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第十二章 第二話 人をやめた者
それは深い絶望・・・
「負け犬は引っ込んでいろか・・・いい言葉だ。だが、なぜ誰も負け犬が引っ込むのを邪魔するのだ?「勝者」がいるのだ。「敗者」に「引っ込む」権利をなぜ与えない?「敗者」は、日陰に隠れてひっそりと邪魔にならぬよう過ごすか世を底辺から支えるかが、当然の「人権」だろうが!」
「そ・・・それは・・・」
「嫌だからだ!敗者を見るのが!否!敗者が存在するのが!気に入らないのだ!わかるまい!努力しろと言われて、たやすく努力ができ、勝てと言われてたやすく勝てる!」
エミアは、剣を握った。
「世界でひとつだけの花だと!?笑わせるな!いわば世界中の花屋が、安価で買える「高嶺」・・・もとい「高値」の花全てで店頭を埋めようとしているのだ!」
ウォルストは、黒い「気」を放った。
「貴様の「勝ち」はあるが、私には「全ての滅び」しかない。」
そんな・・・何ゆえに、勇者の家系の者同士が、このような戦いをするのか・・・
それでも・・・
「それでも私は・・・」
エミアは、神魔斬刀を発動させる。
「守りたい世界がある!」
光の剣が、ウォルストを袈裟懸けにした。