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「 精 霊 の 友 達 」

 私とカイトは“気”を感じた。


 精霊・・・・・・に似ていた。


 けれどはっきりと今までの精霊のそれとは違っていた。


 カイトと目を見合わせる。

 とりあえず行ってみよう。

 私達は頷きあって、林を進む。

 そしてそこで目を閉じて横たわる小さい魔物の子供を見つけた。

 子猫の様な姿。

 けれど子猫の毛とは違い、とても硬そうで毛深い感じ。

 一見可愛く見えるその腕も、とても太く、閉じた口からも牙の先が覗いていた。

 確かに姿は魔物の子供。

 けれど、放たれる“気”は、それを別の何かだと知らせていた。


「シータ」

 そう言ってカイトは私に手を差し伸べた。

 私は黙って頷いてその手を取る。

「ファストは周りの様子を見ててくれ。」

「解かった。」

 緊張が走る。

 そして、カイトが私の手を握る手に少し力を入れて私を引き寄せる。

「精霊とは違うみたいだけど、意識が無くなりそうに感じたら直ぐに教えるんだよ。」

 真っ直ぐ私の瞳を見てそう言ったカイト。

 私は声にして返事をしようとしたけれど、喉に張り付いて声が出なかった。

 思いも寄らないほどの緊張。

 私は再び黙って頷いた。

 そんな私を見て、カイトは握っていた手を離し、私の肩をそっと抱いた。

「大丈夫。俺の感じでは精霊ではないし、それに悪い感じもしない。

 只、今まで感じたことの無い“気”だから、注意はしないと。」

 カイトはゆっくりと歩き出しながらそう言った。

 視線は魔物の子供に真っ直ぐ向かっている。

 私はカイトの体温に支えられながら一緒に歩幅を進める

 そして私達は魔物の子の前に立った。

 硬い土の上に横たわるその姿は、直ぐにでも抱き上げて上げたい程ぐったりとした物だった。





 吸い寄せられる様に私はしゃがみこんで魔物の子にそっと触れる。

 生き物にしては冷たい感じがした。

 さっきまであんなに警戒していたのに、目の前のその子を見ていると、目を閉じたまま苦しそうな呼吸を繰り返すその姿にいたたまれなくなっていた。

「シータ。」

 諌める様なカイトの声に、私は“大丈夫”と返すと、今度はその小さい体をそっと胸に抱いた。

「かわいそう。こんなに小さい体なのに、こんなに苦しそう。」

 そう言って立ち上がった私に、カイトは小さくため息を付いて私の腕の中の魔物の子に手を伸ばした。

「怪我では無いようだな。」

 撫でる様に体のあちこちを調べたカイトはそう言った。

「体が冷たい。」

 私がそう言うと、カイトも頷いた。

「あぁ。体力、気力かがかなり消耗しているみたいだな。」

 カイトの言葉に、私はその子をギュッと胸に強く抱きしめた。

「あなたは誰?

 何があったの?」

 私は返事なんて全く期待もせずに、胸の中の魔物の子にそう聞いた。

「俺はクー。

 精霊の、友達。

 精霊を助けに来た。

 精霊を苦しめ、滅びに向かっている人間だけれど、精霊の為に、お前達の手助けをしに、来た・・・・・。」

 その苦しげながらもしっかりとした言葉に、私は驚いてそのクーと名乗ったその子を胸から離した。


 顔を見ると、瞳がうっすらと開いて私をジッと見つめていた。

「お前達の旅を導き・・・・・・付いて・・・行く。」

 そこまで話すのが精一杯だったようで、クーは再び瞳を閉じた。

 私とカイトは驚きで暫く言葉が出なかった。









「本当に大丈夫なのか?」

 兄様の言葉。

 視線は私の腕の中。

 そこにはクーがいて、苦しげに胸を動かしながら浅い息を繰り返している。

「さっきも話したけれど、はっきりと大丈夫だとは言い切れない。

 けど、悪い感じがしないんだ。」

 ハッキリしない言葉。

 兄様が不安に感じるのも解かる。

 けれど私も同じ考え。

 クーの言葉を信じると、この子は私達が滅びる・・・・・・それを助けに来てくれた者。

 精霊を友と呼び、その精霊を助けたい為。

「桜の精霊が話していた“精霊を愛するあの人”という存在に近い存在だと思う。」

 言われて、私は桜の精霊の話していた事を思い出した。

 精霊を愛する者の事を。

 人間が自然を愛す心、人を愛する心を忘れたとき、この世界ごと消えてしまうようプログラムし、全ての精霊の様子を見守っている存在。

 私達は近づけたのかもしれない。

 三人の視線が合わさる。

 その瞬間から、私達の心はクーに釘付けになってしまった。

 無意識のうちに起こった心の変化。

 そして事件は起こる。

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