終わりの話
その名の通り終わります。
太陽がちょうど頭の上に上る頃。
「はじめまして。」
突然、その少年は俺の所に訪ねてきた。
「僕は妖怪や幽霊などの怪談話を集めているのですが、そういうのは本人に直接聞いた方が手っ取り早くて良いですよね。」
と、笑いながら言ってきた。
ただの人間ではない。何かがズレている。
「と、言うわけでアナタの怪談。聴かせてください。」
やはり、おかしい。人間のはずなのに妖怪特有の怪しさがある。
「えーと?聞こえてます?」
殺すべきか……。逃げるべきか……。
「あれ?喋れないのかな……?」
「お前は……人間か?」
たまらず聴いてしまった。例え、人間じゃなくても殺す準備をしておく。
「なんだ。喋れないのかと思いましたよ。人間かって……?見た目通り人間ですよ?」
殺す。
答えを聞いた瞬間、幻影を出して周りを囲む。
「え!ちょ!敵意剥き出し!?なんで?!」
相手が戸惑っている間に仕留める!
俺はその少年に飛びかかる。
その瞬間、ビクついてる少年の右腕が黒く燃え上がり、俺は幻影ごと黒い炎に燃やし尽くされるところだった。
「よう、化け狐。何十年ぶりかねぇ。」
と、黒い炎の中からあの時の黒妖犬が出てきた。
「何でいきなりバトルが始まってんだよ!」
人間は五月蝿く喚いている。燃え上がった右腕は無くなっていた。
なるほど、この黒妖犬が取り憑いていたから特有の怪しさがあったのか。
疑問は解決、これで心置きなく人間を殺せる。
「邪魔だ、黒妖犬。」
「殺させないぞ?」
実は妖怪と殺し合ったことがない。
勝てるか……?
「だから何でバトルなんだよ……。話し合えよ……。」
黒妖犬と俺の間に人間が割って入ってきた。
馬鹿が。俺は迷わず飛びかかった。
「だから、ハナシを、聞けぇええ!」
その瞬間、吹き飛ぶ。一瞬何をされたのか解らなかった。
そいつはもう片方の腕で、俺を殴り飛ばしたらしい。
本当に人間か……?
普通、妖怪見たら逃げ出すだろう?
「霊体じゃないなら怖くない!」
その理屈はおかしい。
「頼むから穏便に!話をしてくれるだけで良いから!」
いつの間にか左腕が戻っていた。
殺そうと思っていたが、気が変わった。
「では、話してやる。貴様等人間の愚かさと俺がどれほど人間が憎いかを!」
話は夜まで続き一通りこの百年を話し終え、とても晴れやかな気分になった。
久々の気分だ。
「いつの時代も人間も妖怪も残酷だねぇ。あー、腕疲れた。黒妖、変われ。」
「その事については自分は手も足もでないのだ……。」
「まあ……。頭しかないしな……。」
そうだ。あの悩みも話してみよう。コイツならいいだろう。
「一つ、聞きたい。」
「何でしょうか。」
少年は仰向けになりながら聴いてきた。
「この憎しみはいつ晴れると思う?」
少年は笑いながら、
「お前が人間を許した時。」
「ハッ!、許せる訳がないだろう。」
「まあ、そうだろうけど……。」
と、言い少年は少し考える素振りをしてから。
こう言った。
「たまには旅行なんてどうだい?山にばっかりこもってると陰気臭くて気分なんか晴れないだろうし、ついでにいろんな人間を見た方がちょっとはイメージ変わるかもよ?」
そうかもしれない。
多分、そうなんだろう。
「人間。名前は?」
「天咲洋輝。これから僕が主人公だ。」
こうして、俺にとって最悪な百年は終わりを告げる。
なんか……無理やり感がありますが、許してください。
狐の話はこれで終わりです。