第八章 第一話 決戦前夜
ついに、セリナがフラグ立てを行いました。
じつは、彼女が魔法を習うのは、レイストの側にいたかっただけなんです。
恋愛に拒否反応を示しているレイストの気を引くには、『草食系女子』のふりをすればいいことに気付いていたんです。
「いいかしら・・・」
レイストに割り当てられたテントに、セリナが入ってきた。
「何?」
「私に・・・魔法を教えて欲しいの・・・」
「魔法?そんなものがなくても、君は戦えるじゃないか。」
「格闘術や気功術だけじゃ足りない・・・そう思ったの。このままじゃ、私はあなたの足手纏いになる!そんなのはイヤ!」
とりあえず、レイストはランプの中に明かり《メリス》の術をかけて灯を灯す。
これまでに、セリナは明るく振舞ってきた。
だが、魔法を使えない自分にコンプレックスを抱えてきたのだ。
「よし!じゃあ、基本的なことから教えよう。」
レイストは、初めてエリティアに魔法を教えてもらおうと決意したときのことを思い出した。
『思えば、子供の頃の僕も同じ気持ちだったのかもな・・・』
「まず、気功術はどう使う?」
「えっ?身体の中に、血のように流れる生命力をエネルギーに変えて・・・」
「それを、精神力に置き換え、コントロールしてみるんだ。」
セリナは、目を閉じ、集中してみる。
何か、湧き上がる力を感じる。
「これが魔力。魔法力とも呼ばれる力だ。」
「私にもあったんだ・・・」
「後は、炎の精霊・吹雪の精霊・風の精霊・地の精霊・光の精霊に、呼応し適当な呪文を呼びかけ、力を貸してもらう。人間の言語でいい。獣人語でも竜語でも応えてくれる。いっそ、同じ呪文を知っている全ての言語で並べてもいい。」
セリナは、試しに唱えてみる。
「光の精霊よ・・・明かりをつけて!明かり《メリス》!」
セリナの手の中に灯が灯った。
「成功した・・・。」
「このままでは、この灯は点いたままだ。精霊に頼んで解除してみろ。」
「お願い・・・!」
灯は消える。
「これは、解除。僕のオリジナルだ。僕が、研究してきたのは、応用法とより上位の精霊や神々について。基本はこんなモンだ。後は実践していけばいい。」




