無職と出会い
「寒い…。」
まだ冬の冷たい風が残っている1月下旬。
俺は某大手書店の入り口で、缶コーヒー片手に壁にもたれかかっていた。
全く胸を張って言えることでは無いが、2年ほど勤めた会社を何の算段もなく辞めてしまい、親に仕事に行くと言いつつこんな場所で時間を潰していた。
「はぁ…。」と溜息一つ、携帯の時計を見ると時刻は午後6時。仕事についていた時は夜勤だったので、まだまだまだまだ帰るには早すぎる時刻だった。
仕方なくマックで時間を潰すことにして、その場を後にしようとしたのだが、、
「クッソ。取れない…。私の晩飯代返せぇぇ…。」ゴソゴソ。
自販機の下に手を伸ばす変な女を発見。
あんまり関わりたく無いので無視して横をすり抜けることにした。
が、何かを踏んだ。と、同時に「んぎゃっ!!」と言う小さな悲鳴。
とっさに足を上げると水に足をつけた猫のように手をブンブンふる変な女。
「うおっ!すみません。気づかず、踏んじゃいました。」
「踏んじゃいました(((o(*゜▽゜*)o)))じゃねぇ!!!痛ってぇ…。」
流石に申し訳なさであたふたしていると、胸ぐらを掴み上げられ眼を飛ばしてきた。のだが、俺の方が身長高いから全く怖くない。
「てめぇ!どこ見て歩いてんだ!手ぇ折れたらどうしてくれる!!!」
「すいません。それは本当ごめんなさい。でも、胸ぐら掴んでるの踏んだ方の手なので折れてはなさそうですね。」
瞬間強烈なボディブローが俺の腹に食い込んだ。その場でうずくまる俺。
「これはお前が悪いんだからな!!やられたからやり返しただけだ!」
「本当…ごめんなさい…。」
吐き気と呼吸困難で苦しんでいると流石に心配になったのか、はたまた周りの視線が気になるからか「おい。苦しみ過ぎだろ。死ぬなよ。捕まりたく無いぞ。」と背中をバシバシ叩いてくる。
ようやく鈍痛から立ち直り、女の方を見ると腕を組み何かを考えているようだった。
すると、「いったぁーい。やっぱ折れてるかもしれなーい。暴れたせいで晩飯代自販の下に落としちゃったし、今日は晩飯抜きかーあーあー。暴漢に踏まれた上に晩飯抜きとか、ついてないなぁーー!!!!(棒読み)」
チラッとこっち見んじゃねぇ!そして、最初から晩飯代探してただろうが!!!
と思いつつも、言葉にすると殴られそうなので俺の中の最善な選択肢は、、
「マッ…マック、行きません…?」
ただただ殴られないよう、必死に媚を売ることだけだった。