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「 プ ロ ポ ー ズ 」

「もう大丈夫。

 薬で眠ったよ。」

 軽いノックの後にカイトが顔を出してくれた。


「少し、話をしたい。

 大丈夫か?」

 私は頷く。

 気持ちは決まった。


「顔色が、いいね。」

 私を見つめたカイトの顔が、ホッとした表情だった。








「ここは、どこなの?」

 今まで部屋で寝ていただけで、私は自分が今何処にいるのか理解していなかった。

 カイトが部屋のベランダに連れ出してくれて、私は目の前の景色に驚愕した。


 目の前には空。


 目の下には雲が広がっていた。


「今下は雨だから、雲の上を飛んでいる。

 ま、たまには雨の中を飛ぶこともあるけどね。」

 サラッと言ったカイトの言葉に、私はクーとカイトの言葉を思い出した。

 今迄はそれ所ではなく、すっかり忘れていたけれど、天空の国、その皇子、そして魔法というキーワード。

 私の苦しみも、そう言えば、魔法の種というものの為だった・・・・・・。


「ここが、カイトの、国?」

 躊躇いがちに確認をする。

 夢なのか、現実なのか自信もなくなっている。

 そんな私に、カイトは力強く頷いて見せた。

「そう。秘密の空飛ぶ魔法の王国オーマ・・・・・・って所かな。」

 少しおどけた調子でそう言ったカイトの言葉に、私は笑い返す事が出来なかった。


「俺はここで生まれた。

 オーマ王国第一皇子として。

 この国は一年中空を飛び、地上を見守っている。

 この国は下からは見えない。

 姿を消して空を飛ばしているのは王と王妃。

 力は魔法。

 そしてその子供はその力を継いで産まれる。

 手には将来の皇女に与える魔法の種を持って。

 魔法は諸刃の剣。

 使い方によっては世界を脅かす凶器にもなる。

 だから種の持ち主と心から愛し合い、力をを合わせ世界の安泰を願う心が無ければ種の力によって口にしたその者が死んでしまう。」

 びっくりする話で、私は言葉を失っていた。

 そんな私を、カイトは正面に立ち、私の腰に手をそっと回し優しく抱いた。


「俺と結婚して欲しい。」


 そして、突然のプロポーズ。

 そして一気に腕に力を入れて、私は苦しいほど強く抱きしめられた。

「シータとなら、同じ心で世界を見守り、幸せに暮らしていけると思う。」

 むせる様な幸せに、私は返事よりも先に涙が流れた。

 嗚咽が漏れ、返事をしたかったけれど、声にならず、私は大きく頷いてカイトの背に腕を回した。

「シータ・・・・・・愛してる。」

 私の返事に答えて、カイトが私の髪に埋めた口で愛を語る。

 兄様の手を離し、カイトと未来を見つめる。

 それが私の決心。

 兄様の愛への答え。

 

 体は嘘みたいに楽になり、不思議な力が胸の中心で熱いともし火を燈した。

 きっとこれが魔法の種の力。


 私はその全てが嬉しく、愛おしかった。

 私の未来はここにある。

 ここでカイトと幸せを作って行きたい。



 


 


 それから私はカイトに魔法の使い方を教えてもらった。

 兄様に回復魔法をかけたかったから。

 それに、旅を続けるにもきっと必要に思えた。

 

 それに合わせて、私達はクーの話をしっかり聞く事にした。


「俺は天空の“神”と呼ばれる者の子供。

 神に頼まれて俺はここに来た。

 神の言葉をお前達に伝える為。

 体は置いて、魂だけの形で。

 ここに降りてくる事に力を使い果たした俺は、息絶えたばかりの魔物の子供を見つけそれに入った。






 神の言葉を伝える。




『私の大切な精霊を傷つけた人間達。

 お前達なんて滅びてしまえと何度も思った。

 けれど、私の大切な精霊達がお前達と一緒にいる事を望み、お前達から離れる事を悲しんでいる。

 それに、お前達の様に、人間の中にも私と同じように精霊を愛し、守ろうとする者もいる事を知った。

 だから、私の大切な精霊の心と、お前達に免じて、今回だけは助けを出そう。

 しかし、私の作ったプログラムを止める鍵を握る一人の精霊がいる。

 その精霊は他の精霊と違い感情も豊かで、強い力を持っている。

 私はその精霊とこのプログラムを作り、始動させたのだ。

 その精霊が私の言うことを聞かない。

 人間を憎んでしまったのだ。

 愛していたはずの人間に絶望し、愛していたはずの人間を憎み始めてしまったのだ。

 

 お前達、その精霊に会いに行け。

 そして、その精霊と話をし、お前達の心を精霊に届けなさい。


 その結果が世界の結末。


 さぁ、旅立つのだ。

 精霊の心の傷がこれ以上深くなる前に。』

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