113/128
第十章 第一話 王女抜刀!
それは、突然連合軍の本陣に出現した。
咄嗟に、神聖騎士たちは剣を構えた。
「さすが神聖騎士。私が来ただけで即対応とは。」
「魔王か!」
人猫の『迅速のユミル』ことユミル・オセロットが声をあげる。
「いかにも。私は、『混沌の魔王』カオス。突然だがお願いがある。ティア・トラルティア姫に、決闘に応じていただきたい。」
このとき、ティアについていたエミリアは、この奇妙な魔王をその言動から分析していた。
『どうも、神族のように清らかというのでもない。本来の魔族のように邪悪というわけでもない。あえていうのなら我々『人間』に近いというか・・・』
「受けましょう。」
ティアが剣を抜いた。
王位継承者に受け継がれる「トラルティアの剣」。
鍛冶師レイシアの先祖であるレイミアが鍛えたとされる名剣である。
すなわち、
勇者レイストの「レイストの剣」、
騎士団長ティアムルの「ティアムルの剣」、
トラルティア初代王の「トラルティアの剣」である。
「思い出すわ・・・王妃様のこと・・・」
ユミルは呟いた。