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「 私の心、ケートの心 」

「我は神との生活の中、微かな退屈を感じていた。

 私は自分の仲間を統べる為に作られた存在だったようで、他の精霊とは違い、知能が有った。

だから他の精霊が感じない“退屈”や“不満”それに“好奇心”が少しだが有った。

 けれど所詮そんな物は微かな物で、我は神と他の精霊たちと毎日を過ごしていた。

 けれどそんな生活の中、神が見つけた青い星、神が興味を示したその星に、我は自然に興味を持った。

 そして神と一緒にその星を見つめた。

 何年も、何十年も。

 人々は4つの季節の中、それぞれの季節を楽しみながら生活をしていた。

 そして周りの仲間を思いやり、思われ。

 時には辛い事、悲しい事も有ったが、それすらも受け入れて、その中で苦しみながらも短い一生を懸命に生きていた。

 特に、我は一つの国の一つの王国に目が留まった。。

 冬の季節がとても長く、作物にもなかなか恵まれない土地。

 更に、人間には見えない魔物の里にとても近く、魔物に狙われ続けている。

 けれど、そんな中でも民と共に明るく暮らす王国。

 その王国を見ているうちに、ふと思った。

 我があの星のあの王国に居たら、皆の苦労を軽くしてやれるのに。

 その思いは日ごと強まった。

 そんな中、その王国は、新しく始めた織物という産業で少しずつ裕福になっていった。

 それを嬉しく見ていた我の目の前で、悲劇が起こった。

 その新しい技術を盗み、潰すために、その国は攻められた。

 我は居ても経っても居られずに神に懇願した。

 我には他の精霊を消す力も有り、それを盾にまでした。

 神はそんな我に怒り、条件を出した。

 青い星が自ら滅びの道を進み、精霊を苦しませる事が有れば精霊は意識を失い地に沈み、魔物を呼び続る。

 それは星が滅びるまで続く。

 但し我はその罪を見続ける為に、地に沈む事は許されず、この意識をあるまま魔物を呼び続ける・・・・・・星が滅びる迄。

 星が滅びたら我ら精霊達はその時の神の意思に従い処罰される。

 我はその条件を飲んだ。

 我ら精霊の力を知っていたから。

 人間の心を優しく癒す事が出来る。

 それがどんなにすばらしい事か、私は見てきたから。

 人や景色や、空気、温度、色々な物が人間達を癒し、そしてその癒された人間の心の優しさ。

 更にその人間に他の人間も癒され、その連鎖は終わる事が無い。

 けれど、勿論その逆の負の連鎖も存在していた。

 けれど、この無数に存在する我たちがその優しい癒しの連鎖の一番初めになれるなら、負の連鎖を抑え、優しさに包まれた世界を作り、そこで幸せに包まれた人間に囲まれて暮らす事が出来る。

 そう信じていた。

 それが過信だという事に、我は直ぐには気が付けなかった。

 自分が降り立った王国。

 ずっと見守り続けていた王国の復興を見守る事で心が一杯だったのだ。

 気が付くと世界は少しずつ、しかし、確実に破滅に向かっていた。

 始めに降りた地が、既に、荒れ果てた人間で満たされたそんな地だった精霊はあっけなく地に沈んだ。

 そして魔物を呼び、そしてその地の荒れは広がり、近くにいた精霊も地に沈んで行った。

 殆ど知能の与えられなかった精霊たちは、只周りの人間の心の闇に囚われて、苦しんで、沈んでしまった。

 残っていたのは、多少なりとも知能を持った精霊達。

 色々な人間達の中から少しの希望を感じ取れるそんな精霊達。

 それでもそんな精霊達に癒されて、一度加速を見せた負の連鎖は膠着状態になった。

 我も沈んでしまった精霊達に心を痛めながらも、周りの一生懸命な人間と一緒に日々の生活を過ごしてきた。

 そんな中、この王国に双子の皇女が産まれた。

 姉の方は双子の悪を持って産まれたという事で、遠い地で命を絶たれたが、その妹はケイトと言う名を与えられ、健やかに育てられた。

 我と同じ名前の皇女。

 運命の様に、我は皇女に心を惹かれていった。

 ケイトは、眩しいほど輝く金色の細い髪で、太陽の様に愛らしく微笑みを見せる少女で、毎日この聖堂へ来ては、日々の生活や恋の話をして行った。

 夢の様な時間だった。

 幼子から、少女へ変わるその姿を、我は見守り続けた。

 そんなある日の夜更け、少女が我の元へ泣きながら姿を現した。

 たった一人で。

 父と母が殺されたと。

 腹心の部下の手によって。

 自分は侍女によって逃がされたが、後ろで侍女の叫び声が聞こえたと、体を震わせ、涙を流し続けながらそう言った。

 手には、護身用のナイフを持って。

 我は少女に早く逃げる様に強く願ったが、我の声は少女には届かない。

 そしてケイトは追ってきた敵の手に捕まる直前に、自身で自分の胸を刺し貫いた。

 愛した王国、愛した少女は、一夜の内に消えて無くなった。



 その後暫くの間の事は、記憶に無い。

 気が付いたら城や町の様子が激変していた。

 魔物がはびこり、城や町から人が逃げていっていた。



 我の悲しみや怒りが魔物を呼び、人々を襲い続けたという事は容易に想像が付いた。

 我の近くの精霊達からの気配も消えている事にも気が付いた。

 そして我は強く願った。

 こんな星、滅びてしまえばいいと。

 長い月日、この星に留まり、ひたすらに人々の生活が心も体も豊かに過ごせるようにと願ってきた。

 その年月の間、人間達は我にどれ程汚く、醜い姿を見せてきたことだろう。

 その姿に、今迄は心を痛め、そんな人間達の再生を願ってきた。

 けれど、ケイトが死んで、我は知ったのだ。

 この星を見守る価値など無いと。

 早くこの星を滅ぼし、沈んで行った精霊達と共に、この星を離れようと。

 神の元には戻れないかもしれないけれど、この星で心を痛め続ける必要は無い。



 神の使いなら神に伝えるがいい。

 あなたとの賭けに我は負けを認めると。

 我の処分はあなたに任せる。

 但し、仲間の精霊達は受け入れてほしいと。」



「解かった。

 伝えよう。

 お前の悲しみと願いを。」

 長い精霊の話の後、クーはゆっくりとそう言った。

「悲しみではない!

 憎しみだ!!」

 そんなクーの言葉に、精霊は強く言葉を返した。

 悲鳴の様な声が私の心をえぐった。

 人間に傷つけられた精霊の声。

「・・・・・・お前は・・・・・・?」

 ふと、精霊の声のトーンが変わった。

「不思議な気。

 ケイトのそれに似ている・・・・・・」

 私の、事?

 今まで私の存在なんて全く気が付いていない様子だったのに。


「私はシータ。

 あなたを救いたいと願う者の一人。」

 いつもの言葉を口にする。

 ・・・・・・けれどどう考えてもいつもとは違うこの状況に、私は直ぐに言葉を綱いだ。

「でも、ごめんなさい。

 私はあなたに何をしてあげられるか・・・・・・何をするのが正しいのかが解からない。」

「シータ!」

 そこまで言った所で私はクーにギュッと後ろから抱きしめられた。

 クーの体温が私をつつむ。

「ケート。

 また来るから。

 シータの心を感じたケートに会いに来るから。」

 

 私の、心。

 

 ケートの、心。

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