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独学の毒薬で異世界無双  作者: ほふるんるん
獣人国編 
139/185

魔族地域 獣人国編(鬼) 2 焦り

サブタイトルを統一した感じにしたい。

城内に入った瞬間から窓や床下などから視線を感じる、馬車からこの城内を歩くまでにざっと数えて十数人。どれも床下や隙間、高い場所を好んで隠れるのは獣人と言えど猫と同じような習性を持っているようだ。


「シロヘラ、何時襲われても自分の身ぐらいは守れるようにしておけ」


「王は少し俺の事を見くびり過ぎですぜ、・・・・この奥にいる化け物以外どうってこたぁねぇでさぁ」


シロヘラが言う化け物とは、玉座の間を過ぎた場所にある小さな個室から漂う気配の事を言っているのだろう。そこに自らの足で歩いて近づく事がどれだけの恐怖か、並大抵の生物ならここで回れ右をして城門より、城を出ていくだろう。


「王、この扉の先にいるみたいだぜ・・・・・・気をつけてくださぇ」


「最近噂になっているスキルブレイカーという吸血鬼殺しのスキルもある事だ、用心はする」


連れて来た近衛兵が扉を開ける。目の前に座るのは俺と歳はさほど変わらないだろう女王と隣に立つオッドアイの剣士、扉の向こうから威圧をかけて来ていたのは間違いなくこの獣人だ。王宮には似合わない野性的な瞳を持つその獣人は腕を組み座っている女王の隣で立ったまま此方を見つめていた。


女王を対称に椅子が一つ置かれ、話し合いをしやすいようにか机の前には水が置かれていた。


「今回はお招きいただき感謝する、キットシーアの女王よ」


「あ、うん・・・・・此方こそ来てくれてありがとう・・・・」


「どうかされたか?」


「いや・・・・えっと・・・・もっと怖い人が来るかと思ってて」


予想外の言葉に耳を疑う吸血鬼一同、待て待てコイツは何を言っているだと俺達は考える。獣人語で此方は会話しているつもりだが、もしかすると人族語だったか?・・・・いや、それなら返事も来るはずが無い。


しかしそんな外交の場で一番に思ったのかも知れない感想を口から零すという行為、女王の仮面もまだ出来上がっていないとみるしかあるまい。


「父はそういったお方だが、俺はそういった顔の怖さに関していえば半人前も良い所だ。魔王というのは肩書だけで大変でな」


「あはははは・・・へぇそうなんだぁ。・・・・・・・・・・やっぱり聞いてたのと違うじゃないか」

(何が血のワインだ何が「親父を殺したのはこの程度の雑魚だったのか」だよ、アレ絶対誤報じゃん!)


「今何か言われたか?」


「え!?いやいやいや、何でもないよ何でも。それより今回は沢山話したい事があるんだ」


「此方も時間の続く限り話をしたいと思っている、例の兵器の件などな」


「ニッツライプ国とブリュージュ国の戦争で使われたアレの事だね?」


「うむ、ブリュージュ国からもたらされた厄災と言えるだろう新たなる兵器だ。そして此方としては早急に手を打っておきたいと思っているのだが・・・・・何か聞いているだろうか?」


「ふふん、ええ驚く事なかれ実は聞いていますとも。何と本人に出向いて貰ったのだよ直接ね!」


隣に立つ獣人は、困ったような表情をしながらも周りの獣人族よりかは冷静を装っている。二人を除いて猫側の近衛兵達は全員やっちまったと言うような顔をして、全員困り顔が良く顔に出ている。


しかし俺にはこの女王が、この程度なら提示しても構わないという意志の表れではないかと思わせる。この場にいる全ての獣人が女王によって操作され、相手もそれにつられ騙されているという事態の想定をする。


もしかすると鼻から女王は、この情報には茶と一緒に出す茶菓子程度の役割しか期待していなかったのかも知れない。そして女王はコレで後の交渉がしやすくなれば儲けもの、乗って来なければ慎重な国として評価するという二つの選択肢を得られるという獲物を用意した上での罠。


ここまで考えてみると、一見何も考えて無さそうな少女が俺にはアスクと同類の臭いを放ち始めているように思える。要は怪しい臭いだ、隠し事を餌にして本当に隠したいものを隠そうとする動き。


俺が見極めなければならないのはソレ。話の主導権をどちらにも渡さず続けていく中で、自分にボロが出ないよう気をつけながら相手の一挙手一投足を観察する。


「ほぅ・・・・本人と言うのは・・・・・今回の騒動を起こした本人か」


「そうだよー、相手の国の王様に事情の説明をして貰おうかって言ったら直ぐに来てくれたんだよぉ。一番強いのに偉ぶらないなんて変わった王様だよね~」


この女正気か?どうして自国の数十倍広い領土を持つミトレス王国にそこまで強気に出る事が出来る!?戦争を仕掛けられたら近隣諸国からは援軍すら出る事はない、援軍を出すだけ無駄だと思うからだ。


それほどまでにミトレスは強い。しかしそんな国家存亡も危ぶまれる選択に女王が踏み切れるのは何かあるという事に他ならないだろう。そうでなければ国に危険分子を招きいれる行動といい、吸血鬼と言う彼らにとっては余り良い存在ではないものを招きいれるという事もしないはずだ。


「ならばどのような力を持って戦場を制圧したのか、知っているのだな」


「うん、なんかね~毒らしいよ?」


実にあっさりと分かってしまった今回の元凶の正体。そしてそれを作っている奴にも心当たりがあったりする・・・・・普段人前では隠すようにして振る舞っているが、朝に遊びに行ったりすると良く紙の束が散らばり、その中には毒薬に関する紙も幾つか存在していた。


「毒と言うのは、暗殺などに持ち寄られるアレか」


「そうなんだよ、ビックリだよねあはははは。聞いた時正直ゾッとしたよ」


それからというもの、女王は知っている事をペラペラと話し続け、隣に立つ獣人が止めるまでソレは続いた。


「王よ・・・・少し話し過ぎでは」


「いいのいいの、仲良くなるにはまずお話からってね」


「・・・・しかし情報には価値という物が」


「分かってる分かってる、モクリトス君は情報がお金を渡してでも欲しい猫というのはよ~く私は知っているから。ま、ドーンと任せとけって。・・・それに・・私は情報を買うよりも使う方が好きだしね~」


「・・・・?」


「ま、モクリトス君もこの幼気いたいけな少女から情報の使い方を学びたまえよ。はっはっはっはー」


「・・・・・・・」


現時点で既に二時間が立っていた、女王は一から十まで俺が聞くには全て話しているように聞こえる。俺が全く気付けていないのか、それとも彼女が本当に全く何も考えずに情報を垂れ流しているだけのか。考えたくはないが、恐らく前者なのだろう。


そう思うと喉が渇き、机に置いてある水を飲みほす。初めは絶対的な有利から始まったと思えたこの話合い、此方ででしかやれない事、例えば研究やら大がかりな生産などは此方がやる事になる。


キットシーアがやる事と言えば、本当は先ほどまでの情報を使って一枚かませて貰うというのが流れだが、女王がペラペラと話をしたのでそれも難しい。だからまるで何を考えているかが分からないのであって、とてもソレが怖いのだ。


今からはそのもしも装備が完成したらの話になる。この話は直接金になる話だ、今以上にお互いボロが出やすくなるだろう。特にキットシーアは発展途上国、巻き込めるものは巻き込んで大きくなりたいはず。ならば尚更目を見張ってみるべきだろう、いつかボロを出すその時まで。


「その研究者の毒を防ぐため、仮面のようなものが必要になってくるだろう。その生産については此方が請け負うとして、その材料などはキットシーアに・・・」


「まあそこの所は周りの国の協力も仰ぐとするよ、皆も死にたくないだろうしね。あ、そうだ僕の所は情報提供した分割引して売って欲しいな」


「割引とは?」


「五割」


「舐めてんのか」


口から王あるまじき言葉が漏れる、自重しているつもりが制御が甘かったようだ。しかしこのような事は一度も今までになかった、この会議で女王に振り回され過ぎたか?


「じゃあ四割で良いよ」


「二割だ」


「三割五分!」


「二割五分」


「三割」


「それはダメだ、二割五分が限界だ」


「え~けちけち~ぶ~ぶ~」


「そんな事を言っても二割でも大幅過ぎる値引きだと思ってくれ」


「じゃあもう一個良い情報があるんだけど、それ教えて上げたらもう一割値引きしてくれる?」


「情報の重要度による」


「むむむ・・・・しょうがないな。ま、教えて上げるよ。このままじゃ私も危ないしね。私の見えない所でね・・・・あ、コレは本当に私の見えない所で起きている事だからね?」


「早く話せ」


また他国の王に向かってこのような・・・・・一体どうしたというのだ。


「実は吸血鬼に使用すると思われるスキルブレイカーの研究がされているらしいんだよね~」


女王の口からは、アスクの毒なんて笑い飛ばせる爆弾が飛び出した。


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