ程までに腹が立つとは思わなかった、痛いぞ・・・お前のせいで口の中が鉄の味しかしない」


肋骨が食い込んで痛いし、奥歯も折れるし、挙句の果てに口の血が溜まって喉が詰まる・・・最悪の気分だ。痛みに慣れていると言っても殴られ続けて良い気分にはならん。


「立て。何を解決するにもまず力だろう。力を欲せ、後継者よ」


素晴らしい調教テクニックと褒めるべきか、こうも上手く精神的に生かしつつ肉体を痛めつけるプロがいるとはな。正直固定の客を取れそうなほどだぞ、この悪魔。


この数日ひたすらに攻撃を受け、回復魔法をかけた回数も分からなくなった。厄介なのはアスクレーピオスを中心に宙に浮かぶ八つの虹色に光る玉。


攻撃をダミーを使って試した結果、発火、冷凍、放電、強風、発光、吸引、物理、封印と、それぞれ違う効果があり、威力も馬鹿にならない。


闘う相手によって優先的に使う玉は変わって来るようだが、基本的に吸引の玉を使って引きつけ、封印で相手の能力を封じつつ、発光で相手の眼を潰し、物理で叩きつける事が基本的な動きらしい。


稀に攻撃のアクセントとして冷凍で足を凍らせるなどあるが、その程度ならこちらで対処出来るため、問題は先に述べたクソコンボのみとなる。



そしてコレが最も困っている事だが、運よく心臓を潰せたとしても、毒で回復後に呼吸器を止めても、未知の力で全回復をする。回復魔法を使ったような跡もない、ボロボロになっても平気に見える。・・・流れ出る血が赤色なのは恐らくウケ狙いなのだ。


「さあ、後継者。私を倒してみろ」


「ゼェ・・・ゼェ・・・・・・ハァ・・・ガア・・・ハァ・・・・・・・・アー・・・・ハァー・・・・ハァ・・・黙ってろ・・・今倒してやるから・・・」


「喋る力も、知性も、人間性もまだまだある。走ることも出来る。視界に私の姿が映っている。立て、立って闘え、闘えよ後継者!」


「五月蠅い・・・それと愚痴を言うなら俺に止めを刺してからにしてくれないか」


「その鎧にあたかも打ちのめされたように出来た痕は私を欺くためか?わざと声色を変えて息を整えているように演技をしているのは私に油断させるためか?―――余り私を舐めるなよ。馬鹿馬鹿しい茶番に私を余り長く付き合わせるな」


お喋り好きの悪魔には小細工も通用しないみたいだ。周辺血だまりで大の字で寝ころぶ俺に止めを刺さずに様子を見るとは良い性格をしている。


全く・・・コレで回復しようとしたら玉が飛んで来て邪魔をするからな・・・。サディストと言うのはこういう男の事を言うのだろう。


こうなったら一か八か、この鎧がどこまで俺を守ってくれるのかの耐久テストを臨時で行うしかあるまい。


このままだとじり貧で俺が先に死ぬだけだしな。勝つためにはとりあえず、時間を稼ぐ必要がありそうだ。時間を稼いで全てが上手く進むその時まで俺は少し・・・


「分かった、三時間くれ。ちょっと寛ぎたいんだ、どうせ立った状態じゃないとこの鎧に邪魔されて攻撃出来ないだろ・・・あぁ・・いかん、駄目だ、瞼が落ち・・・る・・・」


少し、自然と一体化するとしよう。


「おい!戦いの最中に寝るつもりか?おい、殺すぞ?・・・・おい、本当に寝てしまったか?・・・寝息が聞こえるぞ・・・・面接途中で寝る馬鹿がどこにいるのだ!!」


「ゼェー・・・フゥー・・・ゼェー・・・フゥー・・・」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



~そして、太陽らしき光源が十七回昇り沈んだ~









「ここは?あぁ、俺も遂に止めを刺されたか」


「後継者よ。眠りから目覚めたか」


「いや、悪夢が続いているみたいだ。ヒョロヒョロなオッサンが見える」


自分で言って傷ついた。腰を起こしヘルムに付いた土を魔法で洗い流すと、鎧の中に水が入って来たことに驚く。ヘルムが伸縮性と隙間を手に入れた結果、見た目がただ少し禍々しい普通のプレートアーマーになった。

以前の鎧は純白で高貴なイメージのあった鎧―――そう例えるなら上位の騎士が着ていそうな豪華絢爛と言う名に相応しい成金(なりきん)鎧(アーマ―)だった。


しかしあの名前の長い鎧に打ち直した後、色は黒く染まり、辺りに黒いドライアイスのような霧を纏い、全体的にそのイメージは吹き飛び、悪者のような色にされた。


そして今回―――青みのある紫色に変わっていた。確かに高貴なイメージで、悪者にも使われていそうなイメージが湧かなくはないが、やれやれ・・・何がキッカケでこうなったのかは知らんが、これ以上変わるならもっと見た目を良くしてくれ。今まで通り布や絹の服に変わることも出来るようだが、初期のイメージと言うものがある。


「目に鋭気が戻ったようだな」


花畑のど真ん中にポツンとある岩に腰を掛けていたアスクレーピオスが立ち上がり、棍を構え戦闘体勢に入った。律儀に待っていてくれたのか―――根は良い奴だったりするのか?


「お前を倒す準備なら出来たぞ。・・・長いこと眠っていたみたいだが・・寝違えなかったのが奇跡だな」


今考えてみれば鎧で原っぱに雑魚寝をすると言うのは正気の沙汰とは思えない。百歩譲ってパジャマに着替えずとも、せめてストレッチだけはして寝たかった。


「続きを始めるぞ」


「俺にその気がないことは何となく伝わっていないか?」


「だが、しなくてはならないぞ。そういう運命だ」


「運命論が大好きな昔の人間は地獄か素材が似合いだな。現代人の礎となれ、このネクロマンサー」


「自分で自分の首を絞めている事に気づいているか?」


「なんか話せば話すほどお前を嫌いになりそうだ」


「人間とはそう言うもの生き物だ」










・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・










眠気を覚ますような棍の一突きに、剣を這わせ受け流す。


あとを追うようにして飛んで来る『物理』玉を片手に持った小銃レクレールメルダースで撃ち落とし、水魔法が玉を押し流す。


此処までは成功だ、残り七つの玉は体で受け!!・・・・懐に入り込む!!!


過信せず、慢心をせず、


骨を絶ち、心臓を穿ち、毒を刺す!


後ろに逃げる敵を追いかけて・・・


「ここだな!」


「ヌゥウ・・・!」


数百の戦いを交え、辿り着いたこの流れ。一番ダメージを与えているはずの、分かっていても逃れることの出来ない俺の型、俺の流れ。


そしてコイツは回復をせずにカウンターを入れに来る!


「グハッ・・・!」


「分かっていても・・・・避けられないのは・・・お互い様だな」


ここで後ろに下がって回復すれば以前の俺と同じ―――アスクレーピオスに回復の時間を与えてしまう。ここでとるべき最善策はこれしかない。


眩い閃光を相手に放ち、その光に紛れ二本の注射器を投擲する。


「な・・・なんだ・・・・眼が!?」


眼を押さえ、苦しむアスクレーピオスの首に注射器が刺さったのを確認し、最後の仕上げを始める。俺の体力も残り僅か、息の根が止まるのはさてどちらが先か・・・!


「闇は物を隠すが、光もまた収束すると物を消す力を持つ――毒は既にお前の体に入った」


亡者の肉体と言えど、毒は効くだろう。拷問には最適な体にしてあるはずだ。そうでなければ亡者はその存在意義を問われる。


アスクレーピオスは首を掻き、爪の剥げた亡者の手には首から出た血が付着。そしてソレとほぼ同時に前進から血が滲みで始める。この症状は先に投擲した注射器ではなく、数週間前、俺が前持って仕込んだ毒の潜伏期間が終わったのだ。


【この毒の効果は長期間の潜伏後、血管を破壊し、全臓器の破壊をする。この毒の特徴は免疫系を弱体化させあらゆるものを分解し毒に変えていく、全てを破壊し尽すまで終わることはない】お前の死は此処で一度決まった。


「うぅ・・・うぉお・・・・おぅお・・・おおおぉ・・・お゛お゛ぉお゛・・・」


「始まったか」


「うお・・・おおぉ・・・おうぉおおぉ・・・おぉうぉうぉうぉお・・・・!!」


青白い光を放ちつつ、アスクレーピオスを中心に球体が形成される。


「肉体の滅びを甘んじて受け入れろよ、ソレが運命って奴だろ」


あの青い球体を外から破ることはまず不可能、叩いても斬ろうとしても無駄だった。


内部から攻撃しようと腕だけワープさせたが、異物の混入は許されないらしく腕だけ綺麗に持って行かれた。体でやっていたことを不意に考えてしまい変な汗が出たが、攻撃も無理と言う事が分かった。


俺に出来ることと言えば、物語の主人公のようにフィジカルにモノを言わすのではなく―――と言ってスピリチュアルな何かに目覚め敵を葬り去る・・・ということが出来ればよかったが、それも出来たらしたが、どうやらそういう適正もないらしい。 


ただ結果を待つだけの作業をするのが俺のスタイルだ、美しくもカッコよくもないだろう。毒の霧は一番初めにアスクレーピオスの元へと花の香と共に送り届けた。無色無臭の気体であるその毒は直ぐに奴の体に取り込まれ、一つ目の仕掛けとして先ほど発症した。勿論ワクチンは持っているが、刺しているのは俺だけだ。竜海には元からそういった攻撃は通用しないからな。


二回目の毒は、何度も打ちのめされている時に数回に分けて撃った無音の銃による五発の丸薬。この仕込みには薬が必要だった。コレがないと後の仕掛けが上手く動かないのだ。


三回目の毒は、アスクレーピオスが瀕死のカウンターをしてくる前、つい先ほど心臓を貫いた時に体内に残してきた。コレは別の毒を注入すると反応して溶ける仕組みになっている。


勘づかれているかも知れないが、摘出することも困難を要する。とても戦闘しながらでは取り除くことは不可能だろうと、少しオマケをしておいた。


そして四回目の毒、コイツは以前どこかの馬鹿が使ってちょっとした事件になった欲望を叶える秘薬だ。未だ試作品の為に、体にどのような悪影響が出るのか定かではないが、効果は自分の見た目や中身を変える事が出来るということ。


特に強く望まなければ反応しないが、強く望めば望むほど効果はより強力になる。ジャマッパに使った例と、他の試験体の例からそういった仮説を立てた。コレを七本、大きな注射器に入れて持ち歩いている。


一本作るだけで億の金が必要になるため、なるべく使いたくはなかったが・・・欲求不満を解決するためにはアスクレーピオスの魂――――お前の力がいる。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・









「ウ・・・ウォォォォ―――ウォオ゛オ゛ォオォォォオ・・・!!!!」



アスクレーピオスの体は、光る青い球体の中で再構築されていくように、傷跡を消し、体に周っている毒を光で消し去っていく。


「さて・・・蓄積していた毒を全て回復するまでにどれほどの時間がかかるかな・・・」


「ウォゥウ゛・・・・・ゥルルルルルウルウルゥゥウオオオオオロロロロウロロオオオオオオオオ!!!!!!!」


「必死か・・・しかしそうじゃなければ困っていたところだ。一度に全ての毒を消し去り、それに侵されていた臓器全てを適切に処置し、それら細胞の全てを回復可能だったなら。正直御手上げだった」


レーザーのような光が、体をあらゆる方向から焼いているのが分かる。中々原始的だが、消した細胞が直ぐに元通りになると言うなら確かに手っ取り早い方法だ。


しかし、そうやって消している間にも毒は回るぞ。薬はその躰の中だぞ、早く見つけ出せ・・。


「オオオォォォォォオオオオ・・・・あ?・・・あ?・・・ああ?・・・・・・・・・あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


どうやら在処に気づいたようだな。体全体がその毒に抵抗するように体を再構築していっているのが分かる。亡者の肉体ではなく、高位の魂を持つ物に相応しい上位種の肉体へ。


その毒に抗う為に元の自分を忘れた存在にアスクレーピオスは変化するぞ、化物から聖体への、怪物から怪物への進化だ。


打った注射器のもう一つの薬で五つの薬を溶かし毒の力を弱め自ら死滅をさせたが・・・その体はまだ必要のない過敏な反応を訴えている・・・お前はそれをどうやって抑える?


「そのままだと危ないぞ・・・今のお前は異物まみれ―――いや、異物そのものだぞ」


青い球体は異分子を絶対的な力で消し去る。俺の腕を消し飛ばしたように、肉片一つ残さぬよう消滅させる。自身の願いとは言え、自分の敷いたルールから自らを逸脱させたんだ。自ずと消えてなくなるのは・・・きっと運命という奴がそうさせたんだぜ。



ジュ・・・



後に残ったのは、灰と人間や亡者を焼いた臭いではない何かの死臭のみ。魂は見つからず、竜海がかなり遠くから手を振っているのが見える。あちらは既に終わっていたらしい。


辺りを見渡すと、無音だった空から良く通る声が聞こえて来る。


『・・・私の面接はコレで終了だ・・・・・この時間、君にとってとても有意義な時間になったのではないかな?』


「何で負けた癖にそんな偉そうなんだお前は?」


『そういう亡者なのだ』 


「人間らしく行こうぜ・・・もう囚われの身というわけでもないんだろう?」


『ハハハハ・・・・そうだな。最後に君達三人が得る事の出来る褒美を教えよう。そう、そこで目を輝かせている青年、君にもある。その中にいる可憐な貴女にも』


「マジぃっすか!ヒュー!手厚い配慮、感謝するぞ」


『まずは、龍神竜海。聖海龍の君には聖海の作り方を教えよう。元は君達の故郷だったはずだが、過去の大戦により滅びた古の楽園だ。時間はかかるだろうが、頑張ってくれ』


「ご褒美は・・・故郷ですか。凄いものを貰った気分です・・・」


『それと君の持っている爪の飾りに入っているだろう彼の魂。彼のためにこの飛梅の種をその楽園の土に植えてはくれないだろうか?元は彼の物だったのだが、狂気に呑まれる寸前、彼が私に託したものなのだ。この梅を見れば彼の魂は輝きを取り戻せるかも知れない。その時はきっと君の助けになるだろうから』


「オッケー、任かせて下さい」


軽いノリで製法の書かれていると思われる巻物と種の入った袋を何もない空間から受け取る竜海。安請け合いをすると後で碌でもないことばかりだろうに、よくもまあ二つ返事で受け取るものだ。


『ありがとう。そして中の貴女には・・・・・・・・・おや?・・・・やはりそのようですね。一度死に、この地獄の住人となっていたようだ。古竜の魔力を微々たる程にしか感じない』


「今は龍神殿と、童の魔力でどうにか・・といった感じじゃ。今更地獄に戻れとは言うまい?」


『まさか。もう私にはそうする力も残ってはいません。あの骸が消えた以上、為す術も持ち合わせてはいません。私に今あるのは、情報と魂のみ。貴女(あなた)にはとある泉の情報をお教えします。―――かの竜の王が泉に腕を落とし、泉が出来ました。その泉の水は一度なくなってしまったのですが、ソレが最近湧き出しています。竜の作った泉は数多(あまた)の生物に益を(もたら)す万能薬と言っても過言ではありません、特に竜には秘薬にも似た効能を示す事でしょう。この地図を手掛かりに一度訪れてみてはどうでしょうか』


「その泉って・・・」


キットシーアの竜王の泉の事を言っているのだろう。よって帰るか。


『そしてアスクレオス、我が後継者よ』


「なんだ?」


『お前はこれからまた少しの間、我らに暴力を振るわれる時間が来る』


「あ・・?なんで」


『そうしなければならない理由がある。今まで無理矢理力で押し通して来たようだが、今回でソレが無理なことが分かっただろう?お前は剣士には向いていない。剣を持っても良いが、持っていない方が確実に強い』


「無茶苦茶言ってくれるな。これでもこの剣で多くの相手を・・・」


『格上相手に勝てた試しがあったか?』


「格上なら勝てるわけないだろ」


『格下相手を虐めるのが剣を持つ理由にはならん。それに元から剣を振るのに適した体ではないというのもまた一つの理由だ。お前ならばどんなに重い大剣だろうと片手で持ててしまうだろうが、剣の利点を最大限生かす動きは出来ない。逆に魔法であれば体は関係ない』


「いや、だが剣じゃないと・・・!」


『剣は飾りでいい。その大きな剣ならば威圧には最適だろうからな。お前の体がその半分の大きさだったなら、その剣はお前の最大の武器にもなれたはずだが・・・そう上手くはいかない。だからお前には格闘と魔法、そして道具を使った動きを教える。準備ができ次第、この草原に隠された扉から私の魂を取りに来い。魂をとったその瞬間からお前自身の鍛錬が始まる』


声が消え、後には死んだように静かな空間に花と草だけが残った。黄昏時を連想させる赤と橙色に、亡者の灰が今もどこへ行くのか虚空へと舞い上がり続けている。


剣が震え、俺の手から滑り落ちると、そのまま地面に落下すると思い気や宙に浮き、アスクレーピオスの座っていた岩に突き刺さる。かなりの勢いで刺さった為か、岩が割れ、その中から扉が現れた。


「今までにこんなことはなかった・・・剣に故障なんてあったのか?」


「いやアスクさん、コレはアレですよ。剣が扉に導かれたてきな!」


「誰が小細工したのかは知らんが、コレでアイツの魂は手に入るな」


「童、あの男の魂を剣に取り込む際には心の準備をしておけ」


「竜海が何を・・・・・・ヴリトラ御義母様でしたか。分かりました、何か俺にあれば竜海を頼って下さい。コイツなら多分何とかしてくれるので」


今頷いたのは恐らく御義母様の方だろう。なぜかと言うと、言われた本人が発汗機能の有無に他が気付くほど多量の汗を掻いているからである。


「な、なんですか。シリアスなんですか?・・・困りました・・・台本くれないと上手く気の利いたこと言えませんよ?」


「ヴリトラ御義母様が中にいてよかったな。出なければ俺の右こぶしがお前の頬を貫いていた」


「ちょ、なんも言ってないんすけど・・・」


「ここにいても始まらんな・・、行くぞ・・覚悟はできた」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


扉を開けた先は、暗闇―――ではなく、暗い部屋に蝋燭(ろうそく)で灯りの灯った古代遺跡のような石で出来た空間が広がり、魔法で火を投げ入れると少し強く燃える程度で、異常はなかった。


空気もあり、仕掛けなどもなさそうな事を確認し、幾つか壁を展開しつつ警戒を続け、中心と思われる場所までを歩く。中心部には四つ(しょく)(だい)と一つの大きな燭台がある、竜・女帝・魔女・剣士・そして大きな蛇の燭台が四つの燭台を四隅に対角線上に結んだ中心に存在する。


そして四つの燭台に火はなく、大きな蛇の燭台に(ともしび)が一つある。なぜか分からないが、この燈を消す事が、アスクレーピオスの魂を受け取る儀式のように感じる。


「何があるか分からん。邪魔だから少し下がっていてくれ」


「言葉選びをもう少し慎重にしたら、分かりやすいツンデレで良いんですけどねぇ・・・マジトーンだと分かりにくくて・・・」


「黙れ。斬るぞ」


「はいはい・・・すんません」


手で握り潰して消すべきか、手で仰いで消すべきか。どうやって消せば良いか迷った挙句、剣で燭台の火を剣の風圧で消す事にした。


「ッセイ!」


剣で消すと、剣がまた重みを増したかと思うのも束の間、剣が黒い獣の口のように変化し、そのまま俺を丸のみに。しかしその口を竜海が竜の力でこじ開け、その口から引きずり出され、床に三回後転を決めると、ふらふらになりながら起き上がる。


「アスクさん、数分持ったら奇跡です。メロエちゃんにメッセージとその他の人にメッセージを残して下さい!!!!このままどこかに行くパターンなら僕が困ります!!!!」


「え?あ?ああ・・・分かった。ちょっと待ってくれ」


竜海が剣を押さえている間に何通か手紙を残しそして床に置くと、そのまま剣は竜海の抑制を振り切り俺を呑み込んだ。不思議と悪意はなく、心地の良い人肌の温もりのようなモノさえ感じた。


「言ってらっしゃーい!気をつけるのじゃぞ!!」


「何か知らんが後は頼んだああああああああああ・・・・・・!!!!!!」







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