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「 少 女 と の 出 会 い 」

「助けてっ!」


 その叫びを聞いたのは、夕日に照らされた悲しげにも見える打ち崩れた城下町の姿に心を痛めながら通り過ぎようとしている時だった。

 皆が一斉に声のした方角を向いた。

 そこに崩れかけた一軒の家を見た。

 そして、そこから一人の少女が走り出してきた。

 金色の散切りの髪と、所々切り裂かれた服をなびかせて、少女は真っ直ぐ私に向かって掛けてきていて、その姿を見たカイトは、剣を抜き辺りに警戒を図り、私は自分からもその少女に駆け寄りその少女を抱きしめた。

「何があったの!?」

 私の胸で震える少女を抱きしめ、私は少女に問いかけた。

「知らない男達にお父さんとお母さんを殺されて、ここに連れてこられたの。

 そして柱に縛られて。

 男達がおとなしく待ってろって言われて、男達が居なくなった隙に、やっと綱から逃げて・・・・・・お姉ちゃん達の姿が見えたの。」

 少女は私の胸の中でぶるぶると震えていた。


 可愛そうに・・・・・・。

 私は少女を胸にきつく抱いた。


 もう大丈夫よ。


 私達が守ってあげる。


 




 私は辺りを調べ、異常が無い事を確認して帰ってきたカイトに、事情を説明した。

「この子をこの前にあった町まで連れて戻ってそこで信頼できそうな人間に預けるか、この旅に一緒に連れて行けないかなぁ。」

 この子をこのままここに置いては置けない。

 私の視線の先で、カイトは無言で何故か少女に探るような視線を投げていた。


「そんな事出来ない。戻る時間も、連れて行く余裕も無い。」

 私の胸元からヒョイっと顔を出したクーが、カイトの代わりにあっさりとそう切り捨てる様に言った。

「クーっ!」

 私はクーを見た少女の驚きの表情に、あわててクーの頭を胸元へ押し込んだ。

「今、の・・・・・・。」


 あ、やっぱり見られた。


「馬鹿が・・・・・・。」

 カイトの呆れたため息交じりの声も聞こえる。

 少女の顔が恐怖でおののき、ジリジリと私から離れていく。

「あ、これ、これ、何でもないのよ。

 大丈夫。」

 気が付くと自分でも挙動不審だとしか感じない説得力の無いフォローをしていた。


 クーの姿は魔物の子。

 正体は神の子。(勿論、これは秘密)


 魔物の子供の子供を胸に隠して旅をしている・・・その理由を。

 クーを危険な存在では無いという説得を、私は目の前の少女に出来る自信は無かった。


 私は救いを求めてカイトをジッと見つめた。

 カイトは恨めしげな視線を私の胸元に隠れたクーに向ける。

「ったく・・・・・・厄介事を増やしやがって。」

 カイトはそう言うと、大分私から距離を取っていた少女にゆっくりと近づいた。

 体を固めて恐怖の表情を浮かべる少女の頭にポンと手を乗せると、優しくその頭を撫でた。

「事情は説明できないけれど、さっきの魔物の子供に危険は無いから心配しなくていい。

 後、今夜はこの先の林の中で夜を過ごす。

 詳しい話はその時にでもしよう。

 それ位の時間のロスは構わないだろ?」

 私の方を向きながら。

 けれど視線は私の胸元へ忌々しげな視線を投げながらカイトはそう言った。

「別にいいけど。」

 顔を出さずにそう言ったクーに、カイトは再び深いため息を付いた。






 それからカイトは林の中に火を熾し、その近くに簡単な寝床を二つ作った。

「我慢できるか?」

 少女の顔を覗き込む様に質問し、まだ緊張を見せる少女は無言で小さく頷いた。

 その少女の頭をまた優しくクシャッと撫でると、カイトは再び城下町をもう一度調べに行くといい、出かけていった。


「ねぇ、寒いでしょ?

 もっと火に近づいて。」

 私は頑なに私と(というより、クーと?)距離を取っている少女に火の前の場所を勧める。

「後、少し大きいけど。」

 そして、自分の丈の短めのワンピースを荷物から取り出して少女に勧めた。

「こっちへ、おいで。」

 そして、そっと手を差し伸べる。

 様子を伺う様に暫く私をジッと見つめる少女。

 しかし暫く後、意を決した様に私の手にそっと自分の手を重ねた。

 冷たくて、荒れていて、小さな手。

 私はその手をそっと握り締めて自分へと引き寄せた。

「大丈夫。

 ・・・・・・もう心配ないからね。」

 そして自分の胸へ抱き寄せた。

 彼女を暖めてあげたかった。

 心も、体も。

 一瞬体をビクッと震わせ、暫く体を硬くして、クーの居る辺りから軽く体を避ける様に私に抱かれていた少女。

 けれど暫くして、ポロポロと涙を流した。


「お姉ちゃんも、この子も、とっても暖かい・・・・・・。」


 少女の純粋な涙に、私は再び彼女を抱き直した。

 今度はクーから体を避ける事は無かった。





「お名前は?」

「ジュンシー。」

「歳は?」

「9才位だと思う。」

「お家は何処にあったの?」

「この町より北に5キロ程行った町、ナルナ。

 けど1年以上前に魔物によって滅ぼされて、更に北に家族で逃げた。

 そこも魔物によって滅ぼされて、更に北へ。

 何度も生活場所を変えているから。自分のいた町や森の場所をお父さん達でもハッキリとは解かってなかったみたい。」

「他にも一緒に生活していた仲間は居ないの?」

「居ない。

 大勢だと魔物に狙われ易いからって、私達は家族だけで魔物から逃げてたの。」

「あなたを連れてきた男達は何人位いたの?」

「5人は居た。

 前にはこの辺りにはもっと大勢盗賊はいたけど、獲物が見つからないからか、だんだん減ってきてたの。

 だから返ってこの辺は、魔物から身を隠せさえすれば安全だった。

 けど、ここ最近、魔物の数がどんどん増えてきて、もっと遠くに逃げなくてはってお父さん達は話していた所だった。」

「武器は持っていた?」

「皆が、剣を。」



 私達はカイトが帰ってくる迄の時間に、沢山話をした。

 話をしながら私は彼女を着替えさせ、散切りにされた髪を揃えて切った。

 そして持ってきていたパンを軽く火で炙って温めてジュンシーに食べさせた。

「久しぶりの、パン・・・・・・美味しい・・・・・・。」

 そう言ってゆっくりゆっくり味わいながら食べるジュンシーを私は見つめた。

「まだ有るからね。」

 そう言ったジュンシーはパンを取り出した私のカバンに視線を移した。


「旅は長いの?」

「ええ、そうね。」

「何だか身分が高そう。」

「そんな事無いわよ。」

「お金や食料は沢山持っているの?」

「沢山という事では無いけど、あなたが一緒に旅を出来る位は有るから、遠慮しなくていいのよ。」

 今度は反対に質問された私は、私に質問を繰り返す彼女の瞳に、何故だか違和感の様な物を感じていた。

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