魔族地域 獣人編に入るまでその4 前半茶番後半獣人登場
塔から仕事の時間まで公爵邸に竜海と竜王が、ウチに住む事となった。二部屋客室を用意していた・・・・勿論二人にその部屋を使って貰おうと思っていた。しかし竜海がシンリーに何かコソコソと言ったかと思うと、どういった密約が交わされたのか二人とも俺の部屋に泊まる事に。
普段から綺麗な部屋だから別に構わないが、竜王が来るというのなら装飾品を変える時間ぐらいは欲しかった・・・・。
「どうしてそこまで俺の部屋に泊まりたがる、楽しいものは俺の部屋に一つとして置いていないぞ」
「分かってますって、別に良いじゃないですかー。痛いポスターとか張ってるわけでも無いでしょう?」
・・・・・コイツ今がどういう時代か本当に理解していっているのか?ポスターは愚か、紙の値段も一枚で銭貨で五十枚はするぞ。紙の量産でも出来れば一儲け出来るぐらい・・・・あ、・・・・・・・いや、金に困った時にでも考えるか。
「馬鹿やろう、なわけあるか。なら尚更俺の部屋にいる意味など・・・」
「正直子供の真似事をしている大人の部屋ってどんなものか気になったのが殆どです」
廊下を歩き扉を開けると、以前は殺風景だった部屋が薬品を並べる棚や鑑賞用に粉を振った魔物の四肢が綺麗に並べられたとても趣のある部屋となっている。
魔物化した虎や烏などの脚部の骨などを眺めながら、スッと紅茶や珈琲を一口飲み、それと共に邸にある適当な菓子を食べる。・・・・考えただけでも素晴らしい。
「思ったよりアスクさんの部屋っぽいですね・・・・・でも何故か不思議と薬品っぽい臭いはしないというね、それに何かいい匂いまでしてきて怖いです」
「観賞用とはいえ保管は厳重にしている、臭いが無いのもその影響だろう。何よりこの部屋にはメイドが僅かだが数人出入りする。そのメイド達が香水でもつけていればそういった臭いにもなる」
「ぐぬぬ、なんとうらやま・・・けしからん、これだから貴族様は嫌だね」
ちなみにコイツの塔には天使族のメス達が大量にいるワケで、竜海はその天使族を収める長でもある。俺にとってはむしろそちらの方が羨ましい、好きな時に高レベルの実験体がフワフワとよって来る環境なんてものは恵まれ過ぎている。
「おいアスク、コレは全てポーションなのか?」
竜王が、ポーションを棚から手に取り俺に見せる。最近はソレの上位互換がエルフの国に飛ぶように売れるので、余り使われなくなったブツだった。
「ああそうだ、今竜王の手に持っている奴が快感のポーションだ。一つ飲めば体温が少し上がり血の巡りも良くなる、用は滋養強壮効果やその他余り口に出せない効果がてんこ盛りであるわけだが・・・・」
竜王は手に持ったソレを握り潰してしまった、それは止める暇もない瞬きと瞬きの間の出来事、握り潰したかと思うと手から炎を出し液体は全て気化してしまった。快感のポーションは気化しても効果を発揮するというのに・・・・三人共これから少し大変な事になるぞ。
「アスクさんなんかこの部屋熱くないですか、竜王さんもどこか色っぽく・・・・」
竜海が一番初めに快感のポーションの餌食になりつつあるか・・・・・全く情けない奴だ。
「少し痛いぞ」
「え?」
真正面からなら竜海はガード出来るだろうが、恐らく背後からなら手刀で・・・・・・・と、上手くいったようだ。綺麗な笑みを浮かべて竜海は倒れた。後はコレを部屋の隅にでも投げて入ればいい。初めてやったが上手くいったようで良かった、手刀の経験はなかったがどうやらセンスはあるようだ。
「竜王は大丈夫か?」
「戯け、この程度の粗悪品が妾に通用するとでも思うておるのか?」
「いや、効いてないなら良い。流石に二度目も上手く出来る自身が無かった」
「しかし熱いのぉ、貴様何か飲み物を持ってまえれ」
「りゅ、竜王?」
「なんじゃ、はよ持ってこんか。はぁ~あっついあっつい」
彼女から出る汗が目に刺すように目に映る、コレはヤバいと。竜王もポーションの効果を受けているが、何より自分も竜王から目が離せなくなっている。こういう時の対処方はどうだったか、竜王をまず・・・・違う。そうではない。
「俺はまず部屋を出る、そして顔を叩き、部屋の換気をする」
「どうした?お前までおかしくなってどうする、ホレホレはよせぬか」
頭で考えれないときは口に出して実行する、それはいつもしている事だ。口に出すという事は思った以上の効果を発揮する。
「では言って来る。扉を開けておくから竜王の後ろにある窓を開けて換気をしておいてくれ」
「はよ行かぬか!」
「わ、分かった」
扉を全開にし、とにかく雑念が多すぎる今は何も考えない事を意識して全力で廊下を走った。
「ホッ・・・・やっと行きおったか、後少しアスクがここにおれば危く妾も襲う所であったわホホホホ・・・ゴホゴホ・・・しまった、ポーションを吸い過ぎたか、・・・・早い所換気をせねば」
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飲み物をメイドから受け取り、部屋に運ぶ最中警報のような音が鳴り響く。
「スキールニル、いるか?」
「はい」
「侵入者か」
「・・・・・今連絡が入りました、どうやら獣人の男のようです」
「玄関に急ぐとしよう」
玄関につくと、既に刀や重火器を所持した執事が並んでいた。何で武器がそんな異世界とは思わせない武器ばっかりなんだというツッコミは後にして状況を確認する。
獣人はまだこの扉の前にたどりついておらず、此方は既に万全の状態で敵兵一体を駆除する陣形で迎え撃つ。当然武器は見えないし、構えたりはしない。どの執事も幻術魔法で武器を隠し、客人であった場合とそうでなかった場合に備えているのだ。
少しばかり待っていると、扉が開き獣人の男が邸の中に足を踏み入れた。
「良くいらっしゃいました、その腹部の切り傷と言いどこかで戦闘でもなされた帰りでしょうか?」
「ここから二日後我が国に援軍を送って下さる・・・・ワイズバッシュ家の方でよろしいか」
援軍・・・、援軍援軍・・・・仕事とは恐らくこれの事か。
「・・・多分そうだ」
「私達の祖国ブリュージュは今や敵国にいるあの男によって劣勢、このまま増援を二日待てば勢いは変わらず我が国は押され・・・取り込まれるでしょう・・・どうか・・・・どうか我が国に急ぎ援軍に来てはいただけないでしょうかクレウス様」
「僕は父ではありません、その息子のアスクレオスと言います」
「で、では急の用事と貴方のお父様に伝達を・・・」
「そっちの国のお偉いさんに嫌われていて何やら行きたくないそうです。都合の良い忠誠心の欠片もねえ犬クソ野郎はくたばっちまえとも言っていましたが、変わりに僕が行くという事で話が纏まったようです」
相手側からしてみれば最悪な気分だろう。援軍が化け物ではなく、化け物の子供にいつの間にか変わっていたのだから。
「で、ではせめて数を・・・・我が国に五千・・・いや、二千で良い。保有している兵を貸し与えて頂きたい」
「大丈夫です、二千よりも心強い友達と一緒に行きますから」
「我が国は・・・・・滅びるのか・・・・?」
獣人の言葉を聞き、腹の底で笑う自分を抑えつけながら平常心で話を続ける。
「まだ滅びると決まったわけでもありませんし戦争に関しては多分この世界で最も詳しいと自負していますので心配しないでください」
そして俺は名案を思い付き、左手に新しく完成していた毒薬の小瓶ともう一つ、右手に小瓶を持つ。左手に持った毒薬は対多人数用に作った大量殺人兵器だ。
俺が異世界へ飛ばされる理由になった毒薬の過程で出来た薬だ、しかしこれだけでも十分だろう。この瓶だけでも軽く大国一個潰せる。特定の人種の心臓に寄生して破裂する頭の良いお薬だからな。
人種の設定は今回は難しいから手当たり次第やれば良いだろう。破裂しない奴にはマーカーを飲ませておけばいい。
「右の瓶を一滴でいいので戦争に参加している見方の獣人全員がなめる事。もう片方はまあ、他国に影響が出ないような戦場のど真ん中で使ってみてください。おたくらもどうせ領土争いとか宗教とかでしょう?」
「コレを使うとどうなるのでしょうか?」
「沢山の獣人を殺す兵器となります、持たせる獣人は足が速い方が良いでしょう。それでは貴方のその傷も治った事ですし、早々にお帰り下さいませ」
整列していた執事とは別に、スキールニルがユニークスキルを使用し獣人の横で回復魔法を使用していたため、獣人はきづかない間に傷が完治していたように思えた事だろう。
「さあ、早く報告を持って帰りなさい」
獣人は涙を流しながら走り帰って行った。敷地内から出るまで執事たちはそこから動く事は無い。敷地内から姿を消した瞬間から執事たちは各持ち場に飛び散るのだった。
「父さんか母様に報告した方が良いか?・・・・スキールニル、どう思う?」
「・・・・・・・・」
「いないのか?」
「おります。申し訳ございません、回復魔法は少し苦手で・・・・」
「そうか、ならば俺は少し部屋で休んでいた方が良いか?」
「いえ、私は立ったまま休めますので」
「・・・・・一度俺の部屋に帰る。換気も出来ているだろうしな」
「御意」
立ったまま休むには限界がある、魔力切れに近い状態なら尚更だ。
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「帰って来たか。なんじゃ・・・お主の後ろのソレ、なんかグッタリしておるのー」
「見えているのか?」
「妾の目を馬鹿にしておるのか?小娘一人のユニークスキルなど通用せぬわ」
「しかしタイプの男からの幻術魔法には簡単にかかってしまうという・・・・って冗談ですよ冗談、竜王さん落ち着いて落ち着いて、そこの女性もベットにエスコートしなくちゃ」
「竜海にも見えているのか!?」
「ええ、バッチリ。ま、小娘のユニークスキルなんて何とかかんとかですよ。それより早く寝かせて上げましょうよその子」
「あ、ああ。でもコイツ、俺が寝ないと寝てくれないからなぁ」
「ではお昼寝しますか、少し寝ればその子も回復するでしょう、ってなんか落ち込んでません?」
「ユニークスキル・・・バッチリ・・・うう・・・・」
何かショックだったようだな。




