転章1-魔女の回想
私は、ファルスト。ファルスト・リリーア・ティアムル。魔女と呼ばれている。
セカンドネームのリリーアとは、母がエルフ語の「百合」からとった名だとか。
私は、基本的に座学だけで育てられた。それ自体に不満はなかった。
だが、義務教育を受けるようになり、事情は変わった。
「私」の常識と「外」の常識とが違いすぎた。
私が、失敗をしてしまい、謝罪しようとすると、「謝罪しない」と相手は一方的に攻め立てる。
同様に、「反省」を表情に出しているのに「平気な顔をしている」と罵られる。
次第に私は、いじめを受けるようになり、心を閉ざした。
冗談じゃない。
なぜ、自分を傷つけるだけの「外敵」だけの「外」に出なければならない?
やがて私は、自分に向けられる「表情」が醜いと感じるようになっていった。
だから私は、感情を消した。
恋愛感情という粗大ごみはいらない。
そんなものがあるから、性犯罪や離婚・不倫なんてことも起こる。
体力に自信があった私は、母が決めた王立魔法学校に入学することとなった。
が、私の決めたことではない。
ゆえに母と口論となった。
私が、進路を決められずにいたのならいい。
私は、どこかの工場で定年まで働き、孤独死するのが夢だった。
エリートだと!?この私が!?
冗談ではない。
出世に奔走し、上司と部下の板ばさみになり、苦しめというのか!?




