~勇者の手記より~①
「いい知らせと悪い知らせがあるわ。」
「なんでしょう?母上。」
騎士服のまま、レジェンド・ファイルを読むレイストにエリティアは言った。
「セリナちゃんが、おめでたよ。」
「僕にもとうとう跡取りができましたか。」
連日、人狼の底なしの性欲に泣かされた甲斐はある。
「女の子のようね。」
トラルティアでは、家督は長子が男女関わりなく継ぐ。問題は無い。
「悪いほうは?」
「近いうちに、大魔王ダイアレートが復活するわ・・・」
大魔王ダイアレート・・・
エルフの古代文明を滅ぼした大魔王である。
「倒さねば・・・!」
しかし、問題があった・・・
「あなた一人では無理。デラルでさえ、ヴェイストや仲間たちと共に戦ってようやく勝てた相手・・・しかも今回は、セリナちゃんは頭数にはいれられない。」
それから、レイストは不眠不休で研究を重ねた。
とんでもないことが判った・・・
「なんだと!?レイストの剣と同じ物が五つとお前と同じ戦士が、複数必要だと!?」
目をむいて絶叫したのは、ヴェイストだった。
「そうだ。恐らく、今回は『勝つ』ことはできても『倒す』ことはできない。」
「なぜだ?」
レイザールが尋ねた。
「『武器』が用意できても、頭数が足りない。」




