第六章 第一話 聖魔剣士
ルーシャート王国に、黒魔法に精通する聖剣士の家系がある。聖剣士とは、神官でありながら、剣士となった者をいう。
では、黒魔法を究めて、聖剣士になった者を何と呼ぶか・・・
それが、聖魔剣士である。
かつて、二代目レイストことレイスト・ティアムルには魔王の器となるも、解放されて、共に魔王と戦った弟が存在した。
彼は、母・エリティアの親友リシェンナの娘・ユム・イスカンダリアと結婚し、ルーシャートに任官し、王宮魔導師となり、レイスト一族三大宗家・イスカンダリア家の祖となった。
彼の名は、ヴェイスト。
どういう訳か、彼の血筋は、闇に耐性を持っているらしく、個体差により習得できる術に差異はあるものの、総じて黒魔法を使用できるようだ。
さて・・・
現・次期当主の名は、ヴェイスト・ディナ・イスカンダリア。
光の魔法に精通したエミアとは、意外なほど仲がいい。
歴代のティアムル家当主とイスカンダリア家当主は、千年の親交を深めており、ヴァルシュタイン家ともつきあいがある。
「まったく・・・レイスト一族から欠陥品がでるとはね・・・」
ディナは、ブラストを見た。
「くっ・・・!」
「いずれ、分家は、歴代の当主に問題はなくとも、『配偶者』に問題が出るかもって、二代目レイスト様は予言してたよ。そうして、宗家の配偶者に『親としての禁忌の書』なるものを代々受け継がせていたわ・・・エミアが、あんたらのようにならなかったのはそのため。」
「し・・・しかし、分家にもそれがあれば・・・」
「あんたが教えてくれたウォルストの母上は、そんな『忠告』なんて聞く人だったのかしら?」
当代のヴェイストは、辛辣な女だった。