第四章 第一話 ラムンセン
これは、困ったことになりました・・・
「王様に会うの?」
「ああ。」
レイストたちは、宿に停泊していた時に王の使者に、国王直筆の書簡を受け取った。
王宮に、明日来られたしとのこと。
言わば、直接呼ばれた形となる。
全く、父上も余計なことをしてくれる・・・
レイストは、内心毒づく。
レイストたちが通された部屋は、なんと客間。
レイスト本人ですら、謁見の間でいいと思うところだが・・・
書簡によると、レイスト本人が、勇者伝説をまず調べ上げようとしていることを、既にグレイスは看破していたという。故に、その末裔本人に話を聞けと言う事のようだ。
ソファの左隣のセリナを見ると、茶菓子を貪り食っている。
右隣のエリナとルザルを見ると、魔法についての話をしている。
リラックスしすぎである。
「陛下と、殿下がお越しです。」
シルバーミスリルの軽鎧を纏った人当たりの良さそうな女性騎士が、声をかけた。
「国王レイスト・ラムンセン十八世である。硬くならずともよい。客としてお招きしたのは、こちらなのだ。」
王は、エルフの血をひくのが嘘のように解放的な人物のようだ。
「そして、こちらにいるのが・・・」
「レイザール・ラムンセン王子。まあ、立場上王太子ですね。」
フランクに名乗るレイザール。
「この国に来られた理由・・・それは・・・」
途端に、王の眼光が変わった。
「レイストの剣のことであろう?」
「は・・・はい・・・」
「残念ながら、剣はお渡しできぬ。」
「なぜです?」
「ついてこられよ。」
王が、自ら案内した場所は、広大な地下室だった。
「ここは、墓所・・・あれをご覧あれ。」
「!!」
そこには、クリスタルのような物質が鎮座し、その中に、目を閉じたハーフエルフの騎士が・・・
「ゆ・・・勇者レイスト!」
「いかにも。このお方こそ、初代王レイスト・ラムンセンその人である。無論、生きてはおらぬ。重要なのは・・・」
王は、視線をクリスタルの台座部分に移した。
「むしろ、こちらなのだ。」
そこには、一目で業物と言える剣が飾られていたが・・・
「折れている・・・!」
そう。ぽっきりと・・・
「いかなる技術をもってしても、再生不能・・・つまり・・・」
「作り直すしかない・・・?」
王は、黙って頷いた。




