「 長く幼い恋の終わり 」
「お別れを言ってくる。」
誰に・・・・・・なんて聞かなくても解かる。
「あぁ。」
これ以上掛ける言葉は無かった。
意識してか、無意識でか、視線を合わせないシータの背中を黙って見送る。
口を開くと、止めてしまいそうだった。
「・・・・・・体に気を付けて。」
兄様が私の腕を優しく掴み、真剣に私を見つめる。
「一緒に行きたいけれど、起き上がるのが精一杯の今の俺じゃ足手まといにしかなれない。
けれど約束する。
体が動く様になったら、直ぐに駆けつける。
それまで、どうか、体に気を付けて。」
真剣な兄様の言葉に、私は力強く頷いて見せた。
兄様の回復を待たずの出発。
正直、心細い。
けれどそんな事を言っては、兄様の心を無駄に揺さぶるだけ。
それに大分魔法も安定してきた。
今まで私が旅を続ける中、何度も自分の体力の賜物だと思っていたそれも、カイトの魔法のおかげだって知った。
その魔法の力が私の基礎体力をも上げ、上手く付き合えば、体力を消耗せずに旅を進める事が出来る事も知った。
頑張れる・・・・・・きっと大丈夫。
私は一生懸命微笑んで見せた。
「大丈夫。兄様が駆けつけて来る前に解決してみせるから。」
力強くそう言って、私はもっともっと微笑んで見せた。
「だから兄様はゆっくり体を直し・・・・・・」
そこまで言った所で言葉は止められた。
一瞬のうちに、私は兄様の胸の中にいた。
「シータ。
俺の大切なシータ・・・・・・。
本当は旅になんて出したくない。
この胸の中に閉じ込めて、何処にもやりたくはないんだよ。」
苦しげな、擦れた声の兄様。
解かってる。
兄様の心くらい。
私は兄様の胸の中で小さく頷いた。
「解かってる。
・・・・・・けど、決めたの。
・・・・・・自分で決めたの。」
私の頭の上で、兄様が頷いているのが解かる。
私の頭の上から熱い物が流れ落ち、私の頬を伝い・・・・・・私の涙と重なって流れている。
「兄様、大好きよ。」
兄様への気持ちも、私の中で少し変化した。
けれどそれでもこの気持ちは“愛”なのだと思う。
恋でも、同情でも、家族愛でも無い・・・・・・確かに、“愛”なのだと。
ただ、それがカイトへの物と違うだけ。
「俺も・・・・・・愛しているよ。」
そして兄様は私から体をゆっくりと離した。
「最後に・・・・・・。」
兄様の言葉の意味。
全てを話さなくても理解できた。
私達はどちらからでもなく、お互いが引き寄せられる様に唇を重ねた。
慈しむ様に、優しく、長く。
これが本当に、兄様との、長く幼い恋の終わりの時となった。




