第六章 第一話 沈んだ都市
「ここは・・・」
廃墟である。
まるで、何百年も人が訪れなかったような・・・
レイストは、壁に彫られた文字を読む。
『ここは、氷の竜を祀る神殿。だが、デラルの力が大きすぎ、地殻変動が起きた。そこで、時が来るまでの間、友の武器を隠して置くことに決めた。やがて、ここは、神殿と共に沈むであろう。
だが、少なくとも、デラルの目からは、吹雪の弓を遠ざけることはできる。我が名を継ぐ物よ。
我らの転生者が、同じ名を持つ者ならば、我らと同じ武器を集めよ。原点に帰らねば、始めることすらできぬ。勇者レイスト。』
「これが・・・」
ルザルは、湾曲した杖のような武器を見つけた。
「これって、どうやって使うんだ・・・?」
言うが早いか、光が杖の両端から伸びた。
その両端をつなぐように、糸のような光が現れる。
「これは・・・魔法力弓・・・」
「魔法力弓?」
「そう。母上が、魔導師用に開発している武器の一つ・・・。その光の弦を引き絞り、魔法力を矢として放つ。恐らくは、創ったのは勇者レイストその人。すでに、理論を完成させていたとは・・・」
「で、どうやれば、元に戻るのかな?」
「魔法力を込めてこうなったんだから、逆をやれば・・・」
うーんと唸るルザル。
「あっ!引っ込んだ。」
端と弦が消える。
「次は、ルーシャートか・・・」