地獄編 三 ヴリトラ御義母様
~死者の町探索中~
「結構歩いたよな。俺達」
「はい、出会った人達は皆普通の人達ばかりでしたね」
「すいませんって声をかけたら包丁持って振り回す元気な爺さんと、他人から奪った眼球を投げて来る少女がいる町だからな、普通に襲って来る亡者達が一般人に見える」
あれからどれくらい町の中を散策したか分からない。ただ、遠くで亡者が塵旋風で飛ばされ、付近で最低な音を出して落ちることの繰り返しが俺達の中で大体一時間に一回ぐらいだろうという目印になっていた。
「あ、また塵旋風・・・コレで何回目でしたっけ」
「この町に入って二十二回目だ、大体一日が終わったらしい」
「やっと一日ですか・・・時間の感覚が狂いそうです・・・」
「王都以上に巨大な町を一日中探索してるんだ・・・分からなくもない、俺もいい加減に飽きて来た」
「アイテムのないダンジョンを一日中探索・・・背景も廃墟と半裸の亡者で変わり映えなし・・・幼女がいても目玉を投げて来るし奇声を上げて可愛くない・・・」
竜海は歩き方が既に猫背に代わり、歩くスピードも前に比べて足を引きずるようで頼りない。少し此処で休憩を挟んだ方が良いだろう。通常歩いているだけで自然に発狂するような場所だ、身体的に大丈夫でも精神的にこの場所は疲労する。
「あの少しはマシな所で休憩にするか」
前方に見える廃墟の中でも屋根と壁がある上等なものを指す。壁があるだけでも十分だが、上からの来訪を考えなくていい屋根付きを見つけられたことはとても運が良かった。
それに付近にはなぜか亡者の数が少ない、あの場所なら少しぐらい休憩できるはずだ。
「ニ十二時間ぶりの休憩かぁーーーーーーーあぁあああああああーーーー、つかれたああぁぁぁああぁあぁあぁああぁぁあぁああぁ」
「まだ廃墟に付いてない、油断するな」
「わぁーとりますって、任せて下さい。昔から我慢だけは得意なのでぇーーーぇえーー」
「信用ならんな・・・」
玄関に入ると、ちゃんと屋根があり部屋が暗い事にまず安心を覚え、そして廃墟の中に亡者が一人もいない事に安堵する。どうやらここは安全らしい。
「アスクさん、ここってセーブポイントですよね。クリスタルとか神父とか立ってないですけど」
「しかも二階には何かあるっぽいぞ」
階段を上ると暗がりの中に台形のなにかが見える。地獄に宝箱がある分けがないが、注意八割期待二割の気持ちで近づく。人食いの箱という可能性を考えて魔物の肉をソレに向かって投げると、「イテッ」と声がした。どうやら亡者だったらしい、しかもイテッと言える知能持ち、お目当ての亡者だ。
「竜海、上に来い。例のブツを見つけた」
「僕らって何探してましたっけ・・・」
「道案内を頼む亡者だ、何を探していたかも忘れて歩いていたのか?」
「僕も後少しすれば亡者になっていたかも知れませんね」
「お前はどっちかと言うと堕天に近いだろう・・・」
ランタン・・・この世界では魔道具扱いになっているが、普通のランタンに火を灯す。仲にあるのはアルコールランプのようなものだが・・・。次いでに言うと油はそこらじゅうで腐るほど手に入れていた、ちょっとした研究のつもりで何体か回収していたんだが、かなりの数を消費してしまった。
「あんまり燃えないって聞いたんですけど・・・」
「亡者は燃えやすい素材で出来ている、一つ勉強になったな」
「しかし・・・なんででしょうねえ」
「処罰をしやすくするための効率化を求めたんじゃないかと睨んでいるが、謎だな」
「そうだとしたらじっくりとやって欲しいものですねぇ・・・一人一人丁寧に」
ランタンで亡者を照らすと、少女が布を被って此方を凝視している。そしてその少女・・・
「あ、あの子!可愛い!!可愛い子は僕好きですよ!!」
「途端に元気になったなぁ、そんなに嬉しいのか」
「あったり前でしょう!ハリウッドスター張りのハンサムだろうが一日中ずっといりゃあ疲れますよ!」
コイツ・・・俺を誉めつつ的確に自分の言いたい事を言いやがった。まあ悪い気分にはならないし言ってる事も納得出来るから良しとするが、見た目年齢が二桁微妙な女の子にそこまで息を荒げるのもどうかと思う。
「貴様ら無礼とは思わぬか、妾に対してそのような態度・・・呆れて物も言えぬわ」
「・・・・!!」
「・・・・・・!?」
なにかを理解したような竜海と、驚きと疑問を隠し切れない俺を目の前の少女は誰かさんに似たような欠伸の仕草をすると、汚い手を突き出し告げた。
「妾の姿がこのようにチンマリしているのは好きでこうなっているのではないのだ。生者よ、魔力を寄越せ、そうすれば我が神体を拝ませてやらなくもない」
「アスクさん・・・こりゃあ問題ですよ。キャラ被り案件だ・・・!!小説だったら女の子のネタ切れだと思われかねない・・・・大事件です」
「キャラ被りと言うか、いや、何というか、似てないか?その・・・・本人に・・・」
「いやいやいや、ハハハ、そりゃないっすよ。一応生きてるんじゃないんですか?あの人のお母さんって」
「いや、行方不明なんだ」
「・・・・・・」
このチビを鑑定しようとするも弾かれる。ここまでは何となく理解していた、コレはほんの小手調べだ。
「初対面の相手に、それも妾にスキルを使うとは不敬にも程があるぞ貴様・・・魔力を所持していなければ此処で八つ裂きにしておったわ」
「申し訳ございませんが、お名前は?」
「ヴリトラじゃ、その魂に刻み込め」
「アスクさん、ブリトラってアイツですよ。有名なアレ、邪悪な蛇!」
「どうでも良い、苗字を聞かせろ」
「え・・・妾の名前・・・」
「ヴリトラって超弩級で悪い蛇ですけど確かインドラって神様に負けて・・」
「だからどうだと言うのだ、所詮神は人の道具、この世界でどういう扱いを受けているのかは知らんが俺の中では平等に人間以下の道具に過ぎない」
「き・・・貴様!!」
敵意のある攻撃は鎧が通さない、がしかし俺はこの攻撃を防ぐ必要があった。恐らくこの少女?の攻撃力は5あるか無いか、そして俺の防御力は鎧を含めれば五万以上だろう。
その差があって少女が俺を殴れば逆に彼女の手が折れる。これまで見て来た亡者達もそうだったが、薄い皮に少しの肉、細い骨しか亡者には与えられていない。地獄では仮の肉体を与えられ拷問を受け、そして駄目になればまた違う肉体に・・・天使の言葉が脳裏をよぎる。
「悪かった、だから無駄なことは止めてくれ。・・・・・・君から油を採りたくないんだ」
「ヒィ・・・!!」
「暗がりでそんな怖い事良く思いつきますね・・・・ドン引きっすわ」
「黙れ竜海、君、もう一度聞く、君の苗字はなんですか?」
「ヴリトラ・ウォームリィです」
「良く出来た。偉いぞ・・・・・そういえば御義母様は初め何か欲しがっていましたね、そうそう確か魔力だった」
「御義母様・・・?妾はいつの間にそちの母になったのじゃ?」
「初めからですよ、ハハハ、さては寝ぼけていらっしゃいますね?ほら、思い出して下さい。確か僕は貴女の娘さんと結婚を・・・」
「洗脳してんじゃねえよ!!」
なんだ竜海の奴、折角いい感じに外堀を埋めれると思ったのに。正面から行っても無理そうだから外堀から埋めて行こうという俺の壮大に臆病な計画を邪魔するつもりか?
「ハッ・・・妾は一体何を?」
「チッ、時間切れか」
「とんでもない悪人だなこの人は!?大丈夫ですか、ヴリトラ様」
「こ、この童恐いのじゃ・・・龍神殿よ、この童は何者なのじゃ」
「アスクさんです。カッコよく言うなら、反逆と邪悪の神は全てこの人に属する最凶最悪のデーモンなのですよ」
「痛々しい嘘を吐くな、大体なんだお前、幼女とか少女ならそのボロ雑巾・・・可愛らしければそれでいいのか」
「ボロ・・・」
「ソレは流石に言い過ぎですよアスクさん!!僕も怒りますよ!」
身の丈に合わない上から目線で貧相で声が高い、ソレだけで十分俺が嫌いになる要素が詰まっているが、俺よりも年上の癖に少女のフリをするババアにイラッとしては駄目だろうか。
「勝手に怒っていろ、だが御義母様にはそれなりの恰好をして貰う。出なければ俺の品性が疑われる」
「な・・・ナニをする気じゃあ!」
「何もする分けないですよね・・ただいい加減にその体から出て貰えませんかね。魔力も上げますから」
「魔力さえあれば妾は無敵じゃ、まかせておけ」
どうやって渡すのか分からなかったが、ヴリトラが腕を掴むと血液と一緒に一定量の魔力を吸収された。とても便利な能力だ・・・他人から魔力供給が可能なスキル、量産すれば一生の財産になりそうだ。まあ、それもここからこの少女を連れ出したらの話しだが。
「どうだ擬人化の調子は?」
「うむ、上々の出来じゃろう。感謝するぞ、童」
大きくなったヴリトラを見ると、彼女がここにいるような気がして何ともソワソワする。親子なのだから似ていて当然と言えば当然、しかし擬人化とはイメージ力の問題だろ。どうしてそんなに似ているんだ・・・・。
「感謝される覚えがない、後服を着ろ。ないならこちらで用意した物を着ろ」
「ほう、何かあるのか?」
「気に入るかどうかは別だが、その布切れよりかはマシだろう」
イデアにと思って買っておいた服を差し出す。バイコーンの黒い毛とペガサスの産毛を使って黒いオーガンジーにし、装飾品としてオニキスを使ったドレスだ、そして靴は見た目重視の黒のハイヒール。オーダーメイドだった為に数千万のぼったくりにあったが、満足のいく品だった為に文句はない。
「ほうぉ・・・コレは良きものを・・・もしや良い童なのか?」
「勘違いしちゃあ駄目ですよ、ヴリトラさん!高飛車で傲慢な女も落ち易いんです!!」
「妾は高飛車で傲慢か?」
「いえ!ぜんっぜん!!要らぬお世話でした!!!」
(あ、あぶな・・・墓穴ほる所だった)
「気に入ってくれたか?」
「ああ気に入ったぞ!これまでの様々な無礼は許そう!・・・それにピッタリじゃ」
「後ろの紐の緩さを変えれば殆どの女性にあう用に作ってある、そのドレスを作った男の計らいだろう」
「アスクさんいつの間にそんなもの用意してたんですか?」
「いや、作ったのは結構前なんだ。だが、ずっと亜空間の中に入れっぱなしだったんだ・・・その・・渡す事が出来ず・・・・」
「変な所でヘタレなんですねー、驚きました」
「いや、ドレス渡すとか普通無理だろ!?そういう機会みたいなの来ないかと思ってたら、数年が過ぎていた・・・」
どうでも良い事を暴露してしまった。さて、気分を変えて御義母様に地獄の道案内を頼むとしよう。
「靴の具合は大丈夫か?出来れば道案内を頼みたいんだが」
「うむ、しかしコレで砂漠を歩くのか・・・」
「つま先が平たいから大丈夫かと思ったが、踵が厳しいか・・ならもう折ってサンダルみたいに使うか」
「いやそれは駄目じゃ!」
「なんでだ」
「可愛くない」
「知らん、折る」
「いや、コレで歩く!魔力があれば問題ない」
結局ハイヒールをローヒールにすることは叶わず、俺達は今いる場所を離れた。ヴリトラによればこの町には他にも何人か話が出来る亡者がいるという。罰を逃れてこんな町に逃げ込むような奴らだから頭の良い屑なんだろうが、果たして一体どんな奴らなのか。
「あの廃墟の地下にいるのが武器屋のローレンス、ラリーと妾達は呼んでおる。主にこの地獄でとれる僅かな資源で武器を作っておる、罪状は人間の魂を使った武器を作り神にバレてしまったことじゃ。腕の良い鍛冶師ではあるよ、アイツは」
「武器屋!!良いですね!寄っていきましょうよアスクさん!!」
「別に今武器に困ってるわけじゃ・・・それに武器屋って、この町には通貨もあるのか?」
「ミトレス王国のジェルで問題ない、ここでは金に価値はないが売り買いするということが彼らにとっての利益なのじゃよ。以前のような生活をここですることが何よりの幸せなのじゃ」
ということでその武器屋に行ってみた。廃墟の階段を下に下りると、暗い中でカンカンカンと音が聞こえる。多くの武器は何かの骨で作られた武器ばかりだが、中には鉄の武器やガラスの盾などがあった。
「いらっしい!なんをお求めで!」
細い腕でハンマーを振り下ろすその姿は今にも止めたくなるほどだが、本人は大変楽しそうなため会釈だけすると何も言わず眼を逸らし、何かの動物の牙か骨で作られたナイフを手にとる。
「僕はいい感じのこの剣を!!」
「じゃあ俺は・・・その骨の投げナイフの束で良い」
「オウゥ!じゃあ剣の兄ちゃんは八百万ジェルね!!」
「ええええええ!?・・・・はぁ・・・どうぞ、八百万ジェルです」
「鎧の覆面兄ちゃんは骨の投げナイフ百束で百億ジェルだあ!」
「三百ジェルにまけろ」
「んんん?しゃあねえなあ。一億ジェルで良いぞ」
「三百一」
「五千万ジェルで!」
「三百五」
「一千万ジェル!」
「四百!これ以上は出せんぞ」
「んもうーーー!しゃあーねーなーー!持ってけ泥棒!!」
店を出て、暑い日差しのようなものを皮膚で感じながら後ろを振り返ると顔面蒼白の竜海とソレを笑うヴリトラの姿があった。初めにヴリトラが金に価値はないと言っていたのに、値切り交渉もせずに買うからそんな目にあう。人の話はしっかり聞いておくのがRPGの基本ではないのか、竜海くんよ。
「物凄く・・・損した気分です」
「損した気分じゃない、損したんだ」
「・・・・」
「次いでに言うとお前が買ったのは見た目だけ良い鉄の剣だ。亡者を何匹か斬ればすぐにメンテナンスが必要になる、品質で言うと・・・高品質?だろうな」
「・・・・」
「おい大丈夫か?―――――しょうがないじゃないか、俺は馬鹿じゃなかったら気づくと思っていたんだ」
「・・・・」
「元気出せって、お前は元々俺より強いだろう?」
「・・・・」
「八百万なんて大金、直ぐ稼げる。大丈夫だ、その鉄の剣で元をとってやれ!」
相当ショックらしい、顔を上げようとしない。地獄の店屋だから高いとでも誤認していたのだろうか。とても可哀想だが、コレで八百万ジェル分の反省が出来たはずだ。次からは多分値切りの精神を忘れないことだろう。
「次は防具屋と道具屋、どちらによる?」
「そうだなー、防具は必要ないから道具屋に行くか」
「値切る・・・値切る値切る値切る値切る値切る値切る・・・値切る値切る値切る値切る値切る値切る・・・値切る値切る値切る値切る値切る値切る・・・値切る値切る値切る値切る値切る」
「龍神殿は大丈夫かの?」
「見た感じ大丈夫じゃあないが、見た目よりも丈夫な奴だから問題ない。そういえば竜海が龍神と何故知っていたんだ」
「竜の神と呼ばれた妾ならば相手がどのような神かも分かる。そういうものじゃ」
神には便利な能力が沢山あるらしい、とりあえずどうでも良かったのでそういう事にしておく。
ここから道具屋までは少しの距離があるらしく、歩いて行けば数十分はかかると言う。しかし既に丸一日歩いた俺達には数十分と言うのは数分と大差ないように感じられた。
ヴリトラの足を気にしながら途中に休みを二回挟みつつ道具屋に辿り着き、珍しくあった扉を開けると地獄の住人とは思えない身なりをした女性に出会った。純白のローブを身に纏い、何所か聖職者のようないでたちの女性だ。
「いらっしゃいませ・・・・どのようなものを・・・・・御所望でしょうか」
「地獄の品についてはサッパリなんだ、鑑定書を頼む」
彼女のスキルに上位鑑定がある、これがあれば道具の使い方なんかも教えてくれるだろう。
「畏まりました。では当店自慢の幾つかの物を」
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■ 魔界草スベリヒユ 標準
効果:利尿作用 快便
説明:魔界に群生するスベリヒユ。熱と乾燥に非常に強い。食料としては人魚が好んで食するとされている。人間が食べても美味しく頂ける。環境が整えば長さは数十メートルになると言われている。
■魔なるタンポポ 高品質
効果:ニキビなどの肌荒れの改善 性ホルモンバランスの調整
説明:余りに効果が凄すぎるために絶滅してしまった魔なるタンポポ。普通のタンポポとの違いは効果が役八十倍違うということだろう。
■春ドリアン 高品質
効果:細胞の高速再生 高血圧予防
説明:春のドリアンは全然臭くない!臭くないドリアンは最強!納得の高品質評価です!
■憂い梨 標準
効果:涙もろくなる
説明:シャリシャリとした触感から地獄の亡者と天国の住人にはとても好まれて食べられる神界の果実。食べると涙が流れ、食べ終わった頃には気分がスッキリしているという。天国の住人はコレで精神バランスを保っているという噂が邪神の中で流れているらしいが、全くの迷信である。
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「こんなもので如何でしょうかぁ」
「実に面白いな。コレは全て貴女が採って来たのか?」
「はい、裏に畑があるので・・・」
ほう、この人が作ったものなのか。余り畑仕事をするようには見えないが、亡者は見かけによらないな。
「そうか、では憂い梨と魔なるタンポポを五つずつ貰うとしよう」
「ありがとうございます、一つ二十ジェルで二百ジェルです」
「じゃあ金貨で、・・・・あぁ、釣りは要らないよ。やっと細かいのを処理出来たばかりなんだ」
「あ、ありがとうございます」
「ぼ、僕は魔界草スベリヒユを・・・・ヒ・・・・ツ・・・」
どうしたんだコイツ?何かに凄いビビるようなこの物腰は。さっきの武器屋とは違う亡者なんだから別に買い物を楽しんだら良いだろうに。
「魔界草スベリヒユが百ですか?」
「いえ・・ひと・・・」
「百束ですね?ありがとうございます、一つ千ジェルで合計十万ジェルでーす」
「ヒイイィィィィィ僕そんなの払えませんよ!」
「嘘をつかないで貰えます?貴方の身なりを見れば分かります。沢山持っているのでしょう?」
そういえばと、ヴリトラが俺に耳打ちするには彼女の名前はロズレオと言い、結婚詐欺師で多くの結婚相手の資産を奪い、搾り取った後は自身の畑に埋めて肥料にしていたという非道により捕まり、牢屋で三十年という長い時間を過ごし、最後は牢屋の中で自殺したらしい。
なので押しが強く、気弱な相手だと直ぐに彼女のペースに持って行かれるのだとか。見た目がそれなりに良いだけあって引っ掛かる男も多く、数百人の犠牲者が出たとか。散って言った多くの男達のために今犠牲になりかけてるあのアホを助けに行こうか。
「余りこいつをからかわないでやってくれるか、大事な俺の舎弟なんだ」
後輩だと建前として言おうとしたら本音が漏れてしまった。
「いつから僕はアンタの舎弟になっ・・・」
「あ、すまないロズレオさん、違ったみた・・・」
「いやぁ!僕はアスクさんの左腕、最高の舎弟です!!」
「だよなぁ~?ははっ、ということなんだロズレオさん。銀貨で許してくれ」
「そんな事許されると思って・・・」
「許さなくても良いんだぞ、別に」
レクレール・メルダースを額にグリグリと押し付ける。次いでに先端に火魔法を付与したので肉の焼ける臭いが彼女にはしていると思う。
「あ、あの許させて貰います」
「・・・無抵抗で被害者面か・・・つまらん。竜海、御義母様、行こう」
道具屋を出ると、今度は下の層に通じるという場所へ向かう。その道中、
「童、地獄から助けてくれるとはいえ御義母様は止めてくれ。妾はお前の母ではない」
「その話は追々話ますから。今は慣れておいてください」
「いや、慣れてどうする」
「キモさとか通り越してもはや何か凄い者になりつつありますねアスクさん・・・」
などと言った話があったが別に大した話ではなかった。
次の層はやっと俺の目当ての奴らだ。
前の後書きがなんか気に入ったので他の設定も少しずつ出してしまおうかと思います。
神とは何か
神の多くは神から生まれる。しかし真祖の神はなり果ての者達によって望んで
造られたと言う。創造理由は同じ知恵を持つ者にのみぞ理解出来よう。




