第八章 第三話 トラルティア大聖堂
「フム・・・ファルスト・ティアムルか。」
エストは、エミアからの報告を聞くと何かを考え、エリティアを見た。
「魔導師については、エリティア殿の方が私よりも詳しいのでな・・・」
「およしになられてください。ご自分でされるか、私の後任にやらせるかでよいでしょう。
ま、仕方ありませんね・・・」
エリティアは、懐から記録書簡を取り出した。
「数年前・・・エルナク地方に才能豊かな少女がいたそうよ。身体能力は高くは無かったものの、俊敏で魔導師・錬金術師としては『神童』とまでいわれたとか。ただ・・・」
「ただ?」
ヘイゼルが尋ねる。
「王立魔法学校に入学するため上京する日になって、突然彼女の家は消滅・・・当人も行方不明となっている・・・それが、ウォルストが『地下活動』を始めた時期と重なるのよ。」
「そういえば・・・」
「ええ。」
サイストとブラストは、目配せしあった。
「何か?」
「いえ・・・ファルストは、『最初から』ウォルストといたんです。とにかく、『表情』を見せることが嫌いで・・・自分であろうと他人であろうと、感情を見せる者を蛇蝎のように嫌っていましたから。」
「そうそう・・・そういう意味で、奴の評価で『合格』だったのは、ウォルストだけだった。不気味に笑うことこそあったが、終始無表情な奴だから。」
情報の交換を終え、謁見の間を出たエミアたちを出迎えたのは、ゴールドミスリルの鎧をまとったティアたちだった。
「んふふ~大司教レナス様がお呼びよ。エミアにヘイゼル!」
「「えっ!」」
「トラルティア大聖堂にね!」