第二章 第四話 滅びしものたち
エルフ族の誕生秘話が、明かされます!
栄枯盛衰とは皮肉なものです。
エルフィアとラムンセン北端の町ハレルーンは、地下トンネルで繋がっている。
開通に携わったのは、勇者レイストである。
そのためか、このトンネルには、エルフ語で記された『歴史』が記されている。
「ふむふむ・・・」
レイストは、興味深気に文章を読んでいく。
「これで、理論上僕が使える魔法が増えた訳だが・・・
重要なのが、ここからだな・・・」
書かれていた内容はこうだった。
―遥か昔・・・フェアリーに似て人間と同じ背丈のアールヴという妖精族が存在した。
やがて・・・アールヴと人間の間に集落から離れ、夫婦となり子を成す者たちが現れ始めた。
アールヴは、排他的な種族・・・
故に、それを許さず、彼らを皆殺しにした。
だが、それに対し、憎悪をみなぎらせたのは、彼らの残された子らであった。
アールヴから受け継いだ強大な魔法力と、人間から受け継いだ生命力と潜在能力によってアールヴ軍を圧倒し壊滅させ、ついには戦闘能力を持たない赤子や、妊婦すらも皆殺しにし、ついにはアールヴを滅ぼしてしまったのだ・・・-
「なんてことだ・・・」
「じゃあ・・・アールヴってもういないの?」
「恐らく・・・」
文章は、こう続く。
―やがて、彼らは自らをエルフと名乗り、人間を凌ぐ勢いで増え、千年の寿命を武器に世界を支配した。
しかし、光あれば影・・・
エルフの帝国の繁栄によって生じた『黒き力』彼ら自身が処理しきれぬ負の感情が、長きに渡ってどこかに溜まり続け、ついには大魔王と化した。
大魔王は、ダイアレートと名乗り、自らの分身でもある十二人の魔王を従え、帝国に侵攻した。
帝国最強の騎士である双子レイとヴェイは、魔王の半数を倒し、なおかつ、残りの半数を封印した。
だが、最後にして最強の魔王デラルを封印する際に、このような呪いを受けてしまった。
『遥か未来・・・私は復活する・・・それも、ヴェイ・・・貴様の転生体を依代としてな・・・!そして、レイ!貴様の転生体は、弟の転生体を斬ることになり、それを永久に繰り返すのだ!』
しかし、レイとヴェイは怯まなかった。
『しかし、そうであっても、いつか、その輪廻を何度目かの転生体が断ち切る!』
呪いに対し、逆に呪いをかけたのだ。
私は、弟ヴェイストを斬らざるを得なかった。
そして、レイとはエルフの言葉で『輝き』ヴェイは『陰り』を意味する。
奇しくも私の名の『レイスト』とは、光・・・
『ヴェイスト』とは闇・・・
何の皮肉だろうか・・・
だが、私の名を受け継ぐハーフエルフよ・・・願わくは、呪いの輪廻を断ち切って欲しい。
そして、すべての種族が共に手を取り合う平和を・・・
勇者レイストより・・・-




