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独学の毒薬で異世界無双  作者: ほふるんるん
大会準備編 
170/185

大会準備編 10 サマエル姉さん

メロエが本気を出すのはもう少し、時間で言うなら十年後ぐらい。

「お帰りなさい」


「さりげなく部屋に入るんじゃない」


扉を閉め、ベットの上に座るメロエに聞いた。こんな非常識な奴だったか?


「前は別に良かったじゃない、・・・どうしたの?」


「・・・一人にしてくれないか」


「心配なのよ、ずっと気が立っているみたいだし・・・、私アスクの役にたちたいの・・・お願い、何があったの?」


「ただ父さんに負けた・・・ぼっこぼこにな・・・」


ただそれだけ、ただそれだけの事と分かっていてどうしてこんなに悔しいんだ。相手は俺よりもこの世界で長く生きた住人だ、ステータスも向こうが上、戦闘経験で言えば十倍以上あるかも知れない。そして、効率では測れない強さと言うものを持っていた。


んなもん知るかよ、負けたんだろうが・・・・バカ野郎が・・・。何で剣の一撃なんかで気絶してんだ、ちょっとイノシシに突進されて熊に頭殴られたぐらいの衝撃だぞ。


「ケアレスミスじゃない・・・全て間違っていたんだ・・・一太刀も浴びせることの出来ない力量差であることに気づけもしなかったんだ・・・俺は・・・」


「公爵様に負けたってアスクは頑張れるわ、・・・だってアスクってそういう人でしょ?近くにいる限り何度でも挑戦出来るの。本当に大切な事なら・・・ここで挫けたらダメよ」


「だけどこのまま・・・・大会で戦っても・・・・ハハハ・・・良い笑い物じゃないか・・・そりゃあ最高だなぁ・・・」


「しっかりしてよ、アスクは絶対に勝てるようになるわ」


「なにを根拠に・・・」


「私の知ってるアスクはもっと強くなるの、神様にだって負けないわ」


「ハハ・・・神ね、相手が神なら楽だったのに」



ベットに座られるのが先ほどから妙に嫌だったので近くにあるティーテーブルの椅子に座るよう誘う。そのくらいの余裕がメロエのおかげで出来た。普段のメロエは正直面倒な少女としか思ってなかったが、今のメロエには自然と好感が持てそうな気がする。



「お前は・・・本当に歳の割に成長が早いな・・・」


年端も行かない少女が慰めるような言葉をかけられるって、そりゃどんな魔法だ。・・・悔しいとか言いたくないじゃないか・・・こんな俺を信じてくれてる奴を前によぉ・・。


「さあね、誰のせいかしら。私達はまだまだこれからよ、私も協力するから。一緒に頑張りましょ?」


その言葉と共に、テーブル越しにメロエは俺の手を取った。少女の手と言って分からないぐらい何度も肉刺まめが潰れて厚みのある手だ・・・努力をしている人間の手だ。


俺の手はどうだ、剣を振っていて摩擦で炎症が起きたことがあったか?ねえよ、炎症が起こるほどする意味が分からない。


汚れてはいるが、見るからには綺麗な手だ。そんな手を持つ俺がメロエと一緒に頑張れるか・・・それは。


「ソレは無理だ」


「・・・どうして?」



目指すものも道も違う俺達が、一緒に行動してお互いが強くなれるとは思えない。本気で強くなりたいのならば、どうしたって一人で努力しなければいけない時間があるのだ。誰かと笑って強くなれるなんて事は幻想ファンタジーであってもあり得ない。


「協力と聞いて具体性がない、メロエのレベル上げと言うなら話は別だが、修行したいのは俺だ」



「だから私も一緒に行きたいの!」


「本当に俺に協力する気があるなら俺のことは無視してくれ」


そう言うと、明らかに怒りを表情に出すメロエ。そうなる事が分かって言っているのだから、俺はどうしようもなく我が儘だ。


「でも私強くなっているのよ!?SSSのダンジョンだって皆でクリアしたの!クラスメイトなら負けたりしないわ!それに勇者のスキルだって持っているの!!」


「そんなに力を持ってどうする気だ?それで充分だろ。目標もない力に意味があるのか?」


「目標はあるのよ?・・・目標は」


チラチラと視線を送って来るのは、暗に俺だと言っているのか・・・だとするならば、それは暴力で解決する問題じゃあないよな。・・・暴力で解決しないでくれ。


「ソレが目標なら戦う力は必要ないだろ?」


「・・・そうなの?」


聞くな自分で考えろと言ってやりたい・・・。それと俺が強い女が好みというわけではない、恐らく変な誤解をしているであろうメロエにそのことを丁寧に説明する。


「・・・・あぁそうだ分かってくれたか。とにかくだ、俺は一人で修行する。メロエは何もしなくて良い」


「ソレは無理よ」


「なんでだ」


「心配だからよ」


「・・・・・」


話が降り出しに戻っていないか?


「じゃあどうすれば?」


「仮の人を召喚するわ」


「仮の人?」


「ええ、アスクより強くて私が呼びだせる神様の一人よ」


メロエさんはいつの間にか神様を召喚出来る召喚師にジョブチェンジしたらしい、流石教祖様だ、やる事の規模が違う。信仰されてる身にもなって貰えると恐縮ですが、その願いはどうやら届きそうにない。


「ちょっと待っててね・・・―――----悠久の時を生きる新龍の神、天の扉を守る白銀の番人よ、この世界を一つに繋げ尊い力を御貸し下さい----お食事券一枚でお願い、竜海君!!」


「はーい!竜海君、!爆・誕!」


・・・・期待した俺が馬鹿だった。途中の詠唱までは良い感じに神が出て来そうな雰囲気だったのに・・・。


「今日は燕尾服なのね」


「はい、ビシッと決めていますよ、ビシッとね。王女様の教育係ですから」


「竜海君って凄い人なのね・・・知らなかったわ」


「やあ竜海。元気にしていたかな」


「あ、おっきいアスクさ・・・・グエッ・・・ハ、ハ〇トブレイクショットなんてどこで・・・はっ・・・そういえば・・・・クソッ・・・アレはフラグだったかぁ・・・・」


突然手が出てしまうのは学校でも良くないって怒られたんだけどなぁ、フラグをここで回収しろと誰かに言われた気がしたから仕方がないなぁ。


「それにしても竜海を今回の修行に同行させる気なのか?メロエ」


「ええ、強いし優しいしカッコイイなら、もしものことが会った時アスクが安全でしょ?」


「あれ、僕今もしかして告られた?」


「俺は今もしかして遠回しに竜海以下って言われたのか?」


竜海が此方を見てニヤけているのが腹立たしいが、コイツがいないとメロエが許してくれそうにないから、グッと堪えようと・・・したが・・・。


「やっぱ無理だわ」


「い゛いい゛いだだだ!久しぶりのハンドクローで脳みそ出るうううう!」


「まともに機能してねえだろ、偉そうなこと言うものじゃない。脳みそに謝れ」


「り、理不尽過ぎる゛!!!」


「ま、竜海で良いならとりあえず連れて行ってくる。じゃあなメロエ」


「もう、行っちゃうの?」


「がい゛ばの゛ばえ゛に゛ばな゛じで・・・」


「ちょっと竜海君煩い」


首をトンっとするアレをしたかったんだが、妙に竜海には決まり辛くて何度もしてしまっった。首が変な感じに曲がっている気がするが、魔法をかけたら戻るはずだ。会話を済ませて治してやろう。


「ああ、これ以上父さんの背中が遠のいて行くのは嫌なんだ。あの人もまだ成長途中なんだ、早いところ追いつくには多少無茶もしないといけない事が分かった」


「頑張ってね」


「ああ、行ってくる」



こうして、竜海を連れて俺は旅に出た。そして九か月の時が経ち・・・・


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





「経たせねえよ!?またアンタ自分の修行シーン見せないつもりか!!!」


「え、だって嫌じゃないか」


「ふぁ?・・・なにを言ってるんですか。修行シーン見せないキャラとか初めて知りましたよ!アンタはフリ〇ザか?」


あからさまに嫌な顔をされていらっしゃるアスクさん、ですが残念。今度は黒歴史フェイクを作らせることなく僕がちゃんと実況するんで。逃げ場はないんですよ。


「あからさまに修行アピールするのが嫌なんだよ、コソコソやらせてくれよ、修行だぞ?」


「カッコイイじゃないですか、修行ですよ修行!450倍の重力で訓練したり、霊力を上げて四発まで打てるようになっても良いんです!あ、体系が近いって言ったらアレがありますよ、鉄球を引きずったりすれば良いです!ソレで僕が、アスク、そんなことじゃあ剣士なんかにはなれないわヨ!って言ってあげれば良いんです」


「どうでも良い、早く修行をさせろ」


うはぁー!反応が冷てぇ・・・コレがラノベで言う所のアブソリュート・ゼロに当たるのかなぁ。


「アスクさんレべ厨でしたっけ?・・・レベルを上げて物理で殴るのは確かに楽ですけどホントにソレで・・・」


「敵は大剣一本、情けをかけて俺にボロ勝ちしたんだが、それでもレベルが足りないと言えるか?」


「いや、ソレはレベル不足ですね・・・てか相手はガ〇ツかなにかですか?」


アスクさんの気がたってる理由はコレか。・・・なるほどだわ、うん。だからさっきまで理不尽な攻撃をされてたんだな?かぁ~大人げない人だなぁ~。


「知らん、さっきから俺の分からん話で勝手に盛り上がるな。今は昼だからとりあえず湖に向かうぞ」


「湖?はてはて、ル〇ラにあったかな」


「ちょっと特殊な場所にあってな・・・時間が合わないと会えないんだ。それと一応神様がいる所だからその燕尾服、乱すんじゃないぞ」


アスクさんに今僕も神様ですって言ったら絶対睨まれるだろうなぁ、恐いだろうなぁ・・・でも面白いよなぁ・・・。


「アスクさん~~~僕も実は神様なんですよ~~~」


「あ゛?」


「キャッピ?」


「ぶっ殺すぞ」


「す、すいません」


アッハーーー!!!おもしれえええええ!!アスクさんマジギレしたら何するか分かんないサイコパスなのは確かだろうけどスリルあって面白すぎる。


「燕尾服、乱すなよ?」


「あいあいさー!」


えーこちら竜海、現在泉の方へテレポートしてまいりました。あれ?実況ってこんなだっけ?まあ、良いね。ラノベだったらこんな感じでしょ、だいたいこんな感じだよね?


それで、湖か、泉かよく判別つきにくい場所から毛先が赤色の黒髪お姉さんが出て来たんですが、何というか可愛い属性ではないから僕の範囲外なんですけど、美しいとかって言うんじゃないですかね。


瞳が赤くて、色気が結構多めですかね、神同士だと相手の歳がなんとなーく分かって、好きの対象から外れてしまうんで興味ないから説明も面倒になるんですけど。二重のせいかな?目が結構大きくて、睫毛が長いですね。


「アスクレオスくん・・・・・久しぶりだね」


「はい、サマエルさんもお元気そうで何よりです。泉の具合はどうですか?」


笑顔がステキーですかねー、アスクさんは元々眼がデカイのに最近になって細くなり始めているから、サマエルさんがより大きく見える感じですねぇー。


「君が言った通り、藻の手入れをして水草を増やしたら小さな魚が棲みついてくれるようになった・・・礼が言いたい、ありがとう」


「ソレは良かった。サマエルさんにも生き物を生かすことが出来たみたいで自分も嬉しいです」


アスクさんの武器がこの人のモノとは思えないぐらい優しそうな人だなぁ・・・。武器を持ったら人格が変わるとかそういうキャラなのかな?いや、そうは見えないし、おっとりお姉さん系キャラか?


「アスクレオスくん、用があってきたんだろう?・・・私に出来ることなら手を貸すよ」


「ありがとうございます、まずはこれを」


「私の武器だね・・・・ほおぉおお・・・血と毒を吸った良き剣になっている・・・ふふ、頑張ったね」


「勿体なきお言葉です、今回は失礼ながらその武器をより自分に合った武器にして頂きたく参上した次第でございます」



あ、あれれ、サマエルさんの声が急に色気が増したぞ・・・。ちょっと警戒するべきかも知れない。



「より適した形に・・・か。何を狩りたいんだい?」


「自分の父を」


「無理を言うものではないよ、クレウス君の名前は神界でも強い力がある・・・・彼に剣で勝てる相手なんて神の中にはいない。それに君は魔法の方が得意だろう・・・杖にすれば勝算も微かながら見えて来るんじゃないかと思うのだけど」


「誰の発明かは知りませんが、魔法なんてものは極力人に使いたくないんです。芸術性に欠けますし、何より便利な道具でなにかを狩る時は決まって直ぐに終わって余韻がたりない」


「ふふふふふ・・・この武器を君に与えてよかった、これから私にもっと楽しいものを見せて頂戴ねぇ・・・。代わりと言ってはなんだけど・・・勇者に与えるはずの私の神器で君の神器を改造するからさぁ・・・」


「サマエル様の全てを――――お任せ下さい」


「アスクレオス君とは波長が合い過ぎて怖くなる・・・・もはや寵愛ではなく依存、アスクレオスくんの狂気と血肉に私は酔いそうさ・・・・これからも狩りに励みなさい・・・・アスクレオスくん」


「この上なき喜びです」



コイツらスーパーヤバい奴ら過ぎて僕が完全に空気になっている件について、別に良いんだけどマジでコイツら放置してて大丈夫?退治しちゃった方が世の為なんじゃないか?


「それと・・・この武器を完成させるにはあと二つ、足りないものがあるんだよ」


「自分でどうにかなるモノですか?」


「一つはアスクレオス君のステータスにある攻撃力と体力さ・・・・この武器に君の生き血と肉片を混ぜたらきっと良い味わいになると思うんだ・・・・」


「もう一つは?」


「地獄に言って亡き英雄達の魂をこの剣に纏わせることが出来れば完成だ・・・きっと、君が望む力を手にするキッカケを掴むことが出来る・・・」


「地獄・・・・生き方がよく分からないのですが」


「そこで金縛りにあったように直立している新人君に聞いてみると良い・・・・・道案内ぐらい・・・・出来るよね、龍神竜海」


「もうそりゃあ任せて下さいよ。グーグ〇マップに載ってる場所ならどこへだって!」


「載ってるわけ・・・ないよね・・・・」


「載ってるわけないだろうが、このボケが!場を弁えろ!」


「冗談の通じない人達だなぁ・・・ったく、知ってますよ知ってます。アスクさん、パッパと言って武器を先に強化しちゃおうぜ。レベルアップはそれからです」


サイコパス二人から真顔で見られるのがこんなにも恐いとは思わなかった。


サマエルさんは完全にアスクさんの虜みたいでヤバいし、アスクさんってある一定の属性のキャラからもの凄く愛される見たいな補正がかかっていそうな気がする、うん、割りと本気でそうじゃないだろうか。


「サマエルさん、また何かあれば来ます」


「ふふふふふ・・・・楽しみに待っています、またここに来ることを・・・・」


さあ地獄にいっくぞー・・・

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