第十一章 第三話 人より産まれし魔王
バン!
エミアは、最上階の扉を開けた。
「遅かったな。」
「久しぶりね・・・ウォルスト!」
「片や勇者、片や魔王か・・・判らんものだな。」
「ええ。」
互いに、剣を抜く・・・
「どういうわけか、闇の感情に身を沈めると、落ち着くのだよ。聖職者が正の感情で『無』に至ると『悟り』に至るという・・・さしずめ、私は『闇の悟り』に至ったというところか。」
「本当に魔王たちが言っていたように、『魔王』になったということね・・・」
「おっと。儀式は進んでいるが、ダイアレートはまだ復活していない。」
「まさか・・・」
「そう。今や私はダイアレートと同調している。巫女が神霊をその身に降ろせるように、大魔王をその身に降ろせる。いまの大魔王はただの荒ぶる御魂・・・私は、その身体・その精神となる。」
「闇の神・・・『破壊神族』とも違う暗黒神・・・」
それは、人のつくりあげた邪神・・・
「答えは聞くまでもないけど、迷いはないのね?」
「愚問だ。しかし貴様はわかっていない。神々でさえ、光と闇に分かれて争ってきた。人もまた然り・・・善と悪のどちらかに与しなければ『神罰』が下る。なぜだ?それは・・・」
ヴェイストは、剣を天に掲げた。
「きれいに嵌められてしまっているのだよ!その枠組みに!ならば、解き放たれてもいいのではないのか!?」
ヴェイストは続ける。
「だからこそ、それに気付いた太古の技術者たちは、『破壊神』をつくりあげた!全てを無に帰すそのために!」
グノーシス思想が、少し入ってます。




