番外編 伝説の冒険 第陸話
またまた番外編で、ほんともうしわけない! でもこっちも進めとかなければ後々連続で番外編になるからここらへんで減らしておきたかったです。今回の冒険はギルドの中が基本メイン、料理とはなにかも新キャラモクリトスと二人で考えます。
イザヴァルが眠りについてから3時間たった。その間にはアルーナが彼との対話を試みようとするも・・・
「モクリトス、そういえば貴方には色々聞かなくてはいけない事がございましてよ?あ、貴方のこと私モクリトスとお呼びしますので。私が呼んだらちゃんと返事をするのよ?」
「・・・話す事は何もない」
「あら、それは命を助けた挙句にイザヴァル様にまで合わせて上げた、この私に話す事は何も無いと言っているのかしら」
「・・・・」
全くこのように二人の間は中々うまくいきそうにない。というよりも、モクリトスにはまだ話す余裕は残っていないという方が正しかった。彼は現時点では本当は人と話す事も出来ないほどに心と体に傷を負っていた。
イザヴァルもそれを知った上でモクリトスを放置しているのだから、たちが悪い。本当はその場で治療した後に睡眠をとることが、モクリトスとっては良かった。
しかしイザヴァルはしない、本当にモクリトスを信用たりえるものなのか定めるためだった。彼はこの三時間、アルーナとモクリトスの会話を睡眠をとりながら聞き取っていた。
「全く・・。新しく入ってきた召使は不愛想ね、・・・はぁ、早くイザヴァル様起きないかしら」
「・・・・」
「はぁ・・・困りましたわ」
いくらコミニュケーション能力の長けたお嬢様でも常に黙った相手にひたすら話しかけるというのは骨が折れるらしく、途中から二人とも無言の空気が流れる。そしてアルーナがぽつりといった一言が二人の会話を再開させることになる。
「・・・・今晩のご飯なにに使用かしら」
「アルーナの作った物以外が良い」
「は?」
モクリトスも話しをする気は毛頭無かったのだろう、ただしかし、今回は相手が悪かった。一度トラウマを植え付けられると、生物として二度目は避けようという危機感を覚える。モクリトスにとって先ほどのアルーナの発言は、二度目を避けようという【危険信号】に他ならなかった。
「イザヴァルの作ったものなら何でもいい。嬉しい」
「まだ混乱している様ね。ふふふ、大丈夫。直ぐに美味しい物で元気にしてあげますわ」
モクリトスは知らなかった、その発言はアルーナに対する【地雷】という事に。
「い、嫌だ。何も食べたくない。怖い、やだ、作らないで」
モクリトスは知らなかった、その発言はアルーナに対する【起爆装置】という事に!!
「フフフフフ・・・フッフッフッフッフ・・・・オーっホッホッホッホ・・・・!」
「アルーナ、どこに行く気だ!、まさか、・・・厨房に行くんじゃないだろうな?」
「あら、モクリトス。どうしたの?力の限りを尽くして私に何かを伝えようとしているけど。お腹が空いてお腹を押さえているのなら今すぐ待っていてちょうだい。あなたの大好きな私の料理を作って差し上げますから、イザヴァル様にも昼食を用意しなければいけませんし」
その瞬間、ベットから飛び起きるものありけり。
「う、うーんとても快適な眠りだった。どうやら少しは打ち解けたようだね、さぁ、そろそろ出かけに行こうか。モクリトス君も直してギルドに付き添ってもらうとしよう。アルーナ、昼食と服はこちらで用意するからここで待っていてくれ。君も昨日は大変で疲れただろう、今のうちにつかれをとっていてくれたまえ」
「私はイザヴァル様とご一緒に・・・」
「アルーナは昨日の疲れが君には分からないかもしれないが残っている。いいかい、僕は君が疲れで倒れでもしたら一生自分の起こした過ちを悔いるだろう。そうならないためにもここで私達の帰りを待っていてくれ」
「イザヴァル様・・・」
イザヴァルはモクリトスの状態異常の何個かを回復させると、宿屋を出てギルドに向かった。
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「イザヴァル、お前アイツの扱い慣れてるのな」
「アルーナのためにも早い所帰ってご飯の支度をしなければね。あとモクリトス青年、余計な事を言うもんじゃない。危うく私も火の粉をかぶる所だった」
「火の粉っていうよりも火竜のブレスだけどな」
二人ともニヤリとしたが、あえてその後の言葉は避ける。お互いここでアルーナの料理に対する共通認識しているという事だけ理解したならそれでよかった。
それだけで二人共救われる道を選ぶことが出来るのだから。もしもどちらかが、アルーナの料理が好きだなんて言った日には夜の寝床は棺桶の中になるか、トイレの中になるのだから。
「とりあえず、イザヴァルもアレの被害者ってことで良いんだな」
「被害者というのは悪く言いすぎたぞ、モクリトス青年。せめて被災者としておこうじゃないか」
「いや、あんたの方が酷いからな」
モクリトスよりも数回イザヴァルはアルーナの料理を多く食べている。その体験の記憶から紬出された言葉は、抗いようの無い災いとして深くイザヴァルの味覚に傷をつけていた。
町の所どころから漂ってくるいい匂い。モクリトスにとっては特に食欲をそそるものだった、いつぶりの食事だろうと心の底から感動がわいてくる。まだ香りをかいだだけで、これだった。それほどまでに彼の今日まで耐え抜いてきた地獄は恐ろしい所だった。
「アルーナには悪いが、先にモクリトス青年と昼食をとる事にしよう」
「良いのか?」
「別に買ってその時に三人で食べれば問題あるまい?」
「イザヴァル・・・あんた良い性格してるよ、本当に。よし、そうと決まれば早くその報酬とやらを受け取りに行こう!所で俺達三人分が食べてアルーナの服が買えるようなお金がそれで稼げるのか?」
「それはどうだろうね。私の思惑通りならきっと面白い結果になるはずだが・・・」
「・・・?」
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ギルドの中は今大騒ぎとなっていた、何者かが森の奥地にしか生息しないリーサルタイガーを四体狩って朝に持ってきたという知らせがギルド内に溢れていたからだ。そしてそこにそのリーサルタイガーなる黒い虎を狩ってきた人物が現れたとなり、またもその騒ぎは大きいものとなる。
「お、おい・・・受付のコフィルちゃんの言ってた甚平ってアレのことじゃないか?」
「ほら、やっぱりコフィルたんは嘘ついて無いんだって。良かったなぁコフィルたん、はぁはぁ」
このように、他の冒険者たちも目を見張る大狩猟となった今回の狩り。当然その金額にも冒険者達は気になるらしく、ワイワイと騒ぎながらもイザヴァルとギルドの役人との会話に耳をそばだてる。
「お、お待ちしておりました。イザヴァル様でございますね、ささ、こちらの支部長室へどうぞどうぞ・・・・」
「支部長室?私はてっきり報酬を受け取って帰るだけだと思っていたんだが」
「いえ、貴方様の持ってこられました品ですが・・・今貴族の方々に大変注目の素材となっておりまして・・・そしてセリをおこなった結果なんですが・・・予想以上の価格となりまして」
「手渡しは難しいのか・・・・分かった。なら早速向かうとしよう、支部長室は二階だったかな?」
「ご案内致します」
三人が行った後、冒険者達は静まり還り、一人、また一人とコソコソと支部長室に足音を消してコソコソと扉の前まで歩き、聞き耳を立てて中の情報を聞く。
「やぁ、君たちがリーサルタイガーを4体も仕留めてきた強者だね。僕はこの町の支部長をしているノア、少ししたらこの町じゃなくて王都の方に移動になるけどとりあえずよろしく」
「よろしく」
イザヴァルは握手を交わし、モクリトスにも手を伸ばしたノアだった。しかしモクリトスは表情は何とかできても体が震えて手を握り返すことが出来なかった。イザヴァルはこのとき、長い時を費やしてでもモクリトスの心の傷を回復させようと思ったのだった。
ノアも何か察したのか、手を引っ込めると二人を席に座らせ話合いに入る。
「それで四体の合計のジェルだけど、毛皮全部が大貴族に全てまず売れた。これでまず金貨3枚が四枚、もうコレだけで君たちには十分だろうけどまだある」
「イザヴァル・・・お前何を倒したんだ」
金貨という未だモクリトスの触った事の無い名前の貨幣が出て、若干困惑気味のモクリトス。
「まず肉だけど、コレは料理魔人というとある料理人の手に渡った。何やら将来料理王になる自分の息子に食べさせてあげたいとか、それで出されたのが四体合計で銀貨銀貨100枚、これで食費だけなら数か月もつね」
「イザヴァルさん・・・俺銀貨20枚で取引されたんですが」
銀貨になってようやく先ほどの金貨の重みを知る事になるモクリトス。隣の人は以前自分を売ったような奴ほど下卑た笑みを浮かべる事も無く、淡々と銀貨を数えている。先ほどの金貨がそれ以上と知ると、もうモクリトスに怖い物は無かった。
「それで骨やら牙、コレは武器屋がよだれを出して欲しがるから、まだ競売途中だから何とも言えないけど現時点で銀貨20枚」
「イザヴァルさま・・・俺、今現時点で取引されますよ」
「少し黙っていてくれたまえ、ノアの話しが聞こえない」
「それと、最後に血が魔術ギルドに売れて銀貨5枚。合計で・・・」
「金貨12枚と銀貨125枚、1325万ジェルですね。確かにいただきました」
支部長室に、ふぅーっという緊張の糸が切れたように溜息が漏れる、ノアのため息だった。
「いやぁー、一千万ジェルを越えて来ると流石に空気がピリピリするね。数え間違いとかないかい」
「きっちりと」
「そうそう、コレ言っておかなればいけないんだった。一千万ジェル手に入れたってことはお金の管理も今後気をつけなければいけないってことはわかるだろ?」
「今回思った以上に多かったからどうしようかと思っていたんだが、それの管理の仕方でもあるのか?」
「ギルドに預けてみるってのはどうだい?期限が来ればそれは返される、勿論何かしらのお礼も付け加えて。1000万以上年に稼ぐ冒険者にはこういう取り組みをしていこうかなぁと考えているんだ、そうすればジェルが人から人に回って結局は全員の利益になるだろ?」
「ふむ・・・・なるほど。こちらは多すぎるジェルを管理できる、ギルドは預けられたジェルを使って国の貢献か。悪くないが契約書を見せて貰ってからだ」
「それならこれ」
隣の秘書からノアが受け取り、ソレをイザヴァル達に提示する。契約書の内容にイザヴァルは数十分目を通して、確認した後。
「これで良い、金貨は10枚預ける事にする」
「分かった、責任をもって管理させてもらうよ。これで話はお終い、長話悪かったね」
「いや、元々こちらの持ってきたもののせいだ」
「あ、そういえばイザヴァル君、君の冒険者ランクBランクまで4階級特進だから」
「何を・・・」
「いやだってさぁ、金貨10枚とか預けてくれる君に僕達ってもう甘々なわけじゃん。てかもう頭上がらないっていうか?そういう感じなんだよね」
イザヴァルは予測していなかった情報に耳を疑った。
「あれ、君ってそんな顔するんだ?さっきの金貨12枚の方が僕は驚くけどなぁ。アレがまさか予想通りってわけじゃ無いだろうし、君って後から実感わいてくる感じ?」
「い、いや。しかしBランクになってどうする。私のやってきた仕事はFランクの仕事ばかりだぞ、それと狩りを少々で何とかやってきただけだ。それがBランクだと?」
「ま、そういう事だからよろしく~」
「お、おい。ちょっと」
「大丈夫だって、君の実力なら何とか出来るから!しんぱーいしーなくーてだーいじょーぶー」
支部長室から逃げる支部長。それを追いかけようとするも、秘書に止められる。
「お引き取り下さい」
「いや、しかし・・・」
「お引き取り下さい」
「・・・・」
「イザヴァルもう帰ろうぜ。俺達で飯食う時間が無くなるぞ」
「しょうがないか・・・あ、おい秘書」
「何でしょうか」
「ノアに伝えておけ、支部長権限でひとりCランク冒険者の登録をしといてくれと。隣のこの青年がなる、名前はモクリトスだ」
「え、それはこまりま・・・」
「私の気持ちが分かったようで何よりだ。さ、モクリトス。行こうか」
こうして、ギルドに新しくBランク冒険者とCランク冒険者が加わったのだった。
いや~けっこう集中してかけた気がする。




