追憶 世界を呪うまでのプロセス①
それは、年齢無差別級の騎士たちによる、勝ち抜き試合。
各国から集まった騎士たちが、しのぎを削っていた。
優勝候補は、三代目勇者レイストと目されるティアムル宗家の次期当主にして令嬢レイスト・エミア・ティアムルと、その許婚ヘイゼル・ヴァルシュタイン。
だが、三人目の優勝候補がいたことが、後の世界の運命を変えた。
「ヘイゼル・・・ウォルストって男・・・そんなに強いの?」
観客席にいた黒髪のハーフエルフが、ヘイゼルに尋ねた。
「ああ。三大宗家の一つの分家の出だ。侮れない。」
「ふむ・・・エミアが、どれだけ加減できるか・・・」
「ディナ・・・それは言い過ぎじゃないのか?」
彼女は、ヴェイスト・ディナ・イスカンダリア。三大宗家の第三家イスカンダリア家の次期当主三代目ヴェイストに当たる。かつて、黒魔法は、ヴェイストとその末裔にしか使えなかった。なお、黒魔法とヴェイストの剣術を極めた者は、畏敬の念を込めて『聖魔剣士』と呼ばれた。
また、奇しくも、ヴェイスト・ディナ・イスカンダリアは、エミア同様女性であった。
決まり手は、覇王二連十字。トラルティア騎士団流の奥義の一つで、十字剣の上位技である。
二代目レイストでさえ、極めたのはダイアレートを封印した後だったという大技である。
放ったのは、エミア。