第二章 第一話 決意
次の日、エミアは国王エスト・トラルティア18世に呼ばれた。
開口一番、国王の台詞は、
「行ってはならん!」
である。
「なぜでありますか!?レイストの剣が奪われた以上、同じレイスト一族でなければ対向できません!」
「そなたに何かあったらどうする?宗家の血は絶えてしまうぞ。」
そんなことを気にしていいのか・・・
「だが、手をこまねいていることもできぬゆえ、そなたと同格の黄金騎士候補のヘイゼル・ヴァルシュタインを行かせた。ヴァルシュタイン家は、その兄・神聖騎士グランドがいるので万が一ということも起きん。」
エミアの全身から血の気が引いた。
白銀騎士・ヘイゼル・ヴァルシュタイン・・・
彼は、エミアの許婚である。
ヴァルシュタイン家は、五百年前に興った名家である。
初代は、人狼族を妻に持った騎士で、周囲にことごとく噛み付く妻を容易く御した事から『狼を御する者』という意味の『ヴァルシュタイン』という家名を当時の王から授かったという。
また、同じ人狼族の血をひく者同士か、ティアムル宗家と家族ぐるみの交流が代々続き、何度か両家で婚姻があった。
エミアとヘイゼルの縁組も、その流れで決まったものだった。
しかし、それ以上に兄妹のように仲が良かった。
『冗談じゃない・・・ヘイゼル・・・待ってて!私が行く!』
恋人を追って飛び出しちゃいます!




