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独学の毒薬で異世界無双  作者: ほふるんるん
大会準備編 
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大会準備編 2 鎧と妖精と温かい

新年あけましておめでとうございます。

暇だったので新年早々小説書きました。

お雑煮が美味しかったです。

ちなみにウチのは牡蠣とか白菜とか入っているんですが、場所によっては色が白かったり魚が入ったりするみたいで面白いなぁって思いました。

轟雷続く中、僕とアスクさんの戦闘は今もの尚を継続していた。大規模な魔法攻撃によって、塔内部の天候が雷雨になり、地面には火が燃えている。僕の周辺だけが天変地異のように思えて笑えるけど、アスクさんの立っている場所も、僕が塔の力を使って作ったマグマフィールドだ。


マグマの中で立っている時点でアスクさんも大概人をやめていると思いつつ、あの新しい鎧がアスクさんを守っているのだと知るとあの鎧の恐ろしさが目に見えて分かったような気がした。マグマの上に長時間立っていても原型を維持できて温度で蒸し焼きになる事も無い凄い鎧。ゲームでいう所の最強装備じゃないのかアレ?



「良い鎧ですね!アスクさん」


手を振って答えて来る所を見ると、音は拾う事は出来るものの喋る事は出来ないようだ。以前のようにどれだけ頑丈な形態になっても喋る事は出来たアスクさんの装備は、今はそんな部分もそぎ落として、いわば『人間が着るには色々と不便な装備』を身にまとって僕と戦っているという事になる。大会に向けてのガチになるスイッチがアスクさんの中で入り始めたということなのかも知れない。



それにしても恐ろしい鎧だ、呼吸は鎧本体がしているのか、それとも頭部から絶対に見た目の為だと思われたあの緑色の地毛で光合成をしているのか。それのどちらでも可能なのかどうかは知らないけど、面白い物だとは思った。


普通の鎧で隙間のある股関節や膝の部分までもが、伸縮性のある未知の素材で出来ていることを考えると、種族間に生じる能力値の初期パラメータの違いを、アスクさんはあの鎧で無くそうとしているのかもしれない。


魔族の中には僕が知る中でもオーガやトロール、スライムやアラクネなどが存在するけど、オーガは皮膚を鋼鉄のように固くし攻撃を弾き、トロールはその厚い脂肪で魔法や物理攻撃の大半を吸収するといった感じで、全てがそうでは無いけれど、そういった恵まれた個体は必ず大会に出てくるとアスクさんも考えているのだろう。


そういった相手に人間は特徴的な優位性アドバンテージを常に獲得できるのか、と考えた時に僕にはソレは無理と言うより不可能に思えた。だって、人間の優位性は目に見えて分かりにくいという事もあるし、目に見えないものに相手も怯える事がないために、プレッシャーを与える事もままならないだろうと思ったから。


そんな相手に百歩譲って人間と思われるアスクさんがどうやって戦うかなんて、対戦相手に対して創意工夫を凝らすしか方法はないだろうし、それで作りだされたのがあの鎧だというのならば僕の中では納得がいく。


様々な魔法による地形変化に対応してその姿を変え、物理、魔法攻撃に的確なカウンターを打ち込む防御面と、相手が疲労した際に邪悪に忍び寄る一撃必殺の数々。僕が卑怯だと思ったのは、強い弱い関係なく、コレやられたら百パーセント死んでしまうだろう、という攻撃ばかりなのだ。


例えばで言うと、腕だけワープさせるアスクさんの代表的な卑怯技。実際に分かっていれば、体を常に動かしているだけで魔法にはタイムラグがあるから、避ける事は簡単なんだけど。ソレがもし、知らずに疲労して立ち止まっている時にされてしまったら・・・・・と考えるとアレはやはり卑怯だと思う。


どれだけ表面が固いオーガだろうと、隙を見せたら体の中身をあのワープする手に持って行かれてしまう、それが心臓だろうと脊髄だろうとあの人には関係ないのだ、耐性の無い相手だと悲惨な目に合う事は間違いない。


ふと思ったんだけど、アスクさんは確かに不利なのかも知れないけど、コレ実は相手も同じぐらい辛いね。






―――ゴシャン―――――ゴシャン―――ゴシャン―――ゴ、ゴ、ゴッゴッゴッゴッゴ、ボボボボボボボボボ!!!!




んなこと考えてたら、アツアツのマグマ引き連れて走ってきましたヤバい奴。使って来る魔法は攻撃ではなく敵を捕縛する用の陰湿な魔法ばかり。当たれば即捕縛、実験体行きになっている!



「全回復があるって言ったって一撃必殺喰らっちゃったら僕もジ・エンドですからね!どんな必殺技を持っているかは知りませんが当たってあげるなんて一言も言ってませんから~!!!」


塔の内部をひたすらに逃げまくる。僕の遠距離攻撃はワープで避けられてしまうし、だからと言って近距離で戦おうとしたら、何をされるか分かったものじゃない。だから僕はあの化け物をマグマで足止めしながら、飛んで逃げる。


そうは言っても僕のユニークスキルの都合上、逃げる事に関しても補正がつき、腕がワープしてきて僕を斬ろうとしたり、音を消して飛んでくる大量の破片をばらまく炸裂弾や、地面と天井から突如として姿を現す縄のような形をした蛇の魔法からも、その予測地点を知ることが出来るから、逃げる事は結構大丈夫だったりするんだけど・・・。




「アスクさーん、いい加減に諦めて下さいよ。年明けはもう少しですよ?お邸に帰らなくても良いんですかー?」


するとアスクさんのヘルムが、年期の入ったパソコンを動かした時に、ちょっと埃の溜まったファンから鳴るような音をさせながら(擬音で言うならファーーーーーーンと言った感じの音)、ガバァ・・・っと、化け物の口のように開いた。


「ああ―――――――そろそろか、そうだな、俺も諦めて邸に帰ろう・・・被験者第一号なんて名誉な称号をやろうと思ったのに・・・」


勝った!勝った!夕飯はドン勝だ!死亡フラグがなんぼのもんじゃい!


「そうそう、最後に面白い物を見せてやろう。願わくば今年で最も驚いて貰えるとありがたい」


「えっ?」


そう言い、チャキンと白い刀のような刃を僕に当てるアスクさん。いや、実際にアスクさんが動いたわけじゃない、アスクさんの鎧から生えている小さな何かが僕に刃を向けている。


「な・・・・・何ですか、ソレ」



「可愛いだろう?」


聞かなくても分かりそうなことを聞いてしまうほどに、現状は混乱していた。目の前に、アスクさんの鎧からエリンギのように生えているヒョッコリ可愛いソレを僕はよく、こう呼んでいた気がする。


「妖精・・・・・ですか?」


「ああ。動物は懐いた試しがないが、妖精は嬉しいぐらい懐いてくれるんだよな。実験にも協力的だから、今は俺の鎧に住んでいる・・・・アルファルファとか喜んで食うかな」


そう言いつつ、その妖精の顎をウリウリと撫でるアスクさん。そしてソレをなんか嬉しそうに目を細める妖精・・・なんか混沌カオスだ。てかアルファルファとかその妖精はウサギかハムスターなのかな?



見た目は男の子にも見えるし女の子にも見える・・・けど、エリンギみたいに生えている白くてフワフワでアスクさんに懐いている不気味な存在である。


「鎧に憑りついていたって話はマジだったんですか・・・・」


「鎧をオッサン達が叩くと出て来たのさ、それまではどうやら夜行性だったらしい。可愛いだろう」


「僕からは人肉だろうと平気で食べそうな風に見えますけど・・・刃が喉元から離れないし」


「さっきまで鎧が臨戦態勢だったからコイツもそれにあてられたか・・・な?」


「早くその妖精閉まって下さいよ!アスクさんと同じ臭いがします!」


「あ、ちなみに肉に触れるとその部分腐りおちるから気をつけろ?」


「あっぶなぁ!?」


「大丈夫だぞ触れなければ」


アスクさんに似てヤバい妖精にならないか、僕の今一番の不安だ。








・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



1月1日 竜王の棲み処






零時零零分、俺は山の頂にいた。


山というのは勿論竜王の棲み処であり、現在竜王はまだ俺の隣で熟睡している最中である。不法侵入?馬鹿言うな、ここは先月から正式に俺の土地認定されたモノだ。言うなれば竜王が俺の領地に侵入して棲みついているのだ、俺は何も悪くない。


土地の所有者であるジーナの父は渋い顔で「どうにか・・・別の所ではお許しにはなりませんか?今なら城であっても建てさせますので・・・」と言ってはいたが、この場所以外に価値のある所がジーナの領地にあっただろうか?


ここは眺めも良いし、雲の上だから雨も降らない。今の気温はマイナスだが、防寒もしているし日光が気持ちいいという点でソレは補えている。そして何より俺の隣にいるこの竜が、我が物顔でここで寝ているのが滑稽で可愛いのがもうたまらなく好きだ。


そして起きたら、何故ここにいるてきな発言をするだろうから、ソレをさも当たり前のように返事をする自分を想像するといてもたってもいられない。早く起きてくれないかとそわそわして、体に熱が籠るが、そこを俺は冷静に鎮める。そうやって鎮めた自分への褒美に竜王に悪戯では無いが花を添えていく。


その殆どは学校などで貰う花束だが、その中にはしっかりと俺の育てた花もある。球根がとても毒性の強いものだからよく栽培しているのだが、花はいらないため貯めてエルフの中の特定の業者に売ってしまうのだが、今日は何故か運が良い事にいつもの五倍は亜空間の中に花が詰まっているので、全部は売り切れないだろうからその少しを飾っていこうと思っているのだ。


「一輪・・・・二輪・・・・三輪・・・・四輪・・・・五輪・・・・六輪・・・・まだ起きないのか?・・・・七輪・・・・八輪・・・・九輪・・・・蹂躙・・・と、やっと瞼が開き始めたか?」


そう思ったがまたその瞼は閉じてしまい、花はその数を増やしていった。


「十万六千三十三・・・十万六千三十四・・・そろそろ起きるか。それじゃあ終わりにして、後は風で飛ばないように魔法で白い布を使って、竜王中心に花束のようにまとめる作業だな」



それから数分後竜王が目覚め、口が半開きになりながら周辺を見て驚いている。ドッキリは無事成功だ。そして辺りをくまなく隅々まで見渡して、ようやく真正面で透明になっている俺に気がついてくれた。


「・・・・・・なにをしておる?」


「新年あけましておめでとう。今年も仲良グハッ・・・」


初斬首だ、今年もいい年になりそうな予感がする。


「新年早々最悪な気分じゃわ・・・・結界を張っておったのに破られたのか・・・・」


「いや、しっかりと結界に合わせて入る時は竜王の形で入ったぜ。あの結界じゃあ見分けがつかなかったみたいだな」


鎧が勝手に判断して臨戦態勢になったので、飛んだ頭は直ぐに鎧につなげられてしまった。それを見て竜王が、「つくづく気持ちの悪い奴じゃな」というので、痛みは体ではなく心に残った。


「どうだ?その周りの花は?」


「飾ったのはお前か・・・燃やしてやりたいのは山々じゃが、今回はこの花の綺麗さに免じて許してやろう」


人間の形になり花をそっと愛でる姿は神と言われても、『あぁそうなのか』と納得できるほど優雅で美しい。


「となり、座っていいか?」


「下心丸出しじゃな・・・・どうせ妾が言ったところで・・・・」


「いや、竜王が駄目なら俺は竜王の背後をとり続けるだけだけだぞ?」


「いやなぜに背後なのじゃ、・・・・・となりに座れ鬱陶しい」


「座っていいのか?なら遠慮なく」


いま、竜王はピッタリと引っ付かれて非常に不愉快になっていることだろう。どうしてこの男はこんなにもピッタリと引っ付くのだろう、気持ち悪いと。そう思ってくれているなら最高なのだが。


「ち・・・・近いのじゃ・・・」


「どうした?・・・・近いのは駄目なのか?」


「いや、そのもっと・・・大きく使え、妾と貴様二人だけなんじゃから」


竜王が離れようとしてもそれを許す俺ではない。時間の感覚が人間とは違う竜族の竜王に、今の俺をしっかりと脳に焼き付けておいて欲しい。それがどんなに不の感情であっても、忘れないで欲しい。俺はまだ幸せにする方法は持ち合わせていないから、せめて時間稼ぎぐらい、させて欲しい。


「竜王は温かいなぁ・・・・体温が元々高いのか?」


「普通の人間ならば鱗で裂かれ、皮膚で焼ける所だが・・・化け物はそういう反応をするようじゃな」


「それで温かいなら化け物も悪くない・・・・・・なんてなぁー・・・・はぁー・・・・ぬくぃ」


「どさくさに紛れて腕をまわすな変態!!!」


鎧の上からビンタされたはずなのに頭がぐらぐらする。


竜王に対してアスクの性格が変わるのは毎度のこと。

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