ステータスと才能ある助手
クレウスはまだすることがあるといってトレーニングルームに残った。一人でこの長い廊下を歩いているとき、いつも表現しづらい気分の高まりが肩を突いているような気分になる。最近長い廊下を見ると走りたくて仕方がないのだ。
俺はハムスターでなければ、馬でもない。しかし、内から溢れんばかりのエネルギーを走って消費しなければ内側から爆発しそうな気がしてならない。俺の知識は一時の衝動だと示しているにも関わらず、俺は先ほどまで走っていたというのに、自分の部屋まで駆けだした。
部屋の前に着いて息を整えると、気になっていたステータスを扉と同時に開いた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ステータス
名前:アスクレオス・アイズバッシュ
性別:男
称号:公爵家長男 天才 魔王の注目者
隠し称号:探究者 転生者 カティウスの友達
職業:
年齢:4歳
種族:人族
レベル50
HP:1000
MP:5000
攻撃力:500
防御力:450
素早さ:600
賢さ:1000
器用:1000
幸運:100
通常スキル
・薬学12・鑑定1・看破3・剣術1・大剣術1・身体能力強化1
エクストラスキル
・毒薬の才能
ユニークスキル
・毒薬生成1・限界突破1
加護 カティウスの加護 サタンの注目 ヘルメスの注目 メフィストフェレスの注目 サンダルフォンの注目 ハーデースの注目 アレキサンダーの注目
サタンの注目
友人の息子なので少し期待している。まだ加護を与えるべきではないと思っている。
ヘルメスの注目
他の人間よりも賢く将来莫大な富を持ちそうだとみている。まだ加護を与えるべきではないと思っている。
メフィストフェレスの注目
契約者の息子なので気になっている。まだ加護を与えるべきではないと思っている。
サンダルフォンの注目
契約者の息子なので気になっている。まだ加護を与えるべきではないと思っている。
ハーデースの注目
多くの死をふりまこうとした、貴方に注目している。もう少し努力を見せれば加護を与えてもらえるかもしれない。
アレキサンダーの注目
後に最強になりそうな人間を片っ端から注目している。加護が与えられる事はめったにない。ただしついた加護はとても強力
スキルは1~3まで初心者、4~7中級者、8~10上級者、11~12国のトップレベル、超越者13、神14
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「五十レベル・・・既に成人男性の平均値を越えたか・・・コレでカティウスの提示したアレは全くの嘘だという仮説が証明されたわけだ・・・」
艶のある獣の皮で作られた野性的な椅子に座り、レベル以外の項目にも目を通す。どれも簡単な数値で書かれ、スキルレベルも分かりやすいように十四段階で記されている。そしてこのステータスを作っている奴は恐らく神なのだろうなと、何となく理解する。
そうでなければ、最高ランクを神なんて馬鹿げた名前にはしないだろう。達人とかでも良いところをわざとこういう名前にするというのは・・・自己顕示欲の表れという他にないな。
「おい、アスクどうした」
クレウスが後ろから現れ、肩に手を置いた。心拍数が兎並みに加速したのを感じつつ、その手から逃れるようにして椅子から立ち上がった。
「レベルが50もあって少し驚いていたんです」
俺は振り返ってそういった。クレウスも驚いて自分の息子の成長を喜ぶかと思えば、そうでもなさそうに、むしろ当たり前だという風な納得顔でこちらを見ていた。
「そりゃレベルの高いカトレアから吸ってたんだから当たり前だろう」
「関係が・・・あるんですか?」
「レベルの高い母体が自分の子供にある程度の経験値を分け与えるってのは出来るもんなんだ。それに粉ミルクも劣化竜種のモノを使っていたからなぁ・・・経験値が溜まりに溜まってそうなったってわけだ。次にお前の弟か妹が生まれる時にはこういう事は無いようにするからよ、楽しくないかも知れないが、五十レべルから頑張ってくれや」
「でも前はそんなレベルに対して変化があったような感じはなかったんですが・・・どういうことですか?」
「レベルが体に馴染んでないとそういうこともある。レベルに関しちゃあ、考えたら負けと思え。どうせ高みに立つ時には必要なくなるもんだからよ」
レベルが体に馴染んでないとか、普通ならそんな経験するはずがないんだが、クレウスにも似たような体験があったのだろうか。・・・それに最後の言葉・・・全く意味が分からん。いずれ分かる時が来るかも知れない。それよりも今気になるのは・・・
「じゃあなんでこんな沢山の神様から注目されてるんですか」
「そりゃお前の将来を見通した神がたまたま多くいただけだろ、いいじゃねえか、加護対象でならその神を信仰している教会をつかいやすいし、普通よりも成長するスピードが速くなったり能力がレベルアップ時に上がりやすくなったりするしな」
「加護って全部そんな感じなのか・・・、適当ですよね」
「まあそう言うな。それに守護神のカティウス様なんてめったに加護をつけてくれない事で有名な神様なんだぞ、よかったじゃねえか」
アイツが守護神・・・、ハハッ・・・笑わせる。
「そういえばなんでそんなに神様に詳しいんですか」
「ん?ああ、何度かあっちの方にも行った事があるからな。お前もレベルが上がればそういう機会もあるだろうよ」
そういう世界もあるのか・・・。下手に逆鱗に触れても嫌だしな・・・今のところ関わらない事が得策だろうな。
「お父さんは人間なんですか」
「アスク・・・パパなあ、それいろんな人から言われて傷つきやすくなってるんだ・・・ステータス見たら人族だろ?だからパパは人間なんだよ」
伏字だらけのステータス画面を見せるクレウス。そこには消えそうになりつつも、人族と表記されているのが分かる。
「・・・納得いかないな」
つい心の声が漏れる。
「神様から死んだら神になりませんか?って誘われてはいるから実質候補ではあるんだけどな」
死んだ先でも既に就職先があるのかという驚きよりも、うちの親が死後の事までそこそこ考えていることに驚いた。目の前の事しか考えて生きていなさそうな人だと思っていたが・・・今の今まで忘れていたが、一応この人も先見の眼は人並み以上にあるんだったな。
「一応人族という感じですか。名誉人間みたいな」
「うるせぇ・・・コレでもバランスとるのに苦労してるんだ。後、コレは別に俺だけの苦悩というわけじゃない事は知っといた方が良いぞ」
「それはどういう・・・」
「ワイズバッシュ家の男は基本碌な人生を送る事は出来ないんだ」
「な・・・なんだと・・・」
「まあ、人である時間の内に楽しいことをして、沢山の経験をすることが大切だってことだ。要は目先の知識を追ってるんじゃ駄目だぞアスク、目先の知識は目先の事でしか役に立たないからな。どうでも良いと思う知識や教養が、後々人生ってのを面白くしていくんだぜ」
「は?・・・うん?・・・・わかりました」
そう言い残して、クレウスは部屋から出て行った。
(結局何しに来たかったんだ?)
クレウスが開けっ放しにした扉を閉めに扉の前に来ると、非常に強い異臭が廊下に漂っているのに気づかされる。未だに少し高いドアノブにジャンプして掴み開けると、その異臭は更に酷さを増して俺の鼻を蹂躙した。
元凶のドアを発見して開けると、そこには魔女っぽい服装の幼女が鍋を〝イヒヒヒヒヒヒヒ”と言いながらかき混ぜている姿が目に映った。
紫色の三つ編みの幼女は俺が部屋に入ったことを全く気にするそぶりも見せず、その体に合っていないであろう大きすぎる大釜に、これまた誰が使っていても怪しむだろう大きな薬さじで謎の物質をかき混ぜ続けている。
「おい、臭いんだが」
そういうと少し鍋から顔をあげこちらを見る、次の瞬間、とらえきれない速度で後ろにまわりこまれ、振り向いた瞬間には既に俺は押し倒されてしまっていた。
「ついに・・・見つけた・・・才能・・・ある・・・・助手」
そういうと幼女は俺の上で眠りについてしまった。
(あーこのおかしな人は間違いなくクレウスの知り合いだ)
そう思いながら幼女を近くにあったベットまで持ち運び、彼女が目覚めるのを待った。
(この人の元ならば俺の異世界での薬づくりの基盤を作る事が出来るかもしれない、早く起きないだろうか?クマのある可愛げのある顔を見ると、起こしたくても起こすことが出来ないから困りものだ・・・)