レイジーの騎士生活 団長と二人っきりです。牢屋の中ですが・・・ 続
ちょっとやり過ぎですかね?
今思えば、貴族の総指揮官が私にした遊撃の指示はどこかおかしかった。その指示を愚直にこなした私も馬鹿だった。そして貴族の指揮官が敵に内通している何よりの証拠が敵がレイジーに対し『お気に入り』と呼んだことだろうか。というか敵がその貴族の名前を言っていた。
圧倒的な戦力差のある戦場で自分の側に置いていた方が安全だろうとレイジーを自分の組に組み込んだのが何より悔やまれる。敵は私を取り込みたいと言っていた。レイジーはその人質だとも言っていた。
女として彼を殺させたくはない。だが騎士団長として国を裏切れない。
ギフト対策のされた太い鎖につながれて私はそんなことを考えていた。
「団長脱出しましょう」
こんな時でも冷静でいられるなんて新兵とは思えない。思えば、レイジーには驚かされてばかりいるな。と自然に口元に笑みが浮かぶ
「ふふ、ここは石牢なのだが」
「大丈夫ですよこの程度」
言うが早いかレイジーが右手の鎖を根本から壊した。私のより細い鎖だけど、無理矢理壊せるほどの筋力がレイジーにあるとは思えない。
次いで左手、両足。剣だけでなく鎖の扱いもうまい。いつもの模擬戦は本気を出していないのだろうか。
「さぁ出ますよ」
月明かりだけの石牢の中で私に手を差し出すレイジーはまるで囚われの姫を助けに来た王子のようであった。
何も言わず私の鎖も破壊される。一体どれだけの技量があれば出来る芸当なのだろうか。その後、石牢の壁のある一点に向かって鎖を打ち付ける。まさか壁まで壊せるとは思わなかったなぁ。
そのままボーッと見つめていた。
「行きますよ」
突然、声が降ってきて私の体が持ち上げられた。驚きの余り私にあるまじき声が出る。
「ひきゃぁ」
「どうしました?」
「い、いや、なんでもない。続けてくれ」
少々恥ずかしいが今は誰も見ていないはず、なら堪能しようじゃないか。薄着を隔ててレイジーの体温を感じる。
森に入ってそのまま逃げるのかと思ったら途中の洞窟に入り、寝かされた。
「ちょっと待っていてくださいね」
洞窟の入り口を壊す瞬間のレイジーの顔は今までに見たことのない憤怒と殺意にまみれた顔だった。
「すみません、お待たせしました」
2時間ぐらいして帰ってきたレイジーの顔は憑き物が落ちたような爽やかさだった。血に濡れていたが
「いや大丈夫だ。ところで何をしてきたんだ?」
「馬を調達してきました。包帯も持ってきたので応急処置だけします」
絶対何か隠しているな。とは思ったけど流すことにした。
ローブをかぶせられて馬に乗せられた。レイジーが私の後ろに乗って抱きつくような格好になったときは心臓が飛び出すかと思った。
顔は赤くなっていないか心配だ。ローブをもう一枚もらったので深くかぶる。それでもローブよりレイジーの体温の方が暖かかった。
遠回りしながら王国への帰路について四日が経った。体感ではかなりのスピードで走っている。振動が一切来ないのが驚きだ。レイジーが何かしているのだろう。
私はここ何日かの悩みがある。それは包帯なんかを取り付けるときだ。
私の怪我は背中やお腹や手足だけでなく胸のあたりにもいくつかある。しかも私の両腕は骨折で使い物にならない。
何が言いたいかというと、治療の度にレイジーに私の裸を見られるのだ。
いや上だけだよ。悩みなのはそこじゃない。別に見られるのはいい。いや、良くないけど。まぁいい。
問題なのは裸を見ても眉一つ動かさず淡々と治療をするのだ。私には魅力がないのだろうか。
裸を見た責任は取ってもらわなくっちゃ