魔族地域 獣人国編(猫)その3 揺れ動く殺意
溜まっていたあれこれを消化するのに一週間かかってしまった・・・
「あっちにいるのが例の竜王ちゃん?」
メロエが竜王の亜空間内へと入ろうとすると、その時まで見えていなかった分厚い結界によってメロエの足は止められた。分厚い結界など張って何から身を守るつもりだろうか、この邸には既に結界が何重にも張られているというのに。ゴンゴンと結界にノックしても中には全く聞こえていない様子、するとメロエが何やら懐から一本の短剣を引き抜き結界に向かって何かの詠唱をすると結界が崩れた。
「妾の安眠を邪魔するとは何事じゃ・・・見ぬ顔じゃな、おいアスク、お主の連れか」
「初めまして竜王ちゃん、私メロエって言うの。アスクとは昔からの幼馴染で二人の事はさっき聞いたばかりなの」
空気がビリビリと震えているのが分かる、竜王は自分の作った結界を破って入ってきたメロエを警戒し、メロエも何故か竜王を威嚇しているのか表情と声が怖い。二人の会話の間に入れず傍観しているとメロエから竜王へと近づき会話が始まった。
「人の子よ、妾に何か用か。生憎妾は睡眠と言う生理現象の途中なのじゃ又後ではいかぬか」
大きなあくびをしている竜王さんはめっちゃ可愛いが、あくびをしつつも油断を全くしていない。そしてメロエもそのまま引き下がらず防音魔法をかけ竜王と会話を始めた。
「何話してるんでしょうね~、アスクさん僕も自己紹介させて下さいね。こういう時の為にとっておきがありますから!」
「年上の竜王と何を話しているかは知らないがとりあえずお前の自己紹介の場は自分で用意するんだな」
「そんな!?」
「済まんな、余計な事をするとまた迷惑ばかりかけてしまうかもしれないからな」
・・・ボソッ「根に持つなんて大人げない人だなー」
コイツ聞こえて無いとでも思っているのか?大人げなくて結構だ、年齢的には俺は小学二年生だし。二年生で三メートル越えていてこれからも伸び続ける気がしていてもだ、最近限界突破のレベル一の効果・・・というか怖さをようやく理解した。
人としての壁を超える事が出来る、つまり状況次第では俺は人間であって人間でない超人になりかねないという事だ。目に見えない怒りとかの感情エネルギーで変身の切り替えが出来たらいいがこのスキルはどうやら違うらしいく外見から変わっていくようだ。ここまで言い方があやふやなのは限界突破を持った人間でここまで変化が体に現れているのは俺だけなのだ、気持ちの悪い程の身長の伸びや筋肉の付き方・・・社会的にもこの能力には困っている。
学校でただ一人どの種族よりもダントツで背の高い人間、滅茶苦茶悪目立ちをする。上級生には自然に上から目線になり、下級生は愚か同級生にまで怖がられる始末。唯一Zクラスだけは全ての学年から集まった奴らがいるのでそういった身長や歳でとやかく言う奴が全くいないのが唯一の助けだ。
「この歳で大きな体とオッサンの心を持つと意外と苦労するだぞ、竜海」
「ははは、アスクさんの場合は体は大人、頭脳は子供ですね?」
「やかましいわ、それよりもメロエが亜空間から帰って来ているな。話は終わったのか」
メロエの体からは殺意とは違った何か黒く渦巻くものが体から溢れているが竜王に何か言われたのだろうか?
「ねぇアスク、竜王さんから今までの事少しだけ聞いたわ・・・あなた竜王さんの事好きなの?」
「おう」
短剣が飛んできたので受け止めメロエに返そうとするとメロエはなぜか半泣き状態で邸を飛び出していった。
「おっと、アスクさんまさかの屑男フラグ来ましたかね~、どうするんです?このまま彼女を放置していたら確実にアスクさん確定で燃えるゴミですよ?」
流石に俺でも今の状況ぐらいはマズイと思っている、メロエには小さい頃からの幼馴染と言うだけで好かれていたから俺よりももっとましな奴を好きになって欲しかったから余り話しかけなかったんだが、今の俺の言葉ももはやメロエには言い訳にしか聞こえないだろう。絶対恋愛感情は無いという事をはっきりとさせておくとするか。
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~メロエ宅兼料理王の店の裏~
「お、アスクか。久しぶりに見たがまたおっきくなったな~ガッハッハ。所でよお、お前メロエ泣かしたか?」
「・・・はい」
言い訳の余地なしだ、いましたところで何も状況は変わらない。変えられるとしたらそれはメロエと早く会ってからだ。
「お前がメロエを泣かすなんてなぁ、珍しい事が起こるもんだな。メロエのやつ急に泣きながら自分の部屋に飛び込んでいったから厨房にいたやつらがビビって・・・」
「メロエは部屋にいるんですね、少しお邪魔します」
「気おつけろよ」
何か走ってメロエの部屋に向かっている俺の後ろからジャバの声が聞こえた気がするが今最も優先されるのはメロエと話をつける事だ。
現在毒を使わなかった場合のアスクはメロエよりも弱いです。




