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「 新たな出会い 」

「この町にも人は残っていなかったな。」

 目的の町の隣の町。

 俺達はケートの姉を探して二つ目の町までやってきた。

 目的の町には、人はおろか、町並みすらしっかりと残っていなかった。

 城とは違う、家の作りは、魔物が食べ物を探して荒らすことで簡単に壊れてしまうものだ。

「次の町まで行こう。今日中に付ける。」

 カイトの掠れた声に、俺は頷いてそれに答える。

 体力はかなり限界に来ていたが、弱音なんか吐く気持ちには到底ならなかった。



 日が暮れて、道と草むらの区別も難しくなった頃、俺達は隣町までついた。

 大きな教会が町の中心にあり、煌々と火の燃える明かりが窓から見えた。

 俺達は無言で頷きあうと、馬を引いて教会の扉の前へ行った。


 ドン、ドン!

 気持ち強めにドアを叩く。

「えっ、はいっ!」

 驚きの声に合わせ、返事の声が聞こえた。

 そして直ぐに顔を現したのは、中年の女性。

 その女性は、俺達の姿を確認すると扉を全開にし、俺達を連れてる馬ごと中へ引っ張り込み、急いで扉を閉めた。

 部屋の中には、中年女性のほかに、2人の子供と1人の若い女、1人の中年の男と、1人の白髪の老人が部屋の中央のカマドを囲んで座っていた。

「遅くにすみません。

 人を探して旅をしています。少しお話を伺わせていただけないでしょうか。

 あと、出来れば一晩の宿をお借りしたいのですが。」

 中年女性の勢いに多少びっくりしながらも、カイトは直ぐに挨拶を切り出した。

「ああ、いいよ、いいよ。

 とりあえず馬を端にでもとめておいで。」

「すみません。

 では、お言葉に甘えて。」


 正直馬は臭う。

 そんな馬を室内へ入れるなんて本当なら非常識もいいところだ。

 けれど、こんなにも魔物がうろつく状態だと、馬がやられてしまう。

 俺達は申し訳なく思いながら、馬の手綱を壁のはりに結んだ。

「こっちへおいで。

 調度夕食を始める所だったんだよ。」

 手招きをする中年女性。

「すみません。お言葉に甘えて。」

 絶対に食料に困っているはずの人々から食事を勧められて一瞬戸惑った俺とは対照的に、カイトはすんなりとそこへ入って行った。

「では、俺達も少しですが食料を持って来ているので、一緒に。」

 カマドを囲んで座っていた他の人達も、少しずつ座る位置をずらして俺達の場所を作ってくれた。

 子供達は興味津々の顔をして、元気に挨拶をして来た。

 俺はそんな子供の頭をクシャッと撫でて挨拶を返す。


 若い女は、戸惑いを見せながらも、小さく頭を下げる。

 こんな場所に居るのがそぐわない、落ち着いた雰囲気の少女だった。


 1人の中年の男は、明らかに緊張した表情を見せている。

 体格がしっかりとしていて、手には剣ダコが出来ていて、それが、彼が兵士である事を教えていた。


 老人は、深い皺の間から老人にはそぐわない鋭い、俺達を探るような視線を俺達に送ってきていた。


 俺達は、目的の場所にたどり着いたのではないだろうか。

 そう思わずにいられなかった。


 カイトとそっと視線を合わせる。

 頷くカイトに、俺は更に強い確信を得た。


「なんだい、今から食事だっていうのにこの空気は。

 さぁ、温かいうちにお食べ、カナン、ミナ、手伝っておくれ。

 そんな空気を振り払うように、中年の女性が大きな声を子供二人に掛ける。

「はーい!」

 2人の子供は、元気に返事を返すと、パタパタと中年の女性の手伝いを始めた。

「はい、どうぞ。」

 そして、真っ先に俺達の所へスープの皿をもって来てくれた。

「ありがとう。」

 俺達はにっこりと笑顔を返して、ありがたくそれを受け取る。

 そして中年の女性が椅子に座った時、カイトはカバンの中から、乾パンを取り出した。


「わぁ、パンだ。」

 子供の声が上がる。

 穀物を育てられる状況では無かったのだろう。

「これは乾パンといって、普通のパンよりとっても硬いんだ。

 けど、その分普通のパンの10倍くらい栄養はあるんだよ。」

 そう言ってカイトはそのパンを子供二人の手に、1つずつ乗せた。

「皆さんもどうぞ。」

 子供だけでなく、大人達もパンに見とれていた。

 こんな状況でなければ、普通に食事で食べれていたはずの物なのに。

「硬いけど、おいしいだろ?」

 俺はそんな事に切なさを感じながらも、嬉しそうにそれを口にした子供に話しかけた。

「うん。硬いけど、美味しい。本当に、パンの味がする!」

「こんな珍しい物・・・・・・有り難うね。」

 子供の喜ぶ顔を見ながら、中年の女性も嬉しそうに微笑んだ。

「いえ、こちらこそ。

 スープ、いただきます。」

 具も少なく、味も薄いスープだったが、とても美味しく感じられた。

 体の芯から疲れが解れて行く様で。

「美味しい。」

 自然に口から言葉が出てきた。

「良かった。」

 みんなの顔が笑顔になった。




「あんた達が探している少女は、この娘だよ。」

 食事が終わり、片づけを済ませた中年の女性は子供たちを寝かしつけると、カイトの話を少し聞いた地点でそう言いきった。

 視線を送られた先の少女は、俯き、表情を見る事が出来なかった。


「セト様、お顔をお上げ下さい。」

 突然敬語に変わった中年女性は、とてもその言葉遣いが板についていて、今までの気さくな雰囲気と少し違って感じた。

 セトと呼ばれた少女は、俺達の視線の先で、ゆっくりと顔を上げた。


 戸惑い、不安。

 それしか彼女から読み取ることは出来なかった。


「私は乳母のトモ。

 後の二人は、城で動乱があった時に、城からセト様の所へ遣わされた城の警備隊長のサマスと、学者のコジモ。」

 紹介された二人は、順に頭を下げる。

「あなた達がセト様をどんな理由で探し、どうするつもりなのか教えて欲いただきたい。」

 警備隊長と紹介されたサマスが、俺達にそう切り出した。

 俺達は今の現状と、そして、彼女に俺達と一緒にケートの所へ行って欲しいと告げた。



 そして、次の朝、青い顔をして黙って話を聞き続ける少女、セトと、その隣で、真剣な表情で話を聞き続ける二人の男を連れて、俺達は城に向かった。

 本当は乳母も連れて行きたかったが、小さい子供二人を連れて急ぐ旅は出来ない。

 俺達の食料の殆どを残し、俺達は旅立った。


「直ぐに迎えに来るから。」

 カイトの言葉に、3人はただ頷いて、見送った。


 隊長のサマスは自分の馬に。

 コジモ先生はカイトの馬に。

 そして少女セトは、俺の馬に乗って、旅は始まった。


 俺の胸に少しだけ体を預けている少女。

 彼女がこの先の運命を握っている。

 年もシータと変わらない、少女。

 シータではない彼女の体温が、俺の頭をとても冷静にさせる。


 やらなくてはいけない事。

 やるべき事。

 彼女を見つけたその瞬間から、確実に始まった俺の計画。


 多分・・・いや、きっとカイトも同じ事を考えているはずだ。

 しっかり実現しなくてはいけない。


 彼女を知ろう。


 彼女を助けよう。


 彼女を・・・支えていこう。

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