詞であそぼう!
今回は『掛詞』について学びましょう。
掛詞とは二重の意味を持つ詞です。
有名なので言うと、百人一首の第60首の小式部内侍の歌ですね。
『大江山 いく野のみちの 遠ければ まだふみも見ず 天橋立』
小式部内侍は歌の天才少女として有名で、その才能は母親譲りでした。
この才能に嫉妬したモテない男共に「アレ、本当は母ちゃんに書いてもらってんじゃね?」と揶揄された時に即興で詠んだ歌とされています。
意味は、母がいる所には大江山を越えて、生野を通らなければ行けないほど遠い。
私は手紙ももらってないし、天橋立(母が住む所にある)すら行ったことがありません。
大体はこんな感じです。
掛詞は『ふみも見ず』の部分で、『ふみ』とは『文』即ち手紙、それと『踏み』これは行くと言う二つの意味を含んでいます。
やるな! 小式部内侍ちゃん!
母親が和泉式部だから、言われるのは慣れっ子だったのかな。
ともあれ、掛詞を使うと歌に深みと奥行きが出て、違いの分かる人になれますよ。
掛詞として最強なのは、詠み人知らずの歌で、
『月月に 月見る月は 多けれど 月見る月は この月の月』
何というムーンラッシュでしょうか。
月月うるせぇよ!
思わずツッコミたくなる歌ですが、ちゃんと意味があります。
意味は、毎月毎月、月を見てるけど、月を見るなら今月の月ですね。
掛詞はもちろん『月』ですが、空の月と一月二月の月が入れ替わり立ち替わり使われています。
最強なのは、その数なんです。
月と言えば中秋の名月、十五夜ですよね?
昔の暦では毎月十五日が満月の日なんですが、その中秋の名月は旧暦の八月。
歌に使われている月の数も八つ。
つまり、八月を指しているんです。
なんと回りくどい!
これは詞あそびとしても有名な歌なんですよね。
皆様も詞あそびを楽しんでみては如何でしょうか?
ユーモアセンスが研かれますよ!
では、掛詞で一首詠んでみましょう。
一話にあったようにイメージをしましょう。
………ん~。
………おっ!
………いや、違うな。
………はっ!
はいっ! 出来ました。
『きりが立ち 前すら見えぬ みちの先 手を取り共に 進む未来へ』
掛詞が2つ隠れていますが分かりますか?
ちょっと考えてみてください。
………どうですか?
もう分かりましたでしょうか。
では、意味から紐解いていきましょう。
意味、霧が立って前も見えない道の先だけど、手を取り合って未来へ向かって行こう。
そんな感じです。
一つ目は。
もう一つの意味は、前が見えないくらい分からないことだった(未知の先)けど、進む覚悟が出来た(きりが立った)から、手を取り合って未来へ進んで行こう。
つまり、プロポーズ!
……されてぇなぁ。
おっと、何か聴こえましたか? 空耳ですよ。
こんな感じで、掛詞には歌の意味を広げる効果があります。
是非、身に付けてください。
普段の会話でも粋になりますよ!
ただし、使い所には注意が必要ですが。