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独学の毒薬で異世界無双  作者: ほふるんるん
大会準備編 
172/185

地獄編 二 地獄病

砂漠の大地に死者が歩く死者の町、アスクは倒れ竜海は何とか助けようとはするものの・・・

僕はアスクさんを連れて町の中に入った。初めは検問なんかがいないだろうかと警戒はしたけど、僕には中を注意深く偵察する時間は残されていなかった。


大きな門を片手で開け、亡者の徘徊する町で四方八方から来る敵を爪で切り裂きながら、亡者のいない廃墟の中へとその身を隠し、龍化した掌の中で顔が黒くなっているアスクさんを床に下ろした。


アスクさんの着ている鎧に棲みついている妖精さんが、病の進行を抑えているために即死を免れているような状態で、鎧だったはずの装備もアスクさんの私服へ変わり、ギリギリの状態が続いているようだった。


亡者の襲って来ない安全地帯に連れて来たのは良いけど、実際に誤って毒ガスを吸ったような人を助ける方法なんて僕は知らない。


回復魔法をかけても毒の進行を遅らせるような事ぐらいしか出来ないし、このまま僕の魔力が尽きればアスクさんが死んでしまう。どうすればいいんだ、とりあえず意識の確認をしないと・・・!


「アスクさん!大丈夫ですか!?」


「ギャァーギャァーと・・・・・やかましい・・・静かに出来ないのか・・・」


「でもこのままじゃあアスクさん!死亡フラグしか立ってませんよ!!」


「・・・馬鹿を言うな・・・直ぐ治すから・・・」


アスクさんは絶対に無理なことは潔く諦める人だと思っていた・・・だけどやっぱり死ぬ間際には誰だって足掻いていたいのかな・・・・・クソッ、僕はもう諦めているみたいだ。もう絶対に無理だと思っている、僕はこんな風に思う事がとても嫌なはずなのに・・・いつもそうなんだ。


「アスクさん、最後に何か・・・ありますか」


「最後とか縁起でもないこと言うんじゃねえよ・・・俺は剣技も魔法も身体能力も中途半端だが・・・絶対に負けないモノだってあるんだぜ・・・」


「毒ですか?」


「・・・・・・・」


「アッ・・」


「・・・・まあ、そうなんだけどな・・・だからこそ、俺はソレで助かる・・・」


駄目だこの人、毒が回って言っている事が滅茶苦茶だ。コレはもう末期症状・・・てことか、それなら僕はアスクさんからの最後の言葉を聞いてメロエちゃんに教えて上げなければ。


「そんな死ぬ前の人間に見せるような顔は・・・・やめろ・・・。まずは俺の腕から血を採るから、ちょっと左腕を持ち上げてくれ・・・」


アスクさんの最後の願いごとを聞き入れ、左腕を持ち上げた。レンガのように重たく、ピクリとも動かないその腕を見るだけで、龍で神のはずの僕が汗を掻いているように思えた。


全く馬鹿な話だと思う、だけどこんな危機に直面しないように僕は異世界で生活して来たから、こういうのには全く慣れてないのも無理ないじゃないか。


「なんかあるんですか?」


「あるに決まっているだろ・・・病気で死ぬとか絶対に嫌だぞ・・・・」


亜空間から腕を引っかき棒のようにして注射器を取り出し、コレで腕から血液を抜くよう床に転がした。僕は看護師じゃない、しかも注射器の先端が絶対にそのまま刺したら痛い形をしている。


というより僕の見た事がある注射器よりも、全体が大きくて清潔感があるとは言い難いように思える。この人の手間がかかっているのが良く分かる、出来損ないの不良品みたいな・・・・・・・・・・まさか。


「アスクさん、これまさか自分で?」


「俺も知識はあるが実物を覚えてなかったんだ・・・親しみがあるような気がするのに・・・ソレを使った記憶は俺の中にない・・・だから・・・・いまだ未完成品だ・・・」



頭の中だけのものを実物にしたのかよ・・・いや、設計図あっても凄い人だ。僕ならどっから手を付けて良いかが分からない。


「あんた凄いな・・・変なとこで関心しちゃったよ」


「関心する暇あったら早く血を抜け・・・・真面目に早くしてくれないと・・・・死んじまう・・・」


「あ、すまん!!じゃなくてすいません!!」


注射なんてされた覚えが最近なかったから何となくで、最後に見たのが確かゲームだった。


「コレで決める!・・・一撃必殺・・・!」


「こ・・・・・殺すな・・・!」



た、確か腕を裏っ返しにして・・・・なんか消毒液っぽいの掛けて、ガーゼで拭いて浮き出てるところを刺すんだよな・・・・!出来る、僕なら一回で!


「ヨシ!!」


「あ゛う゛!」


「しまった・・・!」


刺した部分から血が漏れ出す、このままでは不味いと必死に逃げる血管を追う。けれども抑えれば力の弱い方向に血管が逃げる、そしてそれに釣られて注射針が腕の中を右往左往する。


「探るな・・・!一回抜け!」


「ごめんなさい!」


「ビャァア゛ア゛!!!」


「あぁああ・・・あああ・・やっちまった・・・一センチぐらいの針が・・・腕に・・・ブッ刺さったまま注射器折れた・・・・・血、血が止まらねえエエエ!!!!かかかか、回復魔法!!!」


「お・・・おまえ・・・どっちに刺しやがった!!ちょゴラ!!!刺さったまま回復魔法すんな!!!針が行方不明になる・・・!」


「もうどうして良いか分かんねえよぉ!」


どうして良いか全然分からなかったけど、血液は採れた・・・かなり沢山。アスクさんの顔色が弥生土器みたいになっているけど・・・あ、でもなんか一周回って人の顔の色に近くなった気もするし問題ないだろう。


「この血液を・・・フンッ!!!」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


■ 楽園病パラダイスディジーズ 特異級ユニーク


 効果:地獄病から患者を救う。


 材料:地獄病患者の血液 毒薬生成4


 説明:新薬のため、説明はまだありません。


 新薬の説明文を書くのって最近の流行りなのでしょうか?薬剤類科だけ従業員が十倍になりました。そういう私も期待の新人です。 by神界鑑定部 薬剤類科 


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「え!?今何をしたんですか?まさか主人公特有のご都合主義の能力を・・!?」


「元々持っていた全然使ってないゴミスキルだが・・・なにか?」


「あぁ、アスクさんのユニークスキル・・・つい最近まで存在すら忘れてましたね・・ここまでかつて役に立たなかったスキルがあっただろうか・・・ってね」


「そこまで言ってくれるな・・・自覚はあるんだ。だが、今回はこのスキルのおかげで助かった。あとはこの治療薬を飲めば・・・ちょと、手伝えよ・・・・・ングング・・・ン・・・ンンン!?!?」


「今度はなんです、僕はもう大抵のことじゃあ驚きませんよ」


「効果が呑み込んだ瞬間から効いてる・・・・今まで瀕死の重傷か死亡して完全復活の二択だったから全く気付かなかった。体への副作用も全くない・・・・良い薬だ・・・」


「まあそりゃ薬草とかポーションとか回復アイテムってのは即効性が売りなワケで・・・・・・え?」


ちょいまち、てことはね・・ん?竜海お兄さんもしや凄い事を発見したのではないかね。


「アスクさん、ソレで一儲けしませんか」


「寝言は地獄から帰った後にしろ、とりあえず出るぞ」


確かにこのまま廃墟に潜んでいるよりも早いところこんな所は出た方が安全か・・・。今のアスクさんは未知の状態異常だけが怖いのだろう、さっきの地獄病もそうだし他にも何があるか分かったものじゃない。



「ここを拠点にして周辺に下へ降りられるような場所がないか探しますか。この町の中で起こるであろうイベントごとはどうせ戦闘イベントだけでしょうから」


「ここはゲームの世界じゃない。町があるって事はそれなりに知能がある奴がいるって事だ。彼らに道案内を頼むとしよう」


道案内って・・・今までの亡者でそんな優しい人いなかったから全員斬ったり消し飛ばしたりして来たんでしょうが・・・。


「此処に来るまで殆どがただ暴れるだけの化け物だったんですよ?いるかな、そんな話す事が出来そうな相手・・・」


「手当たり次第にこのだだっ広い疫病蔓延の砂漠を歩くってのは体の負担が大きいからな、早いところ道案内を見つけてこの場所を出たい」


「むぅ、攻撃を受けたら直ぐ回復してくださいね?」


「問題ない。攻撃は遠距離の魔法で済ます」


「このマップって言うか、地獄って場所。魔力が休んでも回復しませんよ?」


「自分のMPを回復する道具の予備は沢山ある。そこら辺は抜かりなく準備してある」


アスクさんって絶対にボス部屋の前でセーブして一回町に帰ってまた挑戦するタイプだろうな。体力が二割ぐらい減っていたら絶対に回復魔法で回復したり・・・用意周到と言うかビビり過ぎと言うか、前々からの準備を怠らない人なのは間違いない。




後書きって読まない人もいるんですかね・・・自分は読むタイプなんです。そして同じく読むタイプの人にはそれなりに好感が持てるんですね。ということでここまで後書きを読んだ人に向けてこの世界の設定を一つ。





                          魔力とは


     


      旧人類が進化の果てに見つけ出した冒涜的なまでの知恵、道徳、啓蒙により


        自らの存在を知った者達が、絶望の中進化した最果ての姿。

                      

        等しい束縛と不幸が存在し、存在理由を定義された者達の総称。





コレを見せた時、友人は僕を鼻で笑った。


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