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独学の毒薬で異世界無双  作者: ほふるんるん
グダグダ編
158/185

色々なその後の話し  4 孤独の丘

部屋に帰って少し眠った後、昼食が部屋に運ばれ食事を取り。早くベットで寝るようにと忠告をうけ、眠らないようなら魔法をかけると脅迫を受け、渋々ベットに横になっていると瞼も自然と落ちていった。


そうこうあって現在昼の三時。俺の身長にあった大きなベットの上で光合成をしていると、ふと違和感がある事に気づく。あぁ、いや俺が学校に行っていない事に自分で違和感を感じた分けではない。


「背中に――――――コケ?」


コケの花言葉は確か・・・・・孤独。孤独を感じて背中にコケでも生やしたというのだろうか俺は。そんな単純な体になった覚えは無いし、花を咲かせる河童になった覚えもない。きっとユニークスキルの一つの限界突破とかいうスキルのレベルでも上がったのだろう。


今思えば俺に一番影響を与えているスキルはこの限界突破というスキルなのかも知れない、俺の叶えたかった夢、人類の再構築とも言える子供の考えそうな浅はかな夢の具体例を示すような、人間と別の種族の垣根を無くすスキル。


俺の経験から作られたというのなら、もっとこういったスキルが良かったんだが――――カティウスが俺の今までの経験で作れるスキルは毒薬生成という、毒を薬に変えるスキルらしいからソレはソレで仕方がないと思っている。


俺は初めこのスキルをあの青年から受け取った時に、神は俺に罰を与える前の執行猶予期間でも与えられているのだと考えていた。しかし最近はその考えもブレ始めた、実は神様は本当に俺がこの世界で優遇されるようにスキルをつけてくれたのではないかと思い始めているのだ。


家柄も良く、自分のやりたいことは全てやらせて貰えて、親は優しく、自分のステータスも悪くはない。本当にこんな思いが出来るのは異世界に来る最中に神が根回しをしてくれたと考える以外にない、神様ありがとう、なんて思ってもない事を考えてみたりもする。





だが、同時に今のこの時間が進むことが怖くも思う。人間どうやったって、幸せの後には不幸が待っている。どれだけ今が幸せだろうと、どれだけ今が守られていると思っていても、いつかは不幸に出会う時が来る。何でそんな事が言えるか、俺の知識は偏りがあるからだ。偏りがあるという事は絶対に別の事で、見えていないどこかで必ずミスをしているということだ。


知らない事で常にミスをしない人間など、凄すぎて逆に人間かどうかを疑ってしまう。ファンタジーの世界でファンタジーそのものみたいな存在の俺が言うのは、面白いアイロニーだと我ながら思ったが。




ミスをしないために色々やって来たつもりだが、やはり俺は自身の浅はかな行動を抑制する自身が無い。カッコよく言うならば、『俺は自身の知識を受け止める事の出来る器では無い』と言える。このまま俺が自身を振り返らず、真っすぐ俺の道を進んだとしたら、それは必ず俺の想像とは違う世界になってしまう。そして俺も俺の思い描いた俺にもなっていないはずだ。



現に俺は今自身の行いを『失敗した』と思っている。以前から思うべきだったのかも知れないが、今こうして、体の自由が利かない状態で、精神的にもまいっている状態でだから分かりやすくそう思ったのだろう。



俺は、親を困らせ、友達と会えず、一人部屋の中でコケを生やしているからこそ気付いたのかも知れない。もしかしたらまだ爺さんにコテンパンにやられたショックからまだ立ち直っていないのかも知れないが、どちらにせよ今おかれている状況は今の自分にとって悪い状態である事に間違いはない。



竜王に会いに行くことも出来ず、ティア達と楽しく鬼ごっこをすることも竜海とテレビゲームをすることも出来ない。自分にはしたい事があるのに、それが出来ず、目の前にある課題に取り組まなければならないというのは、学生らしいと言えば学生らしいが、俺はその課題の解決策も分かっていないのだから、俺としてはまだ学校から出された課題の方がマシに思えた。


そしてこうやってブツブツと頭であーだこーだと考えていると、自然と自分の中で次にやる事が見えて来るものである。光に照らされて、異常増殖を果たした俺の背中のコケは、もう孤独なんて思わせないほどにそこら中に生えまくり、俺を丁度いい傾斜の丘にしていた。


「キャァアアアアアアア!!!!!」


そう、当然ウチのメイドが入ってきたらそういった叫び声を上げてしまうだろう。一時間ほど考えていたらコケが生え過ぎて丘になっていたと言ったら信じて貰えるだろうか・・・・・信じてもらうしかない。一応動けるアピールとして手を振ってみようとするも、コケが重くて力が出ない。


口で返事をするのは本当に面倒くさかったが、口でその悲鳴に返答することにした。



「大丈夫ですよ、そこのきみ。僕は元気ですから、庭のジョウロで背中に水をかけてはくれないか?背中のコケが痛むんだ」



そう伝え、数分後に駆け足でメイドが連れて来たのはジョウロではなく、ウチの親と回復魔法を得意とする呪院の皆さま方だった。俺の瞼もコケが生えて来て、もう目も開けるのも億劫になってきたので、パタリと俺は後の事を任せて眠りについた。


「なんだこの丘は・・・・」


「アスクレオスおぼっちゃまでございます御主人様・・・」


「コケの中からアスクの寝息が聞こえてくる・・・、この子まだ息はしてくれているみたい。アナタ、早くこのコケを斬って」


「わ、分かった。・・・・・どこがコケでどこが体だ?」


「いつもお仕事ばかりで剣を振っていないからこういう事になるのよ、アナタ。ちょっとは昔を思い出して剣の稽古でもしたらどう?」


「あ、うん。・・・・すまねえ」


結末炎クラァーズ・ファイア



背中とお腹が温かい、ジワジワと皮膚が解かされるような、強酸の中に浸かっているような気分だ。体も軽くなっていく、呪院の人達が回復魔法でもかけてくれているのだろうか。回復魔法のレベルが高いと精神的に温かみを感じて回復でもするのだろう、奥が深いな、回復魔法。



「お、オイ!カトレア!それじゃあアスクが死んじまう!」


「あのコケをよく見て、自衛本能が働いてコケが一枚の鎧のようになっているの。これぐらいの火じゃないと、あの丘からアスクの肌が見える事は無いの、・・・・・見ていて辛いなら見なくてもいいのよ?」


「だいじょうぶだ、子育てが大変なのは覚悟していた。夜泣きって奴がウチの息子は少なかった分、今ぐらい俺達に世話焼かせて貰わないとな」


「そうね、それにこのまま丘になっていたらアスクの可愛いお顔が台無しですもの。早く出してあげましょ」






しばらく温かい回復魔法を受けながら、のんびりとしていると急に肌寒くなって来たのを感じた。目のコケも無くなっており氷河期でも到来したかと瞼を開けると、疲労しきった顔の母と父がいた。体は呪院の人達が複数人係で洗われ、温かい吸水性の高いローブを着せられた。前世で言うバスローブに近い。



「あ、父さん母様、おはようございます。随分とお見苦しい姿で大変申し訳ございませんが、どういったご用件で・・・・って、痛いですよ。なんでげんこつなんですか。って、痛い痛い、ほっぺつねらないで下さい。チョップもやめて、な、なんで、ぎゃ、虐待かぁ!!いい加減にしろぉ!」



「アスク、そのコケ、二度と生やしたら駄目だぞ」


「生やしちゃ駄目よ?」


「な、何でですか。温かいのに・・・」


「だーめーだ!」


「アスク、コケ生やしたらメッよ」


一体何があったのかは知らないが、まあ滅多な事じゃ無いと親からの説教なんて無いから聞き入れてもいいように思えた、コレが親と子供の逆らえない上下関係というものなのか?そうか、体にコケを生やしたら駄目なのか。ふーん、まあ、説教は嫌だからこれからコケを生やさないことにしよう。







・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



アイツ、アスクレオス・ワイズバッシュが自宅謹慎となって三週間が過ぎていた。アイツがいなくなったことで、クラスで静かだった連中が明らかに今までとは違う雰囲気を醸し出して俺と接触して来たり、クラスでにぎわいを見せたのは言うまでもないことだった。 


もともとこのクラスで何もしていなくても存在感を放っていたアイツがいなくなったことは、アイツらからしてみれば好都合だったのかも知れん。入ってきた時は魔王に睨まれた一般市民のようにガチガチに固まっていたのが、今じゃあ嘘のようにワイワイと祭り行事のように賑わっていた。


「ティア様!今度皆でキャンプに行きませんか!」


「ティア様!私達と王都でお買い物しましょ!」


「ティア様!」


「ティア様!」


アスクが隣にいないと正直寂しい、アイツだけだった。俺をティアなんて呼ぶ奴は。俺を容赦なく殴ったり窓から突き落としたりするのは。アイツだけだったんだ・・・・・それが今の所無期限の謹慎という状況。・・・・一体何をやっているんだと正直に言わざるおえない、アイツがいないと暇で仕方無い。



「ははは、順番に言ってくれ。俺の耳は魔族の中でも二つしかついて無い珍しい方なんだから」



一体いつになったら帰って来るのやら、さっぱり見当もつかん。・・・・が、そんな俺にもアスクがいなくなって、一つだけ新しく見つけられたことがある。



「ティア様に話しかけるなら、まずはこの!アスクレオスさんの一番弟子のヴィント様の耳を通して貰おうか!」


アイツはいつからこんな弟子をとったのだ?見た目はアスクを真似ているのか知らんが銀ではなく金だが、キラッキラの服を着ている。


「えぇーなんだよヴィント、い~じゃんか。俺達ティア様と仲良くなりてぇーだけなんだって」


「お前達が影で女子よりティア様の方が可愛いなどと、下賤な噂をしていた事は知っている!今すぐに立ち去れい!」


このとき隣にいた女子たちの目の色が変わったのが誰にでもわかった。


「あ、お前!言っちゃ駄目って言っただろうが!裏切り者!」



コイツら全員馬鹿野郎という事で良いではないだろうか。それに俺はアスクの血を飲めばお前らより背とか余裕で高くなるし、カッコよくもなる。そう、この体は仮の姿なのだよ。血を飲んだあの高身長の俺こそが新のオレ、コレは敵を欺くための・・・欺くための・・・・。


「て、ティア様大丈夫ですか。涙が・・・」


「貴様らの悪しき心にティア様は慈悲の涙を流しておられるのだ。下がれケダモノども!」


「べ、別にお前達のせいで泣いていたわけじゃあ・・・」


「ご心配には及びません、このヴィント、アスクレオス師匠が御帰還されるまでのあいだ、ティア様をお守りします!それにあやつらは後ろで・・・・ホラ見てください」



ついさっきまで俺達と話していた陽気なアイツらの姿は既に女子の輪の中に消え、遠目からでも言葉による暴力によって彼らがリンチにあっていることが見て分かった。


「な、中々えげつないな」


「はい、あのようなことを公に言ったのです、当然制裁が加わっても仕方のない事でしょう。火の粉がコチラに掛かる前に早く食堂に行きましょう。今の時間帯ならSSS組の生徒も少ないはずです」


「お前俺が人の少ない時間帯に行く事を知って・・・・」


「魔王という肩書は中々に重たい物だと思っております、このヴィント、気遣いのデキる男にもなりたいと思っております」


「ならヴィント、もう一つ気遣って貰っても良いだろうか」


「な、何か不手際が!?」


「様づけは止めて欲しい」


「―――――――――かしこまりました。ではティアっち・・・と」


「え?・・・・・マジか」


様づけよりマシかも知れない・・・・嫌でもなんかソレはソレでなんか嬉しくない。なんかもう少し何とかならないだろうか。もう少しマシな呼び方が。


「ではゼパル君と」


「も、もう一声!」


「さ、流石にこの僕でもティアちゃんは早いんじゃないかと思うんだよ!ね、もうちょっと考え直そう!」


誰がちゃんづけで呼べと言ったのだろう。ビンタして正気に戻そうとしたが、背伸びしないとビンタが顔に届きそうに無かったので代わりに腹に握り拳でパンチした。


「ヌッ・・・ビンタが届かないからってパンチなんて・・・・あ、あざとい」


「ぶっ殺すぞ。ティアさんで良いんだ。分かったかヴィント」


「わ、分かりました。ティア君」


コイツ・・・俺を敬っているのか馬鹿にしているのか分からない、シロヘラみたいな奴だな。


「お腹をパンチされたおかげでお腹が凄く減っていることに気付きましたよ。そういえば今日はティア君の大好きなオークのステーキ定食でしたね」


「な、何でお前俺の好物を・・・」


「ふふふん、事前調査はデキる男の基本調査でしょう?行きましょう、ティア君」



アスク、お前の弟子は中々に侮れない相手だぞ。お前が帰ってきたらメイリオとアルバートも誘って五人で食事をするのも面白いかも知れないな。

















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