第七章 第二話 ティア王太子就任
「うーん・・・」
エミアは、自室で目覚めた。
「エミア・・・よかった。術を最大出力でぶっ放して、倒れたから、どうしようかと・・・!」
「ところで、あれからどうなったの?」
開口一番、エミアは、側にいたヘイゼルに尋ねた。
「陛下がお呼びだ。姫や僕も・・・それどころか、『ファゼル卿』もらしい。」
ファゼルとは、あのティアをかばった黄金騎士である。
フルネームは、ウィル・ファゼルである。
「へこむなァ・・・あれって、不完全なのよ・・・」
「なんで・・・?」
「前の実験の時、剣が『消滅』したのよ。」
「げっ!」
「つまり、『レイストの剣』を使うのを前提とした術って訳・・・」
やがて、謁見の間にエスト王が現れた。
「まずは、レイスト・エミア・ティアムルに詫びねばならぬ。」
「それは・・・」
「王家の不文律で、『王統の次に廃してはならぬものはティアムル統』であること』を危うく破りかけたことだ。」
「どういうことです?」
エミアが尋ねる。
「レイスト・ティアムルとエスト二世との間で、取り交わされた約定だ。さて・・・大魔王ダイアレート・・・果ては、それ以上の存在が現れたらどうなる?確かに、レイスト一族は強力で、最近の騎士の質も向上している。しかし、人類を害するものに対抗するには、それしかないのだ。現に、そなたも『学んだ』のだろう?『反逆者共』の真実を。」
「はい・・・」
「それが実情・・・二代目レイストが、一族の祖たちに『武器』を分配した理由でもある。豊かになれば、人は努力を努力とみなさなくなる。そこでだ・・・」
エストは、ティアを見た。
「ティアよ。そなたは残れ。」
「えっ!?」
「そなたに、『八人目』の神聖騎士の称号を与える!」
王位継承者が、その称号を得るということは、王太子・トラルティア大将軍に就任することを意味していた。