第七章 第三話 滅びの真相
「しかし・・・父上・・・それはつまり・・・」
「そのとおり。しかるべき戦いには、『連合軍』の総司令官はそなただ。」
「『反逆者』の『源』である、この国に、各国の非難はあるものと思いますが・・・」
「不思議とない。ここ数十年のうちに、『才能あれど無気力、実力あれど伸びず。』という若者が急増しているという。原因は、『幼少期における心的外傷を受け続けることによる、一種の障害』だそうだ。ゆえに、そういった者たちは、『反逆者』に加わる者もいるという。『レイスト一族』だけの問題に留まらん。加わるぬ者たちは、非難や一般人からの報復を怖れ、ひきこもっているという。ひどいものは、職場にすら顔を出さず、餓死する者さえいる。この状況は、あの時代の再来だと、エリティア様と並ぶ老師であるリシェンナさまが言っておられた。」
「老師だなんて・・・私なんぞ、ただの化石ですわ。」
そこへ、エルフの老魔導師が現れた。
「リシェンナ!」
エリティアが目を丸くする。
「弟子を送ったときと、彼女が出産したとき以来じゃない。人が悪いわ。直接会ってないのは八百年ほどじゃないの。」
「いや・・・忙しくて・・・」
「黙れ!マッドサイエンティスト!」
「あんたが言うか!」
「旧交を温めるのは、構わんが・・・本題に入っていただけるか?」
エストが、促した。
「え・・・ええ。」
リシェンナは、分厚い古文書を取り出した。
「ここに書かれている内容は、ざっくりと言えば歴史書です。かつて、『エルフの帝国』は、世界の八割を支配したそうです。」
「でも、なぜ滅んでしまったのですか?」
エミアが尋ねた。
「大魔王ダイアレートのせいだとは判りますが・・・」
ディナが補足する。
しかし、リシェンナは首を横に振る。
「国王が言われたような者たちの中に、随一といわれる錬金術師や科学者が多くいたそうです。彼らは、世界を跡形もなく『破壊』することで、『救い』をもたらそうと考えました。そこで、『負』の気を吸収することで成長する『超魔王』を完成させました。ところがそれは、『闇の大魔王ダイアレート』を残し何者かによって封印されました。業を煮やした『開発者』たちは、『この世に望まれぬ魂』、『未熟な親に殺された魂』を大量に召喚し、ダイアレートに組み込みました。やがて、ダイアレートは世界を破壊し始め・・・それによって生じた『負』の気を喰らって肥え太っていきました。そう・・・双子の剣士が封印するまで・・・」
「あ・・・あの・・・リシェンナ様・・・『開発者』はどうなったんですか・・・?」
居合わせた、フェアルが尋ねた。
「自分たちを一つの生命体に変えた後、自我を消し、ダイアレートの核の一部と化したわ。」
「げっ!」
「死なばもろともか・・・」
「ちがう!」
エミアが叫んだ。
「私たちが彼らを理解できないように、彼らも私たちを理解できないんです!どうせ訴えても伝わらない・・・負け犬の遠吠えと罵られるだけ・・・!ならば、その矛盾ごと、全部なくしてしまえばいいって!」
「そう。だから、今の魔王たちは、彼らに協力している。ことによれば、ウォルストがダイアレートを取り込むことだってあり得る・・・」




