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神様の御使い  作者: ファウスト
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撤退の最中

目が覚めるとあの時意識を手放した森の真っ只中。


立ったまま眠ったので体がガチガチになっている・・・そう思って体を伸ばした時に違和感を感じた。 


まったく疲れていない。 それどころか体が軽いくらいだ。



盾を拾って歩き始めるとそれが気のせいでも何でもないことが実感として把握できた。 修道士の癒しの魔法を受けても此処まで綺麗に疲労が抜けることは無かったが・・・。


日の光に照らされながら進軍してきた道を引き返し、記憶を頼りに進んでいくと30分と歩かないうちに仲間が見つかったので見張りに挨拶して工兵の仲間に合流すると皆が驚いて出迎えてくれた。


「ヤロー、生きてやがったか!」


そう言って皆が俺の肩を叩いて喜ぶ。 気の置けない仲間達だ。 

笑顔で皆迎えてくれたが一様に疲労の色が見て取れ、気力も萎えかかっていたが俺が帰ってきたというグッドニュースに幾分か気を取り直したようだ。

そして俺がいつの間にか体力を回復していることに気づき皆はびっくりして口々に理由を尋ねてきた。


「お前、何度も先陣切ってたよな?」


「ああ、俺にも不思議でならない。」


女神に会ったといえば頭がおかしくなったと思われるかもしれないが・・・。

俺は別にかまわないと思い、仲間に真実を告げた。

不思議な夢を見た後不思議と体が軽かったこと、夢の中でドラゴンや骸骨と戦ったことなどなど。


「へー、不思議なこともあるもんだな。」


仲間達は俺の言葉を意外にも信じたようだった。 それ以外にこの不可思議な現象を表現する術がないのも確かだったが。

しばらくの雑談の後に隊の皆が集まってきた。


「っと、そろそろ真面目な話させてもらうぜ、ガル。」


そう話したのは隊の最年長、 アッシュフォード。 立派な髭を蓄えた偉丈夫でハンマーの扱いに長ける歴戦の勇士である。


「実はな、先日の撤退中に隊長が死んだ。」


アッシュが指差す道の端に墓が出来ていた、おそらく彼の物だろう。

隊長はガル達と同じ雇われだったがそれなりに優秀だったので手痛い損失だ。


「逃げてる最中にヘルムの隙間に矢が飛び込んだらしい。」


ついてないとしか言いようがねえ、とアッシュフォードが愚痴った。

実際大型のボーガンでもこの甲化工兵の鎧を抜くのは難しい。


「手練がいたんじゃないのか?」


「それなら俺たちはとっくに死んでる、レンジャーと騎兵が付近を調べてくれたが仕留めた弓兵にヘルムの覗き穴を射貫けるほどのベテランは居なかった。」


そう考えるとその隊長は100回に1回あるかどうかという不運さで命を落としたのだろう。 カワイソウなことだ。

そうなると次に隊を率いるのは?という話になってくる。 だがほとんどは雇われの傭兵達、甲化工兵ということでどの戦場でも引っ張りだこだがそれ故に決まったメンバーになることも少ない。


「そうなると命令して問題の出ないやつが必要なんだよな。」


隊長も雇われだった上に副長は腕と足を痛めたらしく馬車で呻いている。

そこに死んだと思っていたガルが帰ってきたのである。

年長者はアッシュだが先陣を切った回数と今まで上げた軍功はガルが圧倒的であった。 アッシュとしては実力主義の傭兵を束ねるのに結果を出しているガルを推したいらしい。


「年齢的にも若造と呼ばれるほど若くはないしワシほど歳も取ってないし大丈夫だとおもうがなあ・・・。」


ガルもキャリアとしてはベテランの領域に入っているし頭も切れる、推したい気持ちも良くわかったがガルは気になっていた。


「そうなると誰が殿をつとめるんだ?」


殿は雑魚には務まらない、ましてや疲労困憊の隊の中で殿を務めることができるメンバーは少なかった。 いや、ガル以外に居ないといっていい。




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