第一章 第三話 運命
その凄惨な、戦場にうなだれる銀の鎧武者がいた。
「セリナ・・・エリナ・・・ルザル・・・レイザール・・・ユム・・・」
その顔は・・・!
「レイスト!」
「そうです。生き写しでしょう?」
思わず叫んだセリナに、女王があいづちをうつ。
「あの顔は・・・セリナ・・・!」
武者が、一人の女性を抱きかかえている。
その姿は・・・
銀色の狼の耳と、尻尾をもった人狼だった・・・
「ヴェイスト・・・どうしてもお前を斬らねばならないのか・・・!」
武者の前には、漆黒の鎧を纏った騎士が立っていた。
その騎士の髪の色は黒・・・だが、レイストそっくりな顔をしている。
「今だ・・・!今しかない・・・!俺が・・・中のデラルを全力で抑えているうちに・・・
俺ごとデラルを斬れ!」
武者は、ゆっくりと立ち上がる。
「許せヴェイスト!」
一閃・・・
鈍い金属音がひびいた。
武者の剣が折れ、刃が大地に突き刺さる。
騎士の鎧が斬られ、夥しい血が噴き出す・・・
次の瞬間、レイストたちは、元の風景の中にいた。
「あの、銀の鎧の武者こそ・・・」
「そう・・・勇者レイストです。まずは霧の塔に棲む霧竜エリシャを訪ね、霧のオーブを授けてもらいなさい。そして、これを・・・」
女王は、一振りの剣をレイストに手渡した。
「レイストの剣にはおよびません。が、役には立つでしょう。」
「あの~」
セリナが、大ボケ丸出しの声で訪ねた。
「レイストの剣ってここには、ないんですか・・・?
もらえるものとばっかり・・・」
ぼかっ!
レイストの鉄拳が、セリナの頭に突き刺さる。
「あの女王様の過去の幻を見ただろうが!少なくとも折れてしまってるんだよ!」
「いった~・・・殴ることないじゃん・・・」