第一話、守り手の少年
文章力に自信がなく、色々と突っ込みどころはあるかもですが、温かく見守っていただけると幸いです
美しい木彫り細工を作る職人が多数住んでいることで有名な村、カルサ。
この村の貴重な交易品である木彫り細工を賊や猛獣などから守る守り手、グラントの息子であるパリスには、不思議な力がありました。
その力とは、動物達と会話することが出来る能力です。
元々体があまり丈夫でなく、森で鹿や猿、栗鼠といった動物達と戯れていることの方が多かったパリスは、自分が動物達の言葉を理解出来るだけでなく、会話することも出来る事に大喜びしました。
来る日も来る日も、父の後を継いで村の守り手になるための稽古よりも、動物の友達を作る事ばかりに一生懸命になっていきました。
「やあ、こんにちは。今日はこんなものを持ってきたよ」
今日もまた守り手の稽古をサボったパリスは、袋に詰めていた焼きたてのパンを取り出しながら声をかけた。
すると、パリスの声に誘われて猿君と鹿君が集まってきました。
「いい匂いだね。これはなんだい?」
「これはね、パンっていう人間の食べ物だよ」
鼻をくんくんとさせながら聞いてきた猿君に、パリスは笑顔で応えます。
「へえ、少し食べてみてもいいかい?」
「もちろん、そのために持ってきたんだよ」
ちぎったパンを目の前に差し出すと、二匹は興味深そうにパンを口にしました。しばらくモグモグとしていた二匹の内、鹿が最初に口を開きました。
「果物も美味しいけど、このパンっていう食べ物も美味しいね。果物じゃないみたいだけど、これは木の実なのかい?」
「これはね、小麦粉と塩に酵母っていうのを混ぜて、窯で焼いて作ったものなんだよ」
「そうなんだ、パリスは物知りだなぁ」
「そうかな?えへへ…」 美味しそうにパンを食べながら褒めてくる二匹の言葉に、自然とパリスも笑顔になって、一人と二匹は袋に入っていたパンを全て食べ終えました。
「ありがとう、とっても美味しかったよ」
「そう?ならまた持ってくるよ」
ぺこりと頭を下げてきた猿君に、パリスは笑顔で応えました。
「今度は、僕の好きな果物を持ってくるから、パリスも楽しみにしててね」
鹿君はそう言って一声鳴くと森の奥へ帰っていきました。
「鹿君はどんな果物持ってきてくれるのか、楽しみだなぁ」
地面に横になりながら、自分の知っている果物の名前を思い浮かべ、あれだろうかこれだろうかと考えていると、猿君に話しかけられました。
「ねぇ、パリス。毎日君と遊べるのは楽しいけど、勉強はしなくていいの?」 「いいんだ。僕は父さんみたいに強くないし、体も丈夫じゃない。それに頭もよくない。戦うなんて怖くて出来ないよ」
猿君の言葉に、パリスは悲しげに頭を振りました。 パリスの父親であるグラントは、村一番の守り手として有名でした。王様の使いから「王様を守る兵士として働かないか」と誘われたこともあるほどです。
パリスは、そんな強く逞しい父の事が自慢でした。自分の父親はこんなに凄い人なのだと、村の人々から感謝の言葉をかけられる度に、パリスの胸は誇らしい気持ちで一杯になっていました。
でも…と、パリスは思います。いつもいつも父親の大きな背中を見てきたパリスには、とても父さんのようにはなれないと感じていました。
「どんなに頑張ったって、父さんのようにはなれない。それよりも、森で皆と遊んでる方がずっと楽しい」「…分かった、なら明日も楽しみにしてるよ。明日は僕も、お気に入りのバナナを持ってきてあげる」
「ありがとう猿君、また明日」
ふと空を見上げると、既に夕方になっていた事に気付いたパリスは、猿君に見送られながら村へと帰っていきました。
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