追憶 傷を舐めあう者たち
ウォルストは、決して表には出なかった。
巧みに独自の情報網を作り上げ、レイスト一族に産まれながらも、自分と同じ境遇の『はぐれ者』を集め、資金を稼ぎ、誰も見向きもせず誰もが知っている場所に居城を築いた。
そこは、旧デラル城・・・
ウォルストは、組織の中ではなぜか求心力があった。
そして、側近となったのは、第二位の実力を誇る魔導師ファルスト・ティアムルだった。
「ウォルスト。こうして俺たちは集まったが、戦力が足らないぜ。どうするよ?」
組織の武闘派・ブラストが尋ねた。
「そうだね・・・ダイアレートを復活させる前に、『お嬢様』に気づかれたら台無しだ。」
補足したのは、神官グラスト。
「忘れたか?ダイアレートについて。」
意見を述べていないサイストは、はっとなる。
グラストも、「ああ、なるほど。」という表情を浮かべる。
ファルストに至っては、無表情である。
「えっ!・・・」
ブラストだけが気づいていない。
ごすっ!
グラストが、ブラストの頭を殴った。
「バカか?ダイアレートには、八人の手下の魔王がいただろうが!そのうち半分が前文明の騎士に倒され、残りごと封印され、『父』二代目レイストに『再封印』されたんじゃなかったのかよ!」
ブラストは、「ああ、そうだった。」と表情だけで返す。
「そう。まずは、手始めに魔王たちを復活させる。」
こうして・・・彼らの反逆は始まった。




