第一章 第四話 もう一人の異端者
「勇者レイストは、オリハルコンなる金属でつくられた武具を持っていました。
レイストの剣、レイストの鎧、レイストの盾・・・
いずれも、並大抵の攻撃に揺らぐことのない武具でした。」
女王はそれだけいうと、レイストの顔をじろじろとなめるように見た。
「エリティアは、問題児でした。頭に『超』がつくくらい・・・あなたたち人間の言い回しだと『死ぬほど』という表現も、言い過ぎではありませんでした。
まったく・・・エリティアはいざ知らず・・・リシェンナまで里を出るとは・・・
そんなに、人間の世界がいいのでしょうか?」
「さ・・・さあ・・・僕は、ティアムル家を継ぐ身ですが、両親の考えまでは継いではおりませんので・・・」
ごまかすレイストであるが・・・
「リシェンナさん・・・確か、母上が親友と言っていた人ですが・・・」
「あの子は、エリティアほどのしたたかさはありませんでした。幸いエリティアは、あなたの祖国に嫁入りしたため、幸福な人生を歩んでいるほうではあるようですが・・・
もしリシェンナが他の国に嫁いでいたら、不幸になりかねません。
それ自体は、本人の責任でも相手の責任でもないのです。」
なんだろう・・・
レイストは、女王の言葉に、引っかかりのようなものを感じた。
「レイスト。エリティアは国でどういうことをしています?」
「伝説の魔道書『伝承記録譚』の解析をしつつ、錬金術にハマッています。」
なんと、エリティアは、主婦業をこなす傍ら、魔法研究と錬金術研究に没頭するマッドサイエンティストに変貌してしまった。
「あの、勉強嫌いが・・・とにかく・・・彼女が無事なら、彼女なり子供なりに出会うこともあるでしょう。」
女王に見送られ、レイストたちは、トラルティアとウズドガルド国境地帯の町エルフィアに向かった。