表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/23

ハルコの夢

『恋愛栽培』の敵役・浜凛華や『ファウストの聖杯』『Fortune』のロクサーヌ・ゴールド・ダイアモンドもそうですが、この「ハルコ」もまた「自らが女だからこそかえってなおさらある女性嫌悪」を表しています。私は無理して同性に対して「博愛主義」を演じているフェミニストの女性たちに対しては色々と疑問があります。

 とは言え、女の数だけ「女心」はあり、フェミニストの数だけ「フェミニズム」はあります。私自身もフェミニストを自認していますが、自分自身の女としての暗黒面から目を背けるべきではないと思います。

 あたしはずーっと口をきかなかった。魔法使いだか、仙人だか分からないけど、ススキノのあるバーで出会った奇妙なじいさんに命じられたからだ。


 どんな目に遭っても、口をきいてはいけない。お安いご用。何しろあたしは子供の頃から「ぼっち」で、おしゃべり相手なんかいなかったのだし。

 スキー学習でクラスメイトたちに雪に埋められた記憶が再現されても、あたしは何も言いも叫びもしなかった。

 体育館の倉庫で何度も男子どもの慰み者にされるのが再現されても、あたしは悲鳴も喘ぎ声もあげなかった。今のあたしの仕事だって、あの頃と似たようなものだし。

 ましてや、歴代彼氏たちのDVをトコトン受け続けても、あたしは声一つあげなかった。すべてはただ一つの望みのために。

 この世の全ての女たちに対して優位に立つ事。どれだけ男たちにヒドい目に遭わされても、あくまでも「女の敵は女」だ。あたしは、この世の全ての女たちに勝ちたい。義務教育時代に男子どもにいじめられた時だって、女子どもは陰で(時には大っぴらに)あたしをバカにしていたのだし、あたしも自分以外の全ての女どもを軽蔑していた。


 某女性有名人がインタビューで語っていたように、あたしは世界中の全ての女たちに嫉妬される立場を得たいのだ。

 類い希な美貌と、富と権力。あたしはこの世の「女王」になりたい。どうせ女だったら、大なり小なりあたしと同じ欲望があるハズ。そして、あたしはどんな女たちよりも正直な「女」だ。

 そのうち、現時点で最後の彼氏があたしの首を絞めた。そう、あたしが今の仕事に就いたのは、コイツの女遊びと借金のせい。この三流ホストのせいで、あたしは死んだ。


 気がつけば、そこは中島公園の近くのアパートの一室ではなかった。まさしく、昔の地獄絵そのものの世界だ。もちろん、あたしは黙っていた。

 そこであたしは見たんだ。あたしが不幸になった元凶の女。都合のいい時だけ母親面しやがって。案の定、コイツはあたしに助けを求めた。

 そう、あたしが今まで黙っていたのは、コイツに対して怒りをぶつけるため。あたしはボキャブラリーの限り、コイツをさんざん罵った。


 それ以来、あたしはススキノのこの場所で地縛霊として居着いている。もちろん、あたし以外の女どもを不幸に陥れるために。そう、あたしは今でも世界で一番正直な「女」よ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ