魔族地域 獣人国編(猫)その4 メロエとの会話その1
メロエとの会話に入ります、猫が出てくるのはメロエの話が終わった後になりそうです。
トントンと、扉を叩くも扉の向こうからは音がしない。昔はメロエの気配は感じるほどの音が漏れていたのに対し今は全くの静寂、今はメロエの部屋のある店の裏の二階だが、下の厨房の音の方が良く聞こえる。
「返事が無い、ただの空き部屋の様だ・・・なんて言ってる場合じゃないな。メロエ開けてくれ!お前と話がしたいんだ」
返事は帰ってこない、まさかとは思うがこちらからの音が聞こえないようにする竜王が使っていたような結界を張っているのかも知れない。扉を引いてもびくともせず、こちらからは全く開きそうにそうにない。こうなったらあちらから出て来て貰う方法しかない。しかしこの方法はメロエが俺の声を聞いていて無視をし続けているという結界を張っていなかったという状況でしか使う事が出来ない奥の手だ。
「そうか、なら今日は帰るな。また明日来るから、落ち着いたら話してくれ・・・じゃあ、また」
そういい、魔法を使って足音だけを一階の厨房まであるかせる。人間相手がいなくなれば油断して部屋から出てくるものだ、俺は扉の前で待ちかまえ俺に気付きメロエが扉を閉める前に扉に手をかける作戦だ。
「まだそこにいるんでしょ」
どうやら全てお見通しだったようだ、しかしなぜ俺がこういった行動に出ると思ったのだろうか。これをやったのは初めてのはず・・・
「何となくわかるのよ」
「俺の心が読めるのか?」
つい口に出てしまった、メロエの恐ろしい所だ。俺の考えが幼稚で誰もが考えそうな事なだけかも知れないが心まで読めるとなるといよいよメロエがテレパシーの魔法を手に入れた事になる。いや、そんなものは創造出来るものじゃないから魔法では無理だが。
「少し・・・というかかなり話がしたい。部屋に入れてくれ」
「私の部屋に入る・・・本当に良いの?」
メロエのその言葉は俺に何故そこまで聞くのかと疑問に思わせると同時に、この部屋に入るともう以前の友人関係ではなくなってしまうのではないかという怖さを感じさせた。
「開けるぞ・・・」
部屋に入るとまず目の前にあったのはメロエとメロエの抱きかかえている長さ三メートルほどの大きな人形、見覚えのある顔と見覚えのある鎧を着ていた。そして辺りを見回すと様々な恰好をした同じく三メートルほどの見覚えのある顔の人形がメロエのベッドで横になっていたり腕立て伏せのポーズをとっていたりとひしめき合っていた。下を見ると床にも小さな同じ顔の人形が散乱していた。
「メロエお前・・・・」
「何かしら、カッコいいでしょ?これもあれも全部アスク。私のスキルで作り上げた最高傑作なの」
・・・このままこの空間から逃げ出したい。表情豊かな俺の顔をした人形達がメロエに抱き着いていたりベッドで横になっていたりするのだからもう気持ちが悪い。天井には誰が描いたのか分からないほど上手な俺の絵、しかも同じようなものが天井にもある。
「おかしいとかおかしくないとかの問題じゃないぞこれは・・・一体お前は何を思って人形を作ったんだ・・・」
「何を?何って決まってるじゃない、アスク、貴方の事だけしか私は思ってないの。ただ私にとってアスクは眩しすぎた。初めは小さい頃から私のそばにいた時々会える友達、村の友達とは違って楽しいお喋りも遊びも余りしないただ変わった事を一緒にするだけの変わった友達、ただそれだけだったの」
「あぁ、確かに俺はメロエとは余り面白い事はして無かったな。おままごとぐらいか?後は少し訓練紛いの事をしたぐらいか、しかしそれだけじゃとてもお前がここまで変わってしまうとはどうにも俺は・・・」
「でもそんな時間が私には楽しかった、他の友達と遊び方は違うけど楽しかった。毎日何か貴方と会うと新しい事をやって見せてくれた。私にも出来るようにやり方も教えてくれた、初めてアスクと同じ魔法が使えるようになった日はとても嬉しくて皆に褒められたり凄いって尊敬の眼差しを向けられたけどアスクは違った。誰よりも喜んでくれていたけど、誰よりもその笑顔は作り物の笑顔だったの」
作り物の笑顔って・・・だけど確かに作り笑顔は昔のクセで多かったな。俺・・・だけではないと思うが人の幸せを共感して喜べるほど人間出来ている奴なんて少数派だと思っている。幸せや尊敬には嫉妬心がどうしても生まれるし、人の不幸は蜜の味に感じられて大変気分が良い。しかしそんな作り笑顔をメロエにまで見せていたとは、クセだと思って直さなかったのが失敗だったか。
「それから私はお父さんに料理を、お母さんには家事とかその他諸々を教えて貰っているの。あなたに認められて傍にいるために」
「俺は認めてるぞ?料理も家事もお前にかなう奴なんて同い年で見た事が無い。大人顔負けの技術をメロエは持っていると思うぞ」
「それだけじゃあ駄目だったの、だってそれならアスクはもっと遊んでくれるはずでしょ?もっと私を必要としてくれるはずじゃない、だけどアスク、貴方は違ったの、ごはんを用意して話をしようと思ってもごはんを食べたら少し話すだけですぐにワープして帰っちゃうもの、もっと話がしたかったの私は」
確かに長話は余りしたことが・・・というかした事すら無かった。俺は今もだが新しい肉体と規制の少ない今の世界を楽しむことで頭がいっぱいで、メロエの気持ちや他の人の気持ちをまったく考えていなかった。そしてメロエもそんな俺に優しくしてくれた、普通考えて可笑しな事だ。子供達と殆ど遊ばず勉強と筋トレしか人前ではやっていない不気味な子供に優しくする子というのも。
「それからアスクと私は学校に通い始めてさらに話をしなくなった、私も同じ組に入りたかった。だけど色々したけどすぐには駄目だった、アスクも知っているでしょ、校内で決闘して学力と力のどちらも相手を上回っていればその人とクラスを変える事が出来るサタン様の考えたルール、私は余りアスクに乱暴な所は見せたくなかったからアスクにZクラスから降りて貰おうと思ったのだけど貴方は誰にも負けない所か相手にすらならなかった・・・」
そういえば良く校内で絡んでくる奴らがいたがメロエからの刺客だったのか。
中途半端な所で終わってしまい申し訳ない。




