第二章 第三話 父の背
「そうさな・・・どこから話そうか・・・」
ドラースは、主だった部下を連れ、エルフィアの領主官邸にレイストや領主アルフォス・エルフィアと会談していた。
「とにかく・・・俺は、以前もこうして『仕事』に精を出していた訳だが・・・
そこを運悪く、魔獣討伐の旅をしていたおめえの両親にコテンパンにのされちまったって訳だ。
もっとも、俺は、親父さんの魔剣・精霊の剣が欲しかったんだが・・・」
「そういえば・・・」
レイストは、あることを思い出す・・・
「父上は趣味で剣をよく打っていたっけ・・・魔獣討伐の際に、母上に精霊の加護の術をかけてもらったとか・・・今は、仕事が忙しいから、あれ以上のものは作れないって言ってたな・・・」
「心を入れ替えたら、くれてやるって言われたんだが・・・」
「じゃ・・・無理ね・・・」
骨付き肉をかじりつつ、セリナが言う。
「なんだと!小娘!」
「まあまあ・・・」
「では・・・こういうのはどうだろうか?」
アルフォス伯が提案する。
「私が、貴君を盗賊団ごと雇い入れるというのは。」
「「へっ?」」
全員の声がハモる。
「貴君は、グレイス殿に認めていただきたい。レイスト殿に懲らしめられてもう懲りていて、悪さをする気はない。ならば、世のため人のため、剣をふるってもよいと思うが。」
すると、ドラースはアルフォス伯に右手を差し出す。
「いいかもしれねえ。剣はもらえなくても構わねえ。グレイス殿に認められて、手下共に飯を食わせられるってんなら、願ってもねえや!」
「うむ。」
ドラースとアルフォス伯は、がっちりと握手を交わした。
レイストは、そこに父がいるかに思えた。