「 双 子 の 秘 密 」
桜の花びらがヒラヒラと舞い落ちる中、私は桜の木の下で膝を抱えて涙を流している。
温かい風と花びらが私を優しく包み込み、私は更に涙を流す。
『どうしたの?何が悲しいの?』と聞かれた様な気がして、私はゆっくり顔を上げる。
目の前には懐かしい故郷の風景。
・・・・・・その風景が私の心を温かくした。
そして、目が覚めた。
頬には涙が伝っていて、すぐ目の前には、カイトの顔が有った。
「大丈夫?」
カイトの指が優しく私の頬の涙をぬぐう。
そして優しく私を抱きしめる。
カイトの優しさが私の心を包む。
カイトの愛を感じる。
私は幸せだ。
カイトにこんなにも愛されていて、あの懐かしい祖国にも愛する人達がいて。
けど、ケートの愛する人間は居なくなってしまった。
人間が人間を裏切る。
国にいる時には何処か他人事の様な言葉だった。
私の周りは優しさや思いやりで満ちていて。
そんな私でも、旅に出てから沢山の人達に出会って、沢山の悲しみを見てきた。
けれど、それでも、ケートの悲しみを本当に理解できるかは解からなかった。
私は私を抱きしめてくれているカイトの体を抱きしめ返した。
言葉が出ない。
けど、そんな私の背を、カイトは優しく撫でてくれた。
「今、クーがオーマに向かっている。
・・・・・・ファストを迎えに行っているんだ。」
「兄様が!?」
驚いて私はカイトを仰ぎ見た。
歩くのもままならない大怪我を負った兄様が!?
「んっ。」
そんな仰ぎ見た私に、カイトは無言でキスをした。
強引なキス。
息も出来なくて、カイトが唇を離した時、私は軽い眩暈を覚えていた。
「・・・・・・嫉妬、させるなよ。」
小さく呟いたカイトの言葉に、私は胸がギュッと押しつぶされそうになった。
嫉妬?
驚く私を、再び胸にギュッと抱きしめた。
「ごめん。余裕なさすぎだよな。
今の忘れて。
・・・・・・クーがオーマ王国の母と連絡を取り続けていた。
ファストは、父と母の魔法の力で、大分回復してきて、直ぐにでも出発したいと言っていた。
それでも旅をするにはもう少し様子を見たいところだけれど、状況が状況だけに、クーが迎えに行くことにしたんだ。
明日の昼間の間には、合流できるだろう。
ファストが合流したら、近隣の国からも情報を集めて、まず、この国について知ろう。
ファストが合流するまで俺達はこの城の中を調べて、情報を集めて待とう。」
私は兄様が大分回復している事。
そして、そんな兄様がもう直ぐ来てくれる事に、凄く心が励まされた。
例え体がまだ本調子では無いとしても、側に居てくれるだけでいい。
それだけ私にとって兄様の存在はまだまだ大きな物なのだと、改めて思った。
けれどそれでも、やっぱり今までの想いとは確かに違うことは、ハッキリと感じる。
目の前で少し切なげな様子で私を見つめるカイトに、私は大きく頷いて見せた。
「じゃぁ、早速調べ始めましょ。」
私の言葉に、カイトは優しく微笑みを返した。
「じゃぁ、書庫まで運ぶよ。」
その申し出に、私は素直に頷いた。
「有り難う。カイト。」
首に腕を回して、私はカイトに体を預けた。
カイトはそんな私を優しく一度抱きしめてから、抱き上げ歩き出した。
そんな小さい一つ一つの仕草が、とても好だな、なんて、思いながら書庫へ向かった。
「王族に双子が産まれたらどうなるか知ってるか?」
私を抱いて歩きながら、カイトは私に突然の質問をした。
「知らない。私の知る限り、うちの国で双子は産まれていなかったはず。」
「そうか。
双子は遺伝性が強いって聞くから、双子の産まれる家系じゃないんだろうな。
うちの国でも聞いた事は無いから、俺も旅の途中の話で聞いた事が有るだけなんだけど、一般に双子のうち先に産まれた方は不吉な存在とされるらしい。
もう片方を押しのけて産まれて来るとされて、将来争いの種となり、国を滅ぼすと考えられ、殺されてしまうらしい。
ケートの話の中でもケイトの姉が遠い地で殺されたとあっただろ?」
言われて私はその話を思い出した。
「けれど、本当ならば産まれた事自体外に漏らしたくないはずだ。わざわざ遠い地へ連れて行ってから殺す必要が有るのだろうか?
俺は否だと思う。
わざわざ遠い地へ連れて行き殺したとされているとしたら、それは遠い地まで連れて行き、殺した事にして、本当はその地で育てられているのではないだろうかと思うんだ。
だからその地が何処であるか調べよう。
もしかしたら、その地でこの王国の王族の血筋が残されているかもしれない。」
私は驚いてカイトを仰ぎ見る。
カイトの真剣な視線に、物凄い緊張と、細い未来への希望が感じられた。
子供を殺したいと考える親なんて居ないはず。
カイトの話にとても真実味を感じ、私も微かに希望を感じた。
この荒れ果てた世界で、例え王族だとて生きているという保障は無いし、一つの場所に居続けられるとも限らない。
けれど、今出来る事を精一杯頑張るしかない。
私はその話の後直ぐに到着した書庫で、次々と書物を調べた。
そして比較的早くその場所を突き止める事が出来た。
その場所はこの王国の隣の国の手前の森で殺された事になっていた。
「明日合流したファストの様子を見て、俺とカイトでここを出発する。
シータはクーとここで待っていて欲しい。」
私の見つけた書物や地図を何度も確認した後カイトは私にそう言った。
「私も一緒に!」
すかさずそう言った私に、カイトはそっと首を振った。
「時間を掛けたくない。
ファストも足で纏いだと判断したら、置いて行くつもりだ。
それに、シータがケートと話をしてから、この場の空気が変わった。
だから、シータをケートの側に置いておきたいんだ。
シータ一人では心配だから、クーを置いて行く。
出来るだけ早く帰ってくる。
だから俺達を見送って欲しい。」
そんな事を言われて、嫌だとは言えない。
言われてみれば、確かにケートの気はここに来た時とは違い、荒れた感じはしない。
戸惑い・・・・・・そんな感じの気が感じられる。
私とクーが触れたそのせいなら、側に居たいし離れたくない。
けど、カイトと離れる事に、凄く不安を感じた。
「俺もシータと離れたい訳じゃないから。」
私の心の声が聞こえたかの様に、カイトは私にそう言いながら、立ち上がって私に向かって歩き出した。
「出来る限り早く帰ってくるから。」
そうして私の目の前まで来て、私をフワッと抱き上げた。
おでこにキス。
頬にキス。
唇に、キス。
私の寂しい気持ちを癒すように、そのキスは何度も何度も繰り返された。
「今日の分。
明日の分。
明後日の分。」
そう言って繰り返されるキスに、私は瞳を閉じて彼の気持ちにで自分の心を満たす。
そのキスが、耳までたどり着いた時、私は電気が流れた様に痺れを感じ、驚いて思わず瞳を開けた。
くすっ。
そんな私に、優しく、甘い微笑を浮かべたカイトは、私の瞳を真っ直ぐ見つめる。
「逢えない日の分は、キスだけじゃ足りないから。」
カイトの甘い言葉に、私は痛いほど心臓がドキドキして。
けど、戸惑いは感じるものの、嫌ではなく、その先の幸せを思い出して、私は再び瞳を閉じた。
再び唇に落ちてきたキスが、唇から耳へ、そして首へと移っていった。
カイトの熱を感じ、私は始めての時とはまた少し違うカイトとの夜を過ごした。




